第5話「玩具と欲望」
そう、そうよ私。落ち着いて話せばいいの。
定明くんにいうことを聞かせられるところまで来たんだから、後は私から定明くんにお願いごとを伝えて本当にバイブを使うような相手がいないかどうかを確認すればいいだけ。
そう、例えばラインのトーク画面に女の子がいないかどうかを見せてもらうとか、電話の履歴を見せてもらうとか。
それだけで定明くんにかけられた疑惑のほとんどは解消される。
よし、じゃあまずはラインのトーク画面を見せてもらおう。
「じゃあ……連絡先教えて?」
違ああああああぁぁぁぁぁぁぁう!!!!
何訊いてるの私!?
いや、確かに私は入学してから一年以上が経過するというのに未だに定明くんの連絡先を知らないし、前々から知りたいとは思っていたけども!? だけど今訊くべきはそれじゃないでしょ!!
「……はぇ?」
「あ、いや、その、ただ単に私が定明くんの連絡先を知りたいから訊いたのではなくて、あなたの連絡先を訊いておかないことにはあなたがまたいつ不純異性交遊を図ろうとするかも分からないでしょ?」
「お、おお……」
間違いなく違和感を持たれているけどなんとか押し切れたようで、とりあえず私たちは連絡先を交換した。
……マズイ。
定明くんのトプ画が自宅で飼っていると思われる犬の変顔写真で思わず顔が緩む。
こんなところでボロを出している場合ではない。
違和感を取り除くためにも早く軌道修正しなければ。
「ありがと」
「これで俺が不純異性交遊なんてしてないって信じてくれるか!?」
「聞いてほしいお願いが一つだなんていつ言ったの?」
「--え? まあ確かに一つだとは言ってなかったけど。逆にあと何個お願いを聞いたら信じてくれるんだ?」
「あ、あと二つよ」
「分かった。あと二つお願いを聞けば信じてもらえるなら安いもんだ」
我ながらかなり無茶苦茶なことを言っていると思う。
とはいえ、急にお願いごとは一つではないと言い出した私の発言をすぐに受け入れてくれるくらいには定明くんの方にも余裕はないようだ。
勢いであと二つとか言っちゃったけど、あと二つで私は定明くんがあのバイブを使う相手がいないことを確定させなければならない。
もう先程のように自分の欲望に正直になるわけにはいかない。
ラインのトーク画面と電話の履歴を見せてもらい、定明くんが本当にノリでバイブを購入しただけだったと証明するのだ。
「じゃあ次のお願いね。……一緒に写真撮ってくれない?」
違ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!
何同じ過ちを繰り返しているのよ私!?
いやまあ確かに以前から定明くんとのツーショット写真が欲しいとは思っていたけど!? 思ってはいたけど今お願いするやつじゃないでしょこれ!!
「……え? 写真?」
ほら、定明くんもわけの分からないお願いに困惑して……。
「そんなんでいいのか!? それじゃあ授業が終わって休み時間になったら撮ろう!!」
「え、ええ……ありがと」
定明くんも私にバイブが見つかってかなり動揺しているようだ。
それもそうよね。異性にバイブを持っているのが見つかったら誰だって焦るわよね。
とりあえず違和感を持たれなくて助かったわ……。
私ができるお願いはあと一つ。
最後のお願いまで私の欲望にまみれたお願いをするわけにはいかない。
「それで、最後のお願いは?」
「……少し考えさせてもらえるかしら」
「あ、ああ。分かった」
そうして私は最後のお願いを考え始めた。
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