9月

 来てしまった、始業式。夏休みはあんなに楽だったのに。けれど、宿題は完璧に終わらせてしまった。夏休み中から、二学期の準備が出来る自分に感心していた。こんなことは初めて。そんなしょうもないことで自画自賛できるくらい、今年の夏は心が沈んでいた。

 夏休み中、友達からの連絡は一度もなかった。それくらい私の周りには人がいない。

 けれど、誰かに遊びに誘われても、彼女と遊んでしまった私には、楽しさを知ってしまった私には、遊びに行く、という選択肢は無かっただろう。

 楽しそうに一ヶ月半ぶり、夏休みに会っていたらそれ以来、と再会を嬉しがるクラスメイトを尻目に、ひとりでスマホをいじっていた。

 今日も、一人か。

 夏休みの一人漬けに慣れていたとはいえ、やっぱり大人数の中の一人は堪える。

 どうしたらこの気持ちを殺すことができるのか。わからない。誰か教えてください。

 *

 おかしい。

 九月も半ば、学校が始まってしばらく経ったが、彼女とまだ一度もすれ違っていない。前までは、週に二、三回くらいは会えていたのに、この頃は全く姿を見かけなかった。帰りが一緒になることもない。

 移動教室のときに、彼女の教室をそっとのぞいてみることにした。

 すぐに見つけた。友達と談笑している。彼女は学校に来ているけれど、すれ違う頻度がかなり減ったということは、向こうが私を避けているのかもしれない。

 けれど、私はそうした彼女に文句を言う度胸も資格もない。勝手に幻想に浸った私が悪い。

 かけがえのない友達が、親友ができそうだったのに、最後までいかなかったのは、私が悪い。確実に私が悪いのだ。

「遥香ちゃーん!」

 教室の中で、彼女のを呼ぶ声。それに応える笑顔は、私に向けてくれたものとは違っていた。凄惨な大人の顔。頼もしいその笑顔は、あのときに見た、幼く柔らかい笑顔とはあまりにも違っていた。

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