第28話 深夜のゲーム
『これから寝るまでゲームでもしようか』
朝比奈さんからのメッセージに俺は眠気が覚めていた。
時刻は二十三時半を過ぎたところ。
ゲームをするなら俺の部屋で格闘ゲーム、レースゲーム、討伐ゲームなど様々なゲームが出来る。但し、それは俺の部屋でしか出来ない。お互いの家に居ては出来るものも出来ないだろう。オンラインゲームなら互いの家で出来る訳だが、朝比奈さんはこういった類のゲームは持っていないので実質できないだろう。
一体、何のゲームをしようと言うのか。
『ゲーム?』と聞き返すと『電話してもいい?』返された。
今は一人であることから電話は可能だ。
するとすぐに朝比奈さんから着信が入る。
「も、もしもし」
『ゲームをしましょうか。高嶺くん』
「ゲームって何を?」
『そんな構えないでよ。ただの遊びだから。でも遊びとは言っても何も無しだとつまらないから何か賭け事でもしない?』
「賭け事ってお金とか?」
『友だち相手にお金を賭ける訳ないじゃない』
「じゃ、何を賭けるの?」
『そうだね。なら誰にも言えない秘密でも賭ける?』
「誰にも言えない秘密?」
『あるでしょ。友だちにも親にも言えないような秘密の一つや二つくらい。負けたらその秘密を一つ暴露するって言うゲームだよ』
秘密か。まぁ、あると言えばあるかもしれないけど、それよりも朝比奈さんの秘密も知りたい自分がいるのも事実だ。
「分かった。やろう。それでそんなゲームをするの?」
『流石、高嶺くん。話が早くて助かる。じゃ、ゲームのルールを説明するね。今回行うゲームは三種類を駆使したもの。一つはカタカナ禁止。一つは濁音半濁音禁止。一つは会話にならない。以上の条件で会話をすること。このゲームのルールは分かるよね』
「随分、条件が多いね。つまりカタカナ言葉と濁音半濁音の単語は一切禁止で会話を続ける中で会話を成立させないことがルールってこと?」
『その通り。条件が多いのは短期決戦にするため。深夜の電話で長引かせると脳が回らなくて疲れるでしょ? だからこれらのルールを駆使してゲームをしよう。罰ゲームは自分の中の秘密を暴露。どう? 楽しいでしょ?』
「電話でどんなゲームをさせられるのかヒヤヒヤしたけど、そんな単純なことで助かったよ」
『単純に見えてこのゲームは結構難しいよ? 私は絶対に負けないし、必ず高嶺くんの秘密を知るつもりだから覚悟してね』
「どこからでもかかってこい」
『行くよ。ゲーム……スタート』
開始の合図がされた直後、無音が十秒ほど続いた。
『何? 開始から無音は卑怯よ』
「朝比奈さんって今、何をしているの?」
『あーお腹空いたな。お寿司が欲しいかも』
ゲームは既に始まっているため、出だしは最初に乗っ取ったルールを守って会話を始めた。意識しながら発言しているが、このルールの難しさを痛感した。
普段、使い慣れている言葉が制限されている分、制限されたことで自然に会話するのが難しい。おまけに会話を成立させたら負けに繋がるので難しさは最高レベルだ。
「朝比奈さんはいつもなんしに寝るの?」
『起きるのは決まって七し。あそんていたら普通に遅刻たよ』
「それは大変たね。ちなみに俺は深夜の二しには寝るように心かけている」
『私は基本、朝こはんはたへないんた。朝はにかい汁を飲むのかちょうといいくらい』
無理やりルールを守って喋っているが、お互い日本語が慣れていない外国人のようなおぼつかない会話になっていた。
でも相手の言っている発言の意味は理解できる。
ゲームに勝つためには少し仕掛けてみるか。
「朝比奈さんってしつはみとりいろか好きてしょ。持ち物の傾向か決まってみとり」
『あー私って猫派より犬派なんたよね。知っていた? てもうちては犬なんて飼えないからいつか飼ってみたいんたよね』
「みとりといえはいつも止めているかみとめってしふんて買ったの? それともたれかの贈り物? なーんて」
『髪といえはのひてきたところたし一層、みちかくしようかな。高嶺くんはとう思う?』
「俺的にはみとりもすてかたいけと、朝比奈さんの似合う色といえはそう、みすいろかな。透き通るみすいろかかかやいていると思う」
『うーん。そういえはいつからみちかくしてなかったかな。私は中かくの最初の頃はみちかかったんたよ。高嶺くん的にはみちかいのとなかいのとっちかいいと思う?』
「確かに朝比奈さんと言えば犬ってかんしがするね。俺も犬派かも」
『そうなんた。明日、思い切ってひよういんに行こうかな。高嶺くんはとう思う?』
「明日といえはあそひに徹したいところたけとへんきょうもしなきゃたし余裕はないか」
『高嶺くん。今、なんし?』
「朝比奈さん。今、変な物音しなかった? カサカサって」
『え? もしかしてゴキブリ? マジで無理なんだけど!』
ゴゴゴッと朝比奈さんが激しく動き回る気配が電話越しに伝わる。
「ゲームセット。朝比奈さん。禁止用語使ったから俺の勝ちだ」
『げっ! 高嶺くん。もしかして騙したな』
「まぁ、これもゲームだから作戦のうちってやつだよ。それにしてもこのゲーム、かなり難しかった。いつボロが出るかヒヤヒヤしたよ」
『どう? いい頭の体操になったでしょ?』
「あぁ、それに楽しかったよ。こんなゲームをするのは初めてだったし新鮮な感じ」
『それは良かった。それよりゲーム中の会話だけど……』
「ゲーム中の会話?」
『ほら、水色が似合うとか』
「あぁ、それは本心だよ。朝比奈さんって何色が好きなの?」
『緑。でも水色も取り入れてみようかな?』
「うん。いいと思うよ」
『それとさ。私ってロングとショートだとどっちが似合うかな?』
「ロングの朝比奈さんしか知らないけど、ショートもショートでありだと思う」
『じゃ、挑戦してみようかな?』
「いや、俺が言ったからって本気にしないで。似合わなかった時の責任は取れないし」
『大丈夫だよ。顔が可愛ければどんな髪型だって似合うだろうし』
「あ、可愛いのは自覚あるんだね」
『まぁ、男にあれだけ言い寄られたら嫌でも自覚するでしょ』
「た、確かにそうですね」
『なんで敬語? それよりも自信があったけど負けは負け。私の秘密、知りたいでしょ?』
「いや、無理やり言わせているようになるからいいよ。言いたくない秘密の一つや二つはあるだろうし」
『でも友だちとして秘密を知る権利はあると思うよ。勿論、高嶺くんが人の秘密を言いふらすような人じゃないって信じているから知ってほしいと思うんだ』
「一体、どんな秘密があるっていうの?」
『じゃ、ゲームに勝利した高嶺くんに私の最大の秘密を暴露します。勿論、これは他言無用でお願いします。高嶺くんの心の中だけに留めておいてね』
朝比奈さんは自分の秘密を俺に打ち明けた。
その内容は衝撃を与えるものだった。
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