6月(1)
『今度の日曜日、遊びに行かない?』
予定が合ったときに一緒に帰り、付き合いもちょっと深まってきた6月初旬。中間テストも終わり、赤点を回避したことにほっと息をついていたときのこと。
スマホのスタート画面に通知が来ていた。素直に嬉しい。お互いに、常に連絡を取り合うようなタイプでもないから、うん、本当に嬉しい。
どうやって返事を返そうか、いやもちろん行くのだが、楽しみな気持ちが溢れ出ている返事を返すか、引かれないように淡々とした返事をするか、いやそれでは行きたくないのかもしれないと思わせるかも、と悶々と人気のないロッカー室で考えていた。誰か来たら変に思われるかもしれないと、返事を考える集中に空きが生じたとき、うぐいすの鳴き声が耳に入った。
六月にもまだいるものなのか。うぐいすについてよく知らないゆえの驚きもあったが、たったの一鳴きで私の心を落ち着かせてくれたことで、こんがらがって行き詰まりつつあった思考も整理された。
『行く!!!』
まるで小さい子どもが遊園地に行くときのような純真無垢な返事。でも、それでいい。まだ大人じゃないんだから。
――大人なんて、なりたくないし。
*
学校は変わらず忙しいが、全く時間を作れなかった最初の二ヶ月と比べたら、ずいぶん時間の、また心の余裕を持てるようになった。これはこのときにすればいい。これはもうやらなくてもいい。そんな具合に調整ができるようになり、趣味に浸る時間も作れるようになった。
このなんともいえない充足感を味わうのは、私のストレス解消法だ。そこに、つい先日、新たな楽しみが増えて、繰り返しだけの退屈な景色にも少しだけ色味が増した。学校から帰るときに思う。緑ってこんなに鮮やかだったっけ、と。
気のおけない友達と遊ぶなんて初めて。服は何を着ていこうかなんてデート前の女の子のような悩みと切実に向き合い、アニメの趣味で大部分が失われたお小遣いの残り全部を財布に入れ、強い日差しの下に降りた。
いつもなら、まだ六月なのに、と不満をつぶやく暑さが、今は肌に馴染んだ。日陰者の私には眩しすぎる光も、今日は平気だった。
集合場所への足取りも自然と軽くなる。一本早い電車に、具体的には三十分早い電車に乗ってしまったせいで、待ち合わせの時間よりだいぶ早くついてしまった。わかりやすい場所に移動して待っていようと、改札を出てすぐ右に曲がろうとすると、ふいに、あ、と声が出た。
その声の原因、私と同じように声を出して固まり、目を見開いた彼女に駆け寄った。
「はーちゃん!」
数センチだけ上にある目は全く曇りのない笑顔だった。
「ちーちゃん! いると思わなくてびっくりした!」
待ち合わせよりも三十分早くても時間が合ってしまって、これを以心伝心と言わないで何をそう言ったらいいのか。
遊びに行くってこんなに楽しいことだったんだ。
はーちゃんと同じ歩幅で、隣を歩いているだけで本当に本当に幸せだった。
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