休み時間(物語が停滞する説明文)

 ここでいま一度、当時の日本のロックシーンについて触れておこう。だって今や文化祭で軽音やダンスはステージの出し物の定番でしょう? 文化祭でロックを、なんて殊更に何をそんなに騒いでるの、って若い年代の人は思いますよね。


 1950年代中ごろのロカビリーブーム、1966年のビートルズ来日を契機としたグループサウンドブームを経て、1970年代になって日本のロックは誕生した。

 この物語は昭和53年、1982年の出来事を描いているが、この時代のロックシーンではキャロル(矢沢永吉)、シュガー・ベイブ(山下達郎)、シーナ&ザ・ロケッツ、Char、RCサクセション(忌野清志郎)、甲斐バンド、浜田省吾、サザンオールスターズ、横浜銀蝿(THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIALが正式名称。ちなみに「銀蝿一家」として、杉本哲太らの「紅麗威甦ぐりいす」というバンドもあった)といったバンドが活躍していて、いずれも当時としてはアウトローで異様な得体のしれない人たち(と思われてた)がロックを背負っていた。

 演歌やムード歌謡を聴いてきた大人たちには理解しがたい音楽(騒音とも言われた)であり若者たちだ。


 特に横浜銀蝿の登場はロックに対して致命的な負の心証を大人たちに与える。髪型から服装からすべてが不良ファッションそのものだったから。校内暴力が社会問題になっていた時代、ロックはイコール不良になった。

 このロックに厳しい目が注がれている風潮のなか、校内暴力を危惧する中学校の文化祭でロックを催すというのがどれほど困難なことか、わかっていただけます?


 さて、それではそろそろ話を元に戻しましょうか。


 生徒協議会連絡会議にはウチの3年D組と3年J組と8つの委員会から『ロックを演奏するバンドの文化祭出演可否について』の議案を提出した。

 だったはずの13クラスのうち、同議案を提出したのが2クラスに留まったのは、会長派からなんらかの圧力が代議員にかけられたためか、彼らの熱が冷めて冷静になったためかはわからない。

 いずれにせよ想定をかなり下回った数字になったことは、少なからずショックではあった。


 話を元に戻そうと言ったばかりだが、ここでウチのした生徒会の概要を説明しておこうと思う。ウチの生徒会の仕組みを知っておかないと、今後の展開がわからなくなりますから。ちょっと複雑なので出来るだけ簡潔に箇条書きしていきましょう。


・生徒会(会長、副会長、書記2名、会計2名)

・委員会(風紀委員会等8委員会。委員30名の中から委員会長を選出)

・学級委員会(30学級。各学級長2名で合計60名=代議員)


 以上がいわゆる行政の役割を果たすが、特に生徒会と各委員会長の合わせて10名をと呼んだ。これは国で言う内閣にあたるだろう(ただし委員会長は生徒会長の任命ではないので結束力は必ずしも強くない)。生徒会長はさしずめ内閣総理大臣といったところか。

 生徒会長は委員会長の任命権こそないが、執行委員(生徒会&各委員会長)総辞職や生徒協議会(代議員)の解散、を行う権限を持っていて、ここがひとつ他校の生徒会と大きく異なる点であろう。


 議会に当たるのは生徒総会と生徒協議会。(また、生徒協議会開催の前には執行委員による生徒協議会連絡会議が催され、生徒協議会に提示する議案の整理等の打ち合わせが行われる。)

 生徒総会は年に一回開催され生徒全員が参加する。ただ、議題は予算の承認と生徒会役員の承認が通常で、実質的な機関としては形骸化していた。

 生徒協議会は生徒会長、副会長、委員会長8名、学級長(代議員)60名、合計で最大70議決権者が参加する月一回開催の定例会議だ。いわば国で言えば国会に相当する。

 ここでややこしいのは、代議員が委員会長に選出された場合は兼任となるため、生徒協議会に出席する実数は70名より兼任者分だけ減るのだが、委員会長は代議員としての議決権も有することが認められていて(要するに議決権を二個持っている)議決権個数は70を定数とすることが定められている点だ。

 その理由は生徒会長ら生徒会の専制を防ぐためとされ、それがウチの生徒会組織の先進性(?)と特異性を表すになっていた。(ちなみに定められたのは大正時代らしい。)

 このに守られてきたおかしな会則を、ゆくゆく僕らは結果的に悪用(?)することになるわけだ。

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