第43話 悩み事と扱い方
恒例の金曜日の夕方。
いつものように十六夜は俺の部屋でまったりゲームをしながら寛いでいた。
「あ、また負けた。ちぇ。ねぇ、ゆうくんもやろうよ」
「え? あぁ」
「どうしたの? 上の空だけど。私と居るのがつまらないってこと?」
「いえ。滅相もありません。めちゃくちゃ楽しいです」
「その割には楽しく見えないのですけど?」
「ご、ごめん。少し考え事をしていて」
「考え事? 言ってみなさい」
正直、十六夜に言えるような話ではなかった。
朝比奈さんのこと。葵のこと。
問題は色々抱えている。
「もしかしてこの間、うちに来たこと?」
「えっと……」
「あーやっぱりそうなんだ! 気にしないでって言ったのにまだ考えているの?」
「いや、別にそんなんじゃ」
「先のことよりも今を楽しもうよ。ね?」
「そ、そうだね」
可愛い。十六夜が超可愛く見えた。やっぱりこの子が俺の彼女でよかったとつくづく思う。とはいえ、この関係を続ける為には二人の存在をどうにかしなければならない。
「あ、あのさ。十六夜」
「何?」
「俺たちが付き合っていることって誰かに言った? 例えば朝比奈さんとか」
「可憐? 言ったよ。友だちだし。何で?」
「いや。朝比奈さんだけ?」
「あと知っているって居ないんじゃないかな? 可憐が喋っていたら知らないけど」
「なるほど。ちなみに朝比奈さんは何て言っていた?」
「頑張れだって。それだけかよって思ったけど」
十六夜の口調から見て朝比奈さんが俺を狙っていることは知らないらしい。
言うべきか? いや、二人の友だち関係にヒビを入れるわけにはいかない。
かと言ってこのまま言わないと朝比奈さんの誘惑攻撃が続くことは間違いない。
俺はどうすることが正解なのだろうか。
「ゆうくんってもしかして可憐の方が好きだった?」
「へ? 何で?」
「だって可憐の話をすると気になって仕方がない感じが出ているよ」
うん。別の意味で気になって仕方がない。だが、十六夜の誤解を解くには難しいところがある。
「違うよ。俺が好きなのは十六夜だけだよ」
「本当? 嬉しい。私もだよ。ゆうくん」
やっぱり今のままでいたい。
「十六夜!」
俺は欲望のまま十六夜をベッドに押し倒した。
「はへ? ど、どうしたの?」
「いや、可愛すぎて」
「もーバカ!」
雰囲気に飲まれて制服を脱がそうとした時だ。
十六夜の手は俺の手を阻止した。
「へ?」
「なんか、気分じゃない」
「気分って何だよ」
「勢いでヤろうとしてもダメ。もう少し女の子の気持ちを考えてよ」
「どういう気持ちだよ。教えてくれよ」
「……順序ってものがあるでしょ」
「順序?」
「もう、分かっていないな。上から優しくするの!」
「上からって胸?」
「違う! ここよ。ここ!」
「頭?」
「そう。頭、頬、唇、首筋の順番でゆっくり触るの。徐々に体へ持っていく。それが女の子の扱いってものでしょうが!」
「う、うん」
「あー! 今、こいつ面倒くさ! って思ったでしょ!」
「思っていない。思っていない」
「嘘! 顔がそう言っていたもん! あーやっぱり男ってそうだよね。ヤレればそれでいいんだから。あーやだ、やだ」
「ちょ、十六夜。怒らないでよ。俺が悪かった」
「絶対思ってないじゃん」
「思っているよ」
「じゃ、証明してよ」
「しょ、証明? 何をすればいいんだよ」
「私を優しく抱く」
「じゃ、いくぞ」
俺は十六夜の頭を撫でた。そしてその手は頬、唇、首筋へ行く。
「ひゃっ!」
「十六夜。感じている?」
「感じていない。少しくすぐったかっただけだし!」
「わ、分かったから。そうムキにならないでよ」
「続けて」
「お、おう」
俺は二の腕を揉んだ後に胸へと手が伸びた。
「あっ、あっ、ん」
「十六夜?」
「何でもない。ゆうくんもなかなかやるわね。少し火照ってきたよ」
「脱がしていい?」
「その前に!」
「何?」
「言い忘れていたけど、私。生理だから上までね」
「ここまで来てお預け?」
「それ以外なら許す」
「じゃ、胸を揉ませて」
「小さいけど引かないでね」
「小さいなら小さいで好みかも」
「……バカ」
友だち時代では考えられなかったことを今は平気で出来ていた。
これが恋人というやつか。
俺はそのありがたみを噛み締めて十六夜と楽しいひと時を過ごした。
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