第49話 【正体不明のケモノ】トゥトゥ(O Tutu)

 トゥトゥは、バイーア州、ペルナンブーコ州、リオ・デ・ジャネイロ州そしてミナス・ジェライス州でよく知られた妖怪で、全身が黒く、決まった形がないとされている。性別もはっきりしないが、おそらくはオスである。


 一説によれば、頭部がないとか、足を引きずって歩くという。そして、彼の声は、いかづちのように響くそうだ。別名トゥトゥ・マランバ (Tutu Marimba) 、ビーショ・ド・マトゥ (Bicho-do-Mato:「森の動物、野獣やじゅう」の意) 、又はポルコ・ド・マトゥ (Porco-do-Mato:「森の豚」の意) と呼ばれている。


 普段は森にんでいるが、町に現れるときは家のドアのかげに身をひそめ、夜更かしをする子どもや泣いている子どもを怖がらせるという。また、トゥトゥは美少年が大好きで、可愛い男の子を見つけるとコソコソと後を追う。そして欲望を抑えきれずに、ついにはペロリと食べてしまうといわれている。


 トゥトゥを怖がって眠れない子のために子守唄(作詞・作曲者不明のブラジル民謡)があり、一部を引用すると次のようになる。


「Tutu-marambá não venha mais cá Que a mãe da criança te manda matar……」


(訳:トゥトゥ・マランバはこっちに来ないよ、ママがやっつけちゃうからね……)


 この歌詞の一部が、ママでなくパパになっているバージョンの歌もある。そこは歌い手によって歌詞を変えればよいようだ。

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