第23話仙女でつ?
――我が地に住まう子らをみだりに殺めなにをしている……――
――なに? 生と死の狭間に捕え縛られている子らがいるだと――
――我が領域ではないため、どうすることもできぬ――
――いたずらに子らを弄び、何をしているのだ我が妻よ――
――暫しの時、静観するしかないか……可哀想に……――
――運命を変えられ、過酷な日々を送る幼子よ、すまぬ……――
――せめて、我が加護を受け取るがよい……――
「――ひまりちゃんッ!! 急にどうしたの? ボウッとして……体調悪いの?」
ひまりちゃんの様子が急におかしくなって声を掛けたんだけど反応が薄い、どこかを見ているようだが変身していない今、黒い瞳が急に黄色に光輝いている。
小さな体が段々と橙色の光を放ち始めると周囲が仄かに暖かくなってきている。
神々しい落ち着くような空気を醸し出し体が浮いている、しかし急に片目の色が真紅に染まると緑色の光と橙色の光が相互に反発し合い、ひまりちゃんの顔が苦しそうになってきている。
なにが起こっているか分からないが尋常ではない雰囲気だ、こういう時はハカセに連絡しなきゃ――
――大丈夫でつよ
頭の中にひまりちゃんの声が……聞こえる?
喧嘩をしていたように見えた緑と橙の光は混ざり合い黄金色に変化している。
瞳の中には宇宙を再現したような無数の星々と深い飲み込まれそうな藍色に変化している。
ずっと見つめていると深淵へと誘われそう……。
「…………ひま、りちゃん? ひまりちゃんだよね? 悪の魔法使いになってないよね? ――でも闇落ちパターンもありかも……ぐへへ……カワユス」
涎を垂らしながらも、ひまりちゃんのほっぺをプニプニと掴んで遊ぶ。
「マイコお姉しゃんは本当に魔法少女が好きでつね……お部屋にある、ひまりの等身大ポスターは恥ずかしいでしゅよ? 友達に配っちゃ嫌でつ……」
「あれれれ、ひまりちゃん少しだけ活舌良くなってない? まあちょっとだけだけど……――もしや魔法少女強化回?」
「とっても強い悪者が出てくるんでしゅね。ひまりがババーンとやっつけるでしゅよ? ――でも体はなんともないでしゅよ? なにか変わってるんでつか?」
「えっと、瞳の色が深い藍色になってて綺麗だよ? 夜空の星が一杯詰まってるみたい……え、ひまりちゃん変身してないよね」
「してないでつよ? キラキラしてるなら嬉しいでしゅね」
そういうなり、わたしの部屋にある姿見を見てキャッキャと飛び跳ね喜んでるひまりちゃん……ジュルリ、可愛いなあ、もう。
後ろから脇に手を差し込み、高い高いをしてあげると、なおさら興奮してはしゃぎだす。
「ほーら、たかいぞ~う。ばびゅ~んだぞ~」
「うにゃにゃにゃにゃッ! 悪者はパルルがやっちゅけるでつッ!!」
はふぅ、ウチの子にならないかなぁ~なんて、あれ、いつも頭にモヤがかかって考える事すらできないはずなのに……やっぱりさっきにせめぎ合いに何か関係しているのかも……。
ほわんほわんほわんほわわわーん
AU主要国は現在政治中枢が軒並み全滅したため、熾烈な権力闘争が開始されていた。その中で最も有力な候補である
「シャオリー、可愛い可愛い君の力でパパの悪い悪い邪魔者をやっつけてくれないかな? 良い子のシャオリーがそうしてくれるとパパとっても嬉しいな」
小学校高学年ぐらいの子供であるシャオリーは長く綺麗な黒髪を鈴の付いた簪で後頭部にまとめている。
今は離婚して離れ離れになったシャオリーの母親は有名なモデルで、血筋なのか幼いながらも妖艶な空気を纏う少女だ。
特徴的なのはスラッとしたスタイルに子供ながらに出るとこは出ており、目尻にある泣きボクロがチャームポイントだ。
パパである
古代の骨董品を収集するのが趣味な王氏が偶然手に入れた宝石のように淡く紫色に光る仙人の遺骨を手に入れ、何を仕入れたのか気になっていた娘にそれを渡した。
王氏には何も起きなかったが、娘であるシャオリーが握りしめると光り輝き、娘が不思議な力に目覚めた。
紫色の煌びやかな
発生した鱗粉は人を意のままに操ることができ誰にも気づかれずに自殺に見せかけで暗殺することができる。
他にも高速移動はできないが空に浮き移動したり、透明化や、盾のように硬化させ使用することができる。
生身の身体能力もわずかながら上がっておりまるで伝説に残る仙女のようだ。
娘であるシャオリーが言うには、衣装を纏う際に
かの悪女、仙女として有名な
パパっ子であるシャオリーは父のお願いに疑問にも思わず、姿を羽衣で隠すと高層ビルに住んでいる政治家の自宅に進入する。
部屋中に鱗粉を展開し吸わせた政治家に笑みを浮かべながら『死んでください』とお願いをする。
羽衣によって惑わされ、眼が朦朧とした政治家はフラフラと屋上へ向かい始める。
姿を消し、証拠が残らないために暗殺向きの能力である。
「やったわ! パパの邪魔者をやっつけてきたわッ! ――これで褒めてくれるわよね?」
「ああ、パパの大好きなシャオリーはとっても良い子だ。頭を撫でてあげよう」
母親がいないシャオリーは父親に依存している。
父である王氏にそう仕向けられていたからだ。
娘を我が物のように躾けるために『ママがシャオリーを捨てたんだ、もうパパしかいないんだよ?』と、日頃から洗脳するように囁いている。
もともとべったり甘えていたシャオリーはそうと信じ込むとさらに父愛がエスカレートする。現在の夢はパパと結婚する、だ。
シャオリーは車の中で父からもらった棒付きの飴玉を、妖艶に舌で舐め上げると憎々し気にあることを思い出し、語り始める。
「そういえば日本というチンケな島国に、魔法幼女とかいうガキがハバ聞かせているらしいわ――――――生意気よね。ウチの国をめちゃくちゃにしちゃってッ!」
シャオリーは憎々し気にそう語るが父親である王氏はそうでもなさそうにニヤニヤと笑う。
「だがそのおかげでパパにチャンス回って来たんだ。それだけは褒めてあげよう――いつかはシャオリーにやっつけてもらうけどな」
舐め回していた飴玉をガリガリとかみ砕くと、決意した顔でシャオリーは宣言する。
「まっかせてパパッ! この妖艶紫衣でやっつけてあげるッ!! ――これでも立派な仙女だからね」
暗殺現場を車で走り去り暫くすると有名政治家が高層ビルの屋上から投身自殺をしたと話題に上がり始める。
政治家ばかりが次々に自殺する不可解な事件はすでに大きく話題となっていた。
敵対勢力である王氏を怪しむ人間は多くいたが全く持って証拠がでてこない。
理解不能な暗殺方法に、かの古き王や政治に
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