第42話 宣言とすれ違う思い


「私はゆうくんとずっと一緒にいたい。だから神社を引き継げません」


 十六夜の発言に家族たちは全員、目を丸めた。


「なるほど。それが十六夜の結論か。だが、甘いわ。所詮高校生の付き合い。そんなもの長続きするわけがあるまい!」


 認めようとしないひいおばあちゃんは追い討ちをかけた。


「長続きするもん!」


「無理に決まっとる!」


「まぁ、まぁ落ち着いて。おあちゃんも十六夜も」


 止めたのは十六夜の父親だ。


「はい。この話は終わり! 別に引き継がなくても家族以外でどうにかなります」


「何を言うか! 代々受け継がれた夜桜家に終止符を打つつもりかえ!」


「はいはい。おばあちゃんはお疲れでしょう。向こうでゆっくりしましょうね」


 ひいおばあちゃんは強制的に部屋を追い出される形となる。


「いやーすまなかったね。高嶺くん。気にしなくていいから。さ、さ。ドンドン食べちゃって」


「ど、どうも」


 いや、いや。今の状況の後にゆっくり飯が食べられるわけがない。

 それに夕方、軽く軽食をとった分、喉があまり通らないことも影響していた。

 それはそれとして十六夜の気持ちをハッキリ聞けたことが嬉しかった。

 そんな夜桜家の夕食会は幕閉じた。


「今日はありがとう。ごめんね。変な感じになっちゃって」


「いや。賑やかな家族じゃないか」


「そう? 家族が集まればいつもあんな感じ。でも、私はそんな姿をゆうくんに見せたかった」


「その為にわざわざ呼んだの?」


「まぁね。ゆうくんの人見知り度合いもよくわかったし」


「だから言ったのに」


「それを含めて好きだよ。これから嫌な部分を含めていっぱい知っていこうよ」


「十六夜……」


「じゃ、また明日。これからもよろしく!」


「あ、あぁ。こちらこそ」


 そのまま俺は帰宅した。

 少しトラブルになりかけたが、この先どうなるのかまだ分からない。

 それでも十六夜と共に生きたいと強く思った。




 時刻は二十一時を過ぎた頃である。

 人との接触で少し疲れが出ていた俺はすぐに眠りたかった。

 家の門に手をかけたその時だ。

 背後に人の気配を感じ、振り返った。


「……葵?」


 部活帰りと思われる葵と俺は鉢合わせていた。

 ここしばらく喋れていないのでなんと声をかければいいか迷っている時だ。

 葵は無言のまま、自分の家に歩を進めた。


「待てよ。葵。今、帰りか? 練習長引いたのか?」


「………………っ!」


 葵は目線だけ俺に向ける。その目は鋭く冷たさを感じた。


「何で何も言わないんだよ。お前、最近どうしちゃったんだよ。葵らしくないじゃないか。以前のようにしつこい……じゃなくて明るい葵はどこに行っちゃったんだよ」


「悪いけど、疲れているから」


 その一言を残して葵は家の中へ消える。


「葵?」


 本当にどうしてしまったのだろうか。

 これも何かの作戦? 

 いや、全然分からない。

 俺は訳がわからないまま、家に入る。

 今日は色々あり過ぎた。

 もう頭が回らない。そのまま眠りについて一日が終わっていた。



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