第12話 【山男】カイポーラ(O Caipora)

 カイポーラは人型の妖怪である。大抵は上半身が裸で、黒い長髪をしており、全身の毛が濃い。筋骨隆々きんこつりゅうりゅうで体の大きな男性というのが一般的なイメージだ。


 彼は、野生のブタ(特に群れのなかで最も大きいもの)にまたがっていて、鉄のやりを持っていることもある。屈強くっきょうな戦士を連想させられるが、彼は自然の保護者と考えられている。カイポーラは、森の動物を守るために、多くの罠を張って森に入ってくるハンターを惑わす。また、死んだ動物を蘇生そせいさせるという特殊な能力を持っているそうだ。


 カイポーラは、ブラジルの各地域でそれぞれ違った呼び方をされており、カアポーラ (Caapora) 、若しくはカイカーラ (Caicara) と呼ばれることがある。彼らは交差点や曲がりかどに現れ、人々に不運をもたらす。このことをカイポリーズモ (Caiporismo) という。


 この妖怪は、普段は森の奥で生活しているが、町で祭や祝事いわいごとが行われると、普通の人間に変装をして出てくる。そして、町の人々と交流するという。日本の妖怪では「山男」に似ている気がする。


 ところで、カイポーラの正体は、ヨーロッパ人が入植してくるときに彼らを出迎えたインディオのトゥピ・グアラニ (Tupi-Gurarani) 族だといわれており、今でも海岸地帯に古くから住み、漁師をしている混血の人々(一般にメスチーソやムラットと呼ばれる)はカイカーラと呼ばれている。

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