第4話「玩具と脅し」
今なんて言った?
俺のこと、変態って言ったか?
いや、変態じゃなくて編隊って言ったのかもしれない。
きっとそうだ。だってかみこが俺を変態だと思う理由なんてこれっぽっちも見当たらないのだから!!
そう、見当たらないのだから!!!!!!!!!!
って現実逃避にも流石に限界があるだろバカっ!!
文脈的に編隊だと内容の意味が分からないし、かみこは確実に俺に対して変態だと言い放った。
となれば、俺がかみこから変態だと言われた理由については一瞬で想像がつく。
鞄の中のバイブだ。
クッソ、耳元で変態って罵られること自体はご褒美なのに……。
鞄の中にバイブ入れてるなんてかみこから見た俺は冗談でもなんでもなく本物の変態じゃねぇか……。
「は、え、あ、あの、へ、変態っていいました?」
「ええ。鞄の中にあんな物を入れてる人を変態だと言わずしてなんて言うの?」
授業をしている先生に俺達が会話をしていることを気付かれないように小声で話しているせか、かみこの声が妙に色っぽい。
−−ってそんなこと気にしてる場合じゃなくて‼︎
やっぱりバレてたかああぁぁ!!
そうですよねバレてますよねまあむしろバイブ以外のことで変態って言われてたら立ち直れないし!?
AV見るときにMM号とかSM物とかそんなんばっかり見てることがバレたのかと思って焦ったわ‼︎
バイブのことで良かったわマジでハハハハハハハハ!!
まあかみこの声が色っぽいとか馬鹿らしいこと考えられているだけ俺の心にはまだ余裕があるのかもしれない。
ってかなんでかみこが俺の鞄の中にバイブが入っていることを知っているんだ⁉︎
俺の鞄の防御は完璧だったはず……。
いや、まだバイブを見られたと決まったわけじゃない‼︎ 頑張れ、頑張ってこの状況をどうにかするんだ俺ぇ‼︎
「あ、あんな物って?」
「そ、それを私に言わせようとしてる時点で定明君が変態なのが確定したわ」
「べ、別に言わせようとしたわけじゃないぞ⁉︎」
「とにかく、この目でしっかり見たの。あなたのカバンに、大人の玩具が入っているのを」
名称こそ口にしてはいないものの、大人の玩具と言われたらもう俺の鞄の中にあるバイブを見られたのは間違い無いだろう。
「ど、どのタイミングで見えたんだ⁉︎」
「あなたの机の上に無防備に置かれた財布を鞄の中にしまうときに見えてしまったのよ」
「あ、すまん。それはありがとう」
いや、ありがとうだけどありがとうじゃないだろこれ‼︎
一瞬でも盗み見たのかって疑ったのは申し訳なかったけどさ!!
「あなたの性癖がどうであろうと私には関係にないわ。でも学校に持ってくるにはあまりにもふさわしくないんじゃない?」
「あ、いや、あの、これは……」
これはまずい。完全にかみこから軽蔑されてしまっている。
早くこれがノリで友達と買った物で、一度も使用したことがないと弁明しなければ。
いや、でも変に弁明するのも逆に怪しいか。
もうこうなったらいっそ罪を認めてかみこの声が耳元で聞けるこのチャンスを堪能してやるか⁉︎
すいません嘘です冗談ですごめんなさい。
「高校生があんなものを使うなんて不健全よ。使われる側の人がかわいそう……」
「そ、それはその通りなんですけど……。そ、その、喜ぶ人もいると思いますよ?」
ちょ、ちょっと何言ってんの俺ぇ⁉︎
これもはやちょっとだけセクハラなんじゃねぇか⁉︎
いやバイブ見られてる時点でセクハラなんですけどねはいぃぃぃぃい‼︎
「それはまあ……そうかもしれないけど」
ってそれはまあそうなんかい。
否定しなさいやそこは。
「だ、だからその、鞄の中にバイブが入ってても問題は--」
「問題しかないわよ。どうして鞄の中にあんなものが入っているの?」
はい逃げきれませんでした。
「あれはその、友達とのノリで18禁コーナーに入った時に購入してしまいまして……」
「俄には信じ難いわね。学級委員長として、あなたが不純異性交遊をしているというなら見過ごすわけにはいかないのだけれど」
「いや、そんなことは一切してない!!」
自分で言っておいてこんなことを言うのもなんだが、俺がかみこの立場であれば俺の言葉なんて一切信用しないだろう。
学級委員長という立場上俺の悪事を見過ごすわけにもいかないだろうし。
終わった……。一番知られたくない人物に鞄の中のバイブに気付かれるなんて……。
「そう言い切れる?」
「ああ」
「まあ言い切られたところで信用はできないけど。そうね……」
そりゃそうだよな。学校にバイブ持ってきてる奴の言うことなんて信じられるわけ--。
「……私のいうこと聞いてくれたら信じてあげないこともないけど」
「……え⁉︎ 本当か!? 信じてもらえるならどんなお願いだって聞く!! たとえ火の中水の中草の中--」
「がっつきすぎてポ◯モンのオープニングみたいになってるわよそのままだと私のスカートの中に突っ込まれそうだから落ち着いて」
かみこにそう言われた俺は頭を冷やす。
なぜかみこが急にそんなことを言い始めたのかは分からないが、かみこの言うことを聞くことで俺がバイブを持っていたのが友達とノリで購入したからだと信じてくれるのであれば、どんな言うことだって聞けるだろう。
とは言ったものの、そのお願いというのがバイブを持って職員室に自首しに行きなさい、とかだったら流石にお願いを聞いてやることはできないけど。
「本当に何でも聞く?」
「ああ。何でも聞く」
一体どんなお願いをされるんだ⁉︎
切腹とか言わないでくれよ⁉︎
「じゃあ……連絡先教えて?」
「……はぇ?」
予想外のお願いに、俺の口からはこれまでの人生で一度も口にしたことがないような言葉が飛び出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます