第3話 調査結果

それから2週間、綾乃さんの帰宅時間に合わせて下校する事で、何度か綾乃さんと遭遇する事ができた。


わかった事は、綾乃さんは帰宅前、実家の周りをキョロキョロ確認している事。

それと、家のポストをしきりに確認している事だった。

例のイケメン彼氏は、あの日以来見ることがなかった。


明らかに何かを気にしているようだったが、それが何かはさすがに分からなかった。


ある日の放課後、紗英が私に問いかける。


「美咲、綾乃さんの様子、明らかに変だよね?」


『それは私も思った。何かに脅えてるような…。もしかして、凶悪犯罪に巻き込まれてるとか⁉︎』


「凶悪犯罪って…一体何?」


『そりゃあ、殺人事件の目撃者になってしまったとか、国家機密を知ってしまって政府から命を狙われているとか…。』


「ありえないでしょ。」


唐突に私たちの会話を遮る声が入る。

この声は、いつも居残りをさせられている、通称[影薄丸]だ。


影薄丸…本名、板垣冬馬。頭は悪くなくて顔もそこそこなはずなのに、異様なくらい他人と関わらない。

宿題をいつもやらないから、居残りの常習犯だ。


私たちとは、何かと縁があり、過去に何度か一緒に事件を解決してきたけれど…。


『あんたの方から話しかけてくるなんて珍しいわね。もしや、綾乃さんに興味あるとか?』


「そんな訳ないでしょ。ただ、あんまりにもしょうもない話が聞こえてきたから、思わずツッコんだだけだよ。」


相変わらず、どこか冷めた態度で上からもの事を言ってくる。


『話、だいたい聞いてたんでしょ?だったらアンタは綾乃さんの悩みが何なのかわかる訳?』


私は、いつもより強い口調で影薄丸に問いただす。こんな奴が、私たちより綾乃さんの事を知っている訳がない。


「うーん…仮に凶悪犯罪とかなら、とっくに警察に相談してるんじゃない?話を聞く限り警察は動いて無さそうだから、きっと相談する前だね。」


『じゃあ、他に綾乃さんは何に脅えてるのよ?』


「そのお姉さん、美人なんだろ?だったらストーカーってとこじゃないかな?」


ストーカーと言う言葉を聞いて、私も紗英もハッとする。確かに綾乃さんは美人だから、変な男に因縁を持たれる可能性は充分にある。


「でも板垣くん、綾乃さんにはイケメンの彼氏がいるんだよ?ストーカーなんてされるかな?」


『紗英!ストーカーの正体は私たちが見つければ済む話よ!そろそろ綾乃さんが帰る頃だわ!行こう!紗英!』


私は影薄丸の推測を聞いて、いてもたってもいられなくなった。


「あ、美咲…ちょっと待ってよ。板垣くん、ありがとうね。」


「奥間さん…って、行っちゃったか。」


影薄丸が何か言い残したように思ったが、とにかく私たちは綾乃さんの家の近くに急いだ。

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