逃げる

「俺が悪いみたいに入るけど、貴方は誰ですか?」口調は丁寧だけど、威圧して怒っているのには変わりないな。霧嶋さんを守りたいけど、普通に逃げたい。

「隅田です、隅田尋也です。」

 自分の名前を出した瞬間向こうの顔色が少し変わった。驚いた顔をして、少し鼻で笑った。

「お前、玲に頼まれたんだろ、俺を離すために。何?隅田だぁ?そんなやつはいねぇんだよ。玲、お前は夢見てるんだよ、お前が会った隅田はきっと、今のお前を見たらガッツリするかもな。こんな薄汚い女になりやがって。このガキが!」霧嶋さんに取って俺はどんな風に映ってて、周りにどんな風に言っていたんだろ。ファミレスで会った不良もそうだけど。俺の名前を出す度に相手の表情はガラッと変わる。そして、この人は霧嶋さんにとって何なんだろ。

「あの、お言葉を返すようですが?貴方は霧嶋さん何なんでしょうか?」

 霧嶋さんは俺の後ろにたって隠れていたが、俺の服の裾をぎゅっと握っ出来たのは、何かの恐怖なのか後ろめたさなのか、今の俺には分からない。

「なんだ、玲こいつに言ってなかったのか?俺はな、コイツの宿兼セフレだ」

 俺はふと思い出した、不良が言ってた『よく分かんねぇおっさんの所にいんのか?』あれはきっとこの人だ。霧嶋さんを利用して性欲を満たしているんだ。

「尋也、もう行こ。」

 霧嶋さんは俺の腕を強く引っ張り走り出した。遠くからさっきの男が怒鳴り散らかしていたが俺達は走ることに精一杯だった。

北綾瀬駅前

「尋也、ごめんね。詳しいことは話すけどもう少し待って。」

 霧嶋さんはタクシーに手を振り霧嶋さんと俺はタクシーに乗り込んだ。

「千代田区の霧嶋家までお願いします。」

「あぁ、いつものね。」霧嶋さんはよくこのタクシーを使うんだ。でも、今から霧嶋家に行くってこと?さっきのはやっぱり家族の人じゃなかったんだ。

「玲、荷物大丈夫?それで全部なの?」

 霧嶋の手には大きいビニール袋2個に服が溢れそうなぐらい入っていた。

「これで全部じゃないけど、自分の家に揃ってるから、今日は遅いし一晩寝て、明日尋也の家に帰ろ。」霧嶋さんの家に今度こそ行けるのか。

「お邪魔して大丈夫なの?」霧嶋さんの家とはいえ、他人の俺が入っていいのか分からない。もしかしたら厳しい家かもしれないし。

「大丈夫だよ。むしろ歓迎されると思う。」

 タクシー乗ってから40分ぐらいたった。

(着きましたよ。今金額出すからね。)

 霧嶋は一万円出した。

「いつもありがとうございます。」

 金額はだいたい七千円ぐらいだった。俺はタクシーに乗ることはないが、高いのか安いのかいまいち分からなかった。

 霧嶋家

 降りて築いたが、霧嶋さんの家が大きくて驚きが隠せなかった。昔一人暮らしする時『東京、土地、高いランキング』で千代田区が上位にいたような気がする。俺自身はかなりの世間知らずで、だけど、時より無知過ぎて困る。

「霧嶋さんの家大きいね…」

「あっ、霧嶋さんって言った!玲って呼んでよ。」これ見たあとに呼び捨てにできる人の方が少ないと思うけど…

 

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