第25話指数関数的増加とはなんでしゅか?

「こちら特戦群対AU特殊作戦群のケイマだ、目標が空港に内部に到着、引き続き監視を行う。どうぞ」


 耳に装着したインカムで周囲に聞こえないように声量を落とし通信を行う。

 現在九州のとある空港に重要人物が来日するという情報を入手、監視任務に就いている。

 日本はAUに経済制裁を受けている真っただ中であり準警戒態勢に移行、入国検査も厳しいものとなっている。宣戦布告を明確に宣言されていないため入国禁止措置はとれていないがそれに近い警戒を行っている。

 在日している領事館など立ち入り検査をなどを順次行っている状態だ。


 ミサイルを撃たれて遺憾の意を伝えているだけの日本ではないのだ。


 むろん非常時には発砲の許可も各自の判断で行ってよいと許可が下りている。

 領事館での発砲事件以降許可が下りやすくなっている。

 

 脇に装備してあるホルスターに収まる拳銃の重みがズシリと伝わって来る。

 目標の要人は主席の娘なのだがそれにしては護衛は少なく秘書がひとりだけだ、なにかおかしいとケイマ自身も感じている。

 

 まさか魔法幼女の再来か……と思いながらも前例が前例であるために警戒を密に行っている。

 非常時に若く幼い少女を射殺しなければいけないと思うと少し心が痛む、だが現在ほぼ敵対国家であるために非常にならなければいけない。

 国家主席の娘ともなると人質とするのが効果的なのだがそんな非人国家ではない。

 宣戦布告がなされ非常事態が宣言されれば逮捕拘束はできる、それまで何も起こらなければいいがな。 

 俗に言う『勘』というものが先程からガンガンと警鐘を鳴らしている。

 陸自陸上自衛隊に所属してからというもの、この勘の鋭さは隊の中でも一番優れていると評判だ、災害時でもこの勘に幾度となく救われてきた。

 その勘が『あの少女と関わるべきではない』と明確に言ってきている。


 外れればいいのだが俺の意見を伝えておく。


「こちらケイマだ。俺の所見だが……信じるかどうかは任せる、見た目は普通の少女だが俺の勘が言っている――


『危険だ関わるべきではない』


――とビビリと言ってくれてもいい、さっきから冷や汗が止まらないんだ、もし何かあったらすぐさま上に報告してくれ」


 無線を発報してから少し間が開いたのち返事が返って来る。


『こちら作戦本部。ケイマが言うならちげえねぇ、了解した――警戒を密にする』

 

 その言葉に仲間内の信頼という者が見えてくる――心強いものだ……。と柄にもなく思う。


 厳しい入国審査が終わると目標が手荷物を持ち空港を出て行こうとしている。

 すかさず追うように指示を出し移動を開始しようとしたその時。

 鼻をくすぐる甘い匂いが漂ってくる。

 異変を感じた瞬間感じたことをすぐさま発報する。


「何か甘い匂いがする、薬かガスを撒かれたかもしれないすぐさま離脱せ…………」


 通信を切る。


 向こうから安全確認の通信が入って来るも気にならない。シャオリー様に従わなくては。おっ。と普段通。りに行動し。なきゃな。作戦の。迷惑に。なっちまう。


「…………大丈夫だ、問題な。い。目標を。追。跡する。現状のまま警戒行動をとれ」


 通信では了解、と普段通りの返事が返って来る。何そん。なに冷た。いんだ? 仲間だろう? 少し不機。嫌になりながらも監視を継。続する。


『ケイマ隊長はそのまま作戦継続。随時報告を頼む…………検討を祈るッ!』


「お。いおい、そんな悲。壮な通。信送って。来。るなよ。仲間じ。ゃねえか。わかった任。せておけ。どうぞ」


『――――――離脱する』





[AU重要人物である『王シャオリー』の監視任務中、対AU特殊作戦群所属三井ケイマの様子が急変、念のため距離を取り監視を行っていたため他の隊員の異変は見られず。特殊なガスは検知されていないが甘い香りを感じたとの報告、次の瞬間から応答に異変を感じられた。現在、三井ケイマが監視任務の最中であるが部隊の撤退を進言。半径五百メートルには入らないように警戒を行っている。甘いガスの効果範囲が不明なため作戦を再度練る必要あり]


[監視目標である『王シャオリー』が通るルート周辺に僅かに反応が鈍くなる人物が増加中、現在走行するタクシーを高度を上げたヘリから監視を継続中。変異を起こした一般市民から感染するように周囲に変化が起こっている。このままでは不味い。射殺の許可を求む]


[こちらの判断ですぐさま発砲。命中せず。何か見え。ない障壁に阻まれ。たが周辺の様。子の異変は止。まっ。た恐らく危。険と思い作。戦を中止したのだろう。警戒は行うが危。険度は低下。随時報。告を行う以。上]





じわじわとじわじわとむしむしむしばむ





 その異変には一番先にマジカルハッカーが気づいた、警戒網を密にしていたからだろう。

 四国、中国、近畿地方と段々と北上するようにSNS網で魔法幼女に対するアンチ、ヘイトな発言が増え過激になってきている。

 これはおかしいと思い統計を取ると指数関数的増加を辿っている。


 異常を感じ、すぐさま非常事態を団内部に発令。だが――


「ん、団の情報が洩れている、だと……すぐさま東日本地域の情報をシャットダウンッ!!」


 簡易暗号ロックを全デバイスにひとまずかける。解除にはパルル様の指紋と生体情報のみで解除できるように設定しよう――その前に。


「パルル様異常事態ですッ! 間もなくデバイスすべてにロックがかかります。解除にはパルル様のみできるように設定しています。連絡が間もなく途絶えますが後日説明を行いますゆえ……。西日本から北上する形でパルル様に対するアンチ、ヘイトが増加しています。決して普通ではありませんッ! デバイスは使えませんが独自に判断し行動してください、この異常の広がり方ではもしかしたら知人関係にも影響が及ぶ可能性がありますご注意を……そして、私をこれより信じないでください。いいですね? 絶対に私をこれより信じないでください」

 

 これで伝えることは伝えた、一方的に通信を切断してしまったが後日いくらでも謝罪しよう。


 計算を始めてみるとこの広がり方はマズイ、半日もしない内に北海道まで広がる計算だ。

 この分だとすでに東京の郊外にはもう広がりつつあるはずだ。

 現在地はまだ都心にありデバイスに異常は通知してある。

 ぎりぎりまで私が冷静でいら。れればい。いんだがな。にを言うてい。るんだ。わたしはれ。いせいだ、はやくパ。ルルを捕え。ないといけないな。


 デバイ。スの情。報のロッ。クを解。除してA。Uに、ん? 誰だロックが解除でいない。ロッ。クの解除はパ。ルルの生。体情報か。仕。方ない連。絡をし。よう。


 デバイ。スの電。源を入れ通。信を開。始する。


「パ。ルル様の生。体情報を取。得したいの。ですが、私の現。在地へき。ていただ。けますか? 緊急事。態ですの。でお早。めにお。願いし。ます」


「………………お断りでつ。信じないことを信じるでしゅよ?」


 なに。を言っ。ているんだこ。のクソガ。キが、調子に乗。りやが。って。


「いえ、先。程の発言は撤。回させて頂きま。す。良。い子のパ。ルル様は悪い。子ではあ。りませ。んよね?」


「ハカセは良い子悪い子なんちぇ、一度も言ったことないでしゅ。もうおかしくなったんでつね――――嘘は私に通用しないでつよ?」


「………………AUを敵。に回し。てただで済。むと思。うなよク。ソガキ」


 握りし。めたデ。バイスの通。信を切。り地。面に叩き。つける。


 あれ、なんだ。か頭。が割れ。るよう。に痛く。なっ。てきた。


 ああ、カミヨ、使命をわすれたわけではありませぬ、もうしひらきもありませんしばしねむらせてください害悪と化してしマイマス。


 だんだん眠くなってきた。ありがとうございますカミヨ――――――

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