第22話 泊まる?
朝比奈さんと夜桜さんが帰ろうとした直後、激しい豪雨が襲った。
「うわっ。凄い雨。今日の予報って雨だったっけ?」
「可憐って天気予報、見ないタイプだよね。予報では雨だったけど、六十パーセントだから大丈夫かと思ったけど外れちゃったね」
「まぁ、帰れないこともない……」
その直後、窓を叩きつけるような雨が襲う。
俺はスマホで最新情報を検索する。
「……大雨注意報? 警戒レベル四だって」
「それってやばいの?」
「それ、外に出歩くなってレベルだよ」
夜桜さんは事情を把握しているようだが、朝比奈さんは分かっていない様子である。
注意報はいつ解除されるか分からない状況で帰るに帰れない。
「どうしよう……」と、考え込む夜桜さんに対して朝比奈さんは焦った様子はなかった。
「どのみち帰れないならさ、一層泊まる? 高嶺くんの家に」
「へ?」
「ねぇ、いいでしょ。高嶺くん。緊急事態だし」
「俺は構わないけど……」
いや、よくないだろ。年頃の女の子が男に家に泊まるなんて何かの間違いが起きても言い訳できない。それを分かって言っているのだろうか。
だが、この大雨の中を放り出すのもどうかと思うので悩みどころだ。
「そうだ。タクシーを呼ぼう。それなら帰れるよ」
「今の時間ってやってないんじゃない?」
「それにいくらタクシーでも乗っている身として不安だし」
二人はタクシーに対してネガティブな意見を述べた。
「仕方がない。今晩は泊まるか。明日休みで良かったね」
「本当、本当。まぁ、学校あったらサボっちゃうかもだけど」
何故か二人は泊まる方向で話が進んでいた。
え? こんな美少女二人が俺の家に泊まる? そんなことがあっていいのだろうか。
それはいくら何でも如何なものかと思う。だが、受け入れるない。
不謹慎だが、俺はこの大雨警報に感謝する日が来てしまったようだ。
「お風呂沸かしてくるよ」
内心、俺は動揺していた。
朝比奈さんと夜桜さんが泊まる。
一緒の部屋で? いや、それはダメだ。俺は両親の寝室で寝ればいい。二人は俺の部屋で寝てもらえばいいだろうか。
「俺は最後でいいけど、どっちが先に入る?」
「ねぇ、十六夜。一緒入ろうよ」
「ん? そうだね。ガス代も浮くだろうし。高嶺くん。お先いただきます」
「あぁ、ごゆっくり」
俺の家で二人は裸になっている。いかん。変な想像するな。
だが、考えを逸らそうとしてもシャワーの音が頭の中に流れてくる。
もし、裸を見たら最後。一瞬で友だち関係が崩壊してしまう。それはあってはならない事態だ。
俺はヘッドホンをして音楽を聴くことに集中する。
「……くん。高嶺くんってば!」
強制的にヘッドホンを取られた俺は振り向いた。
「お風呂ありがとう。次、高嶺くん入って来て」
そこには俺の部屋着を来た朝比奈さんと夜桜さんの姿があった。
俺の情けない部屋着が輝いて見えた。
風呂上がりってことは当然、ノーブラってことなのでは。また、変な妄想が膨らむ。
「随分、早かったね」
「高嶺くんが待っているから急いで入ってきた」
「別にゆっくりでもいいのに」
「そうもいかないよ。さぁ、いってらっしゃい。適当に寛がせてもらうから」
「どうぞ」
雨の勢いは増していた。
家の中に居ても分かるくらい吹き荒れる音が鮮明に聞こえる。
「二人が入った後のお湯……」
また俺は変な妄想をしていた。
飲みたいとかそんなことを考えている訳ではないが、気持ちの整理が付かない。
早く風呂に上がって寝てしまおう。それが一番。
バサッと湯船から上がりバスタオルで体を拭いている直後である。
突如、脱衣場の電気が消えた。誰かに消された? いや、家全体の照明が消えたのだ。
これってまさか停電?
明かりの元になるスマホは部屋に置いて来てしまった。
俺は手探りでブレーカーがある台所へ向かう。
「くそ。何も見えない」
手を伸ばしたその時だ。
「ひゃ!」
何か柔らかいものに触れた直後に夜桜さんの声がした。
「え? 夜桜さん?」
「トイレしていたら急に真っ暗になっちゃって」
「待っていて。今、ブレーカーを上げるから」
歩を進めようとした直後である。
後ろから抱きしめられる感覚が伝わった。
「置いていかないで」
「夜桜さん……もしかして……」
その手は小刻みに震えている。おそらく暗いのが苦手なのだろうか。
手を握りながら何とか台所に辿り着き、背伸びをして分電盤の蓋を開ける。
やはりブレーカーが落ちている。俺は主電源をオンにして部屋の明かりを取り戻す。
視界が明るくなった瞬間、俺は目を疑う。
先程まで俺の横に居たと思われる夜桜さんが朝比奈さんに変わっていたからだ。
「え? 朝比奈さん? いつから居たの?」
「何を言っているの。私はさっきからずっと高嶺くんの横に居たよ?」
「え? でも……」
「驚いた? 十六夜だってスッカリ騙されたね。それに高嶺くん。さっきどさくさに紛れて私の胸を触るんだもの。やるときはやるんだね」
「いや、違う……」
「安心してよ。十六夜には黙ってあげるから」
その瞬間、朝比奈さんは唇を俺の頬に押し付けた。
「なっ!」
「ハプニングの序で。さて、部屋に戻りますか。後、一冊読みたい気分だし」
朝比奈さんは小悪魔的に笑ってみせる。
その行動の意図は何だろうか。
朝比奈さんの考えが俺には分からない。
ただ、俺を誘っているのは明らかだ。それに乗るか乗らないか。
その選択を俺は迫られている。
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