第27話魔法少女が増えましゅた?

 再開を喜ぶも素早くマイコを抱えて移動を開始する。


 シャオリーの言った言葉を信じるならば殺すことはできないし近づくだけでもマイコに何かされるのを避けたい。


 雨に打たれながらであるがパルルはそう判断すると、飛翔するスピードぐんぐんと上げいくと自宅へ避難した。





 ニコニコと笑みを浮かべながら変身を解いたひまりとマイコはキャッキャとお風呂で身体を洗いっこをしている。


 ボディーソープの泡で包まれながら幸せそうにマイコにしがみ付くひまり。

 まるでこれは私の宝物だと言わんばかりに所有権を体で主張する。


 泡を全て洗い流し終わると。ゆっくりと湯船に浸かるとさっそく作戦会議を始める。


「なんでマイコ姉しゃんは無事なんでつか? みんなみんなおかしくなってるでつよ?」


 うーん、うーん、ひまりのほっぺに顔をくっつけつつも考え込むマイコ。

 ひまりの身体をこれでもかと抱き締めうぇへへと涎を垂らしている。


「うーん、多分だけれどこの前ひまりちゃんがピカピカ光ったじゃない? あの時の金色の粒子がわたしにも掛かってたから神様の……加護みたいなやつじゃないかな?」


「そうでつか? ひまりはよくわかんないでしゅよ……ピカピカが金色のなったことぐらいしか」


「ひまりちゃんは、えいやッ! ってその金色のピカピカ出せないの? そうしたらみんな元に戻るんじゃないかな?」


「うーんと、うーんと、えいやッ!! ――――――出ないでしゅ」


 それから何度も挑戦はするが一向に出る気配はない。変身しても目の色が金色になるだけでピカピカは出ないようだ。

 お風呂にはいっている時間が長すぎてマイコはのぼせてしまいひまりが抱えて脱衣所に向かう。丁寧に介護されタオルで拭き拭きされているマイコはとてもだらしない顔をしているようだ。


 風呂上がりでホカホカ湯気を出している二人はリビングのソファーにてトロトロにだらけていた。ひまりは数々の仕打ちを受け戦闘までこなしている。気持ち的に疲れていないはずはない。


「ひまりちゃん雨に打たれたし色々大変だったでしょ? 抱っこしてあげるから今日はゆっくり寝なさいな」

 

 何も言わずにマイコのお腹にへばりついているひまりは無言で顔をふにふにお腹にうずくめる。

 頭を撫でられているひまりの目がトロンとしてくると小さな体を抱えひまりのお部屋に向かう。

 ベットにひまりを寝かせるとマイコ自身も布団に包まり、体を寄せ合って眠りにつく。なんだかんだとマイコも疲れていた様子だ。





 黄泉と現世の狭間、不定形な太陽の如きエネルギーの塊がひとつ。

 現世に干渉し観察し、愚痴をこぼす。


――大陸の魔性の女か、小賢しい真似をする……――


――我が国をここまで汚染しおって……我が妻よ、良いのか……――


――今回だけはどうか協力してくれぬか……――


 狭間に急速に赤黒いエネルギーが収束し人を形作る。

 その邪悪な塊は黙して語らず。


――…………………………――


 太陽の塊は気まずげに邪悪な塊の機嫌を窺う。


――お気に入りにちょっかいを掛けたのはすまぬ……だが……――


――よい…………今回だけじゃぞ……愚かな夫よ…………――


 邪悪な塊は言葉を割り込ませるとしぶしぶ協力を受諾する。


――かたじけい――


 言葉を続け妻への宣戦布告をする。


――だが我が妻といずれ戦うことになろうとも決して諦めぬよ……最愛の人よ――


 返事は返さずに小さな暗黒を腹いせに太陽の塊にぶつけると邪悪の塊は消え去っていく。

 小さな暗黒は太陽の手の平にとどまっており、『ソレ』を現世にいる加護を与えしものに注ぎ込む。


 加護が寵愛へと変わり。より一層の神性が上昇する。


――その身に過ぎたる力を持ちし幼子よ――


――決して道を誤るではないぞ――





「――…………ひまりはいつでも良い子でしゅよぅ……すぴぃーふかぁー」


 ひまりは夢でも見ているのか寝言を言い続けている、抱き付いているマイコの寝巻が涎でベタベタになっているが。

 部屋の温度を蒸し暑くなるくらいの黄金の輝きがひまりから段々と放たれていく。


「ん、んぅ~ひまりちゃんひっつくと熱いよぅ~うう~んッ! ひ、ひまりちゃん!! ピカピカ光ってるぅ!! お、起きてひまりちゃーん!!」


 マイコのお腹にグリグリグリグリ押し付け涎をぬぐい取るとおめめを開かせマイコをホケッーと眺める。まだ目は覚めていないようだ。


「ふぇ、マイコ姉しゃんも少し光ってるでつよ? 魔法少女になったでつか?」


「え、ホントだ……えへへわたしも『変身ッ!』って言えばひまりちゃんみたいに…………ふええええええええええ!」


 マイコの身体もひまりと同じように光り輝き、変身のワードを唱えると。衣服が分解され切り替わっていく。

 変身を終えると白地にセーラー服をフリフリのドレスに改造したようなコスチュームに両腕両足にバングルのようなものが装着されている。


 髪色もパルルとおそろいの金髪碧眼でまるで姉妹のような印象が強い。


「やったでしゅ!! マイコ姉しゃんも仲間になったでつ! これは変身名を考えないといけないでつよ!?」


「えへへ、照れるなあ……実はもう決めちゃってたんだ、パルルちゃんが羨ましくてぇ……ピピルって名前なんだけど……パルルの『パ』の次だから……だめかな?」


「可愛い名前でしゅねッ! てっきりみんなが良く言ってる『くしゃみ爆裂ガール』になると思いましゅた」


「……ひどいッ! あっ、ひまりちゃん笑ってる! からかったなぁ~」


 その後、変身したマイコ、いやピピルの身体能力やバングルの性能を確かめていた。

 魔法能力は飛ぶ以外汎用性は皆無であり、バングルを展開させると破壊不可能を思わせる膝まで覆う漆黒をベースとした脚鎧、鋭角を思わせるトゲトゲしい武装だ。

 腕のバングルも同種のようで各部位個別に展開させることが可能だ。

 

 庭先で石ころをつまんでみたが綿菓子のような感触しかしないとのこと。

 汎用性をすてただただ肉体強化に特化した魔法少女でありいわゆる――――脳筋といわれる部類だろう。


 そのことに気づいたマイコはガクリと地面に手を付きシクシク悲しんでいる。


「ひまりちゃああああん、わ、わたし可愛くてフリフリしている魔法少女になりたかったんだけどなんでこんな脳筋少女なのおおおおッ! 話が! 違う!」


「下手するとひまりよりもパワーあるんじゃないでしゅか? ――ビルなんて一撃で粉砕でつよ? カッコいいじゃないでしゅか!!」


 ひまりはぴょんぴょん飛び跳ね我が事のように喜んでいる。


「う、うーん。ひまりちゃんが言うなら……でもやっぱり変身を解いても身体能力はそのままだなぁ、バングルも収縮してヘアゴムみたいになってる」


 魔法幼女、魔法少女は人外への階段を上るのであって一時的に変身で能力が上がるわけではない。

 変身とは姿形を誤魔化す認識阻害の効果だけであり、他に能力が付与されるわけではない。


 これから生きづらくなるかどうかは本人の捉え方次第だろう。


「マイコ姉しゃん、力の練習しないと生活大変でつよ? ひまりも家のものよくこわしまちた」


「あ、そうだね。むずかしいなぁ……ひまりちゃんも光ってたけど黄金のキラキラ出せるようになったの?」


 ふんぬぬぬとひまりは気合を入れるとまるでおもらしをしたように周囲に光が広がっていく。勢い余って地域周辺まで広がってしまう。


「あ、ひまりちゃん敵っぽい人にバレないかなぁ? 一気に行動しないとまた洗脳されちゃうよ?」


「たぶん……大丈夫でつ、この家は感知されないでしゅから。来てもたどりつけないでつよ」


「そういえばそうだったね。よし、皆を助けるために色々教えて頂戴ひまりちゃん! キラキラは出せないけど戦闘は……できたらいいなあ……そう考えると戦えるひまりちゃんすごいなあ」


 それから夜遅くまで格闘の型をひまりに教えてもらうマイコであった。

 なぜそんなに格闘術を覚えてるのとマイコが質問したのだが、答えはあかしっくに接続してだうんろーど? をしているらしいでつよ。と言われマイコが憤慨した。

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