第5話 距離感
まずい、遅刻をしてしまった。1年の時は無遅刻無欠席だったっていうのに!ああ、さようなら僕の皆勤賞...
今、僕は教室の扉の前にいる。もちろん中では授業をしてる。初めて遅刻なんてするものだから、緊張しすぎて教室に入れない。あぁどうしようどうしよう...
「あれ?蔭山?」
「うわぁぁ!」
急に御城さんに声をかけられた。びっくりするからやめて欲しい。
「し〜!声大きいよ!中に聞こえたらどうすんの!」
「す、すみません...」
「てか、なんでここに立ち尽くしてるの?」
「いや、初めて遅刻して、緊張で入れないんです」
「え、それだけ?そんな気にしなくていいって」
「ちょっ、ちょっと!そんな堂々と…!」
そうして彼女は勢いよく扉を開けた。
なんて勇敢なんだこの人は…。僕を導く自由の女神みたいだ。
「おい、何堂々と入って来てんだ、遅刻だぞ」
「すいませーん、次から気をつけまーす」
「お前はそう言って1度も気をつけたことなんてないだろ、まったく…」
すごい、先生が呆れるほどの遅刻魔は格が違う。
「ん?蔭山、お前も遅刻したのか」
「あ、あ!す、すみません!遅刻してしまいました!」
「別にそんな謝らなくていいぞ、誰だって1度はあるだろ、気にせず入ってくればいい」
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
なんだろう、先生が光り輝いて見えるのは気のせいかな。
「ただし、御城のようにはならないようにな」
「も、もちろんです。ははは...」
ならない。というかなれやしない。僕はそこまでメンタルは強くないんだよ!
こうして僕は何とか1限目の途中から参加することが出来た。
―キーンコーンカーンコーン―
ホッ、1限目が終わった〜。特に何事もなくて良かった。たまにいるでしょ、遅刻とかしたらその授業めちゃくちゃ当ててくる先生。恐ろしや。
「ねーねー、蔭山」
「どうしました?」
なんだか不機嫌そうに御城さんが話しかけてきた。
「そういえば私たち1年以上の付き合いじゃん?」
「言われてみればそうですね」
「なのになんであんたはずーっと敬語なワケ?」
確かにそうだ、僕はずっと敬語を使ってる。でも、決して意識してる訳では無いし、女の子慣れしていない僕からすれば自然と出るのも無理はない話だ。
「あ〜、僕、女の子とあまり話さないので、異性とは自然と敬語で話してしまう癖がついてしまってるんですよね」
「ふーん、なんかよく分かんないけどそうなんだ」
「よく分からないって…」
「とにかく!これから敬語使うの禁止ね?」
「えぇ!?そんな急に言われましても…」
なんて大胆な人!そんなの僕に出来るわけないじゃないか!
「拒否権ないから。てか、1年経ってまだ敬語って意味わかんないっしょ。だから普通に話そ?」
「うぅ、でも...」
「なんか文句ある?(圧」
「な、なんでもないです!」
圧力に屈してしまった。情けないな、僕。
「んじゃ、決まりね!もし敬語使ったら罰として何か考えておくから覚悟しててね〜」
「ば、罰!?そんなの聞いてないですよ!」
「はい、使ったね!じゃあ罰として〜…」
「ちょ!ちょっと!勘弁してくださいよ!」
「あ!また使った〜!」
「うわぁーー!!!もう!!!」
この人容赦が無さすぎる…あぁもうこれからどうなっちゃうんだよ〜!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ふふっ、やっと距離が縮められた!
でも敬語じゃなくなっただけってどうなんだろ…
まあ、進歩したことには変わりないよね!こっからどんどん行くぞー!
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