迷子

手紙は真っ赤な封筒に、一枚の手紙と鍵だった。宛先は、俺と玲だった。

『愛しの玲ちゃんと隅田尋也様へ

 玲ちゃん、やっと見つけたのね。ママは二人のことな大好きよ、玲ちゃんがこの家に帰ってきたってことは、何かあったんでしょう。でもね、困ったことがあったらいつでも頼っていいのよ。それから、きっと二人でこの家を出て隅田さんのお家に住むのだろうけど、もしも、お部屋に困ったら前に教えたマンションのお部屋あげる。隅田尋也様これから玲ちゃんに色々なことがあって、色々なことを知ると思うけれど、隅田さんならきっと大きな器で包んでくれると信じています。どうぞ玲ちゃんをよろしくお願いします。』

 いつ来たんだろう…その前に人がいた事に驚いた、人気なんてなかったし、物音なんて一切しなかった。今きずいたけど水の入ったペットボトルとタオルまで、ヤッテる事築いてたのかな。恥ずかしい…挨拶だってしてないのにこんなことして。俺礼儀知らずにも程があるぞ。

 霧嶋さんの家は不思議だ。人がいるはずなのに物音がしない、皆静かな人なのかなって思うけど、そいうレベルの話じゃい。霧嶋さんのお母さんに挨拶しようと思い部屋を見てみたが、物音も話し声も人がいた形跡も、何も無かった。霧嶋さんが言っていた『以内も同然』とはこのことなんだろうと思った。霧嶋さんいる部屋へ戻ろうと思ったが、似たような部屋が多く、迷子になってしまった。

 一つのドアから声が聴こえた。

「尋也だな、部屋はナイフとフォーク、真ん中にベルゼブブの絵の部屋だ。」若そうな男の人の声だった。ドアの絵はいかにも悪魔って感じの絵だった。

「ありがとうございます。」

 よく分からないが、言われた通りナイフとフォークの絵を探した。そのドアを開けると、不安げそうに部屋をウロウロしていた霧嶋さんを見つけた。

「尋也!良かった。どこに行ったのかと思った。大丈夫?変な部屋とか入ってない?」変な部屋とはど言うことだろうか。

「一階のリビングと廊下しか行ってないよ?」霧嶋さんはほっとしていた。

「そう、良かった。今度部屋から出と時は私に言って。きっと迷子になっちゃうから。」「そうだね。迷子になっちゃって、教えてくれた人に感謝だよ。」そう言った瞬間霧嶋さんの顔は真っ青になった。

「誰に教えてもらったの?男?女?どこの部屋?絵はなんだった?」こんなに慌てている霧嶋は初めてだ。俺は大変な事をしてしまったと思い、霧嶋さんに一から説明した。

「玲にタオル持ってこようと思って、部屋を出たら赤い封筒とタオルと水の入ったペットボトルがあったんだ。封筒の中身は、鍵と手紙で、玲のお母さんからだった。それで、俺挨拶に行かないとって思って部屋を出たんだ、でも、誰もいなくて戻ろうと思ったけど、迷子になっちゃって、悪魔みたいな絵のドアから、『ナイフとフォーク、真ん中にベルゼブブの部屋』って言われて戻ってこれたんだ。本当にそれだけだよ。ごめん。」

「私もごめんなさい。取り乱しちゃって。それだけなら大丈夫。もう、勝手に外出ちゃダメだよ。」霧嶋さんはそっと俺を慰めるように、抱きしめて頭を撫でてくれた。

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