第3話 Happy Birthday! 私!
さてさて、遂に私がこの世界に転生して一年が経とうとしていた。
え? 時の流れが早すぎるって?
いんだよ、細かい事は。
そもそも、本当に聞きたい?
乳飲んで、寝ての繰り返しだよ?
パパやママやじーじが、私にデレデレな話しぐらいしか無いよ?
もう飽きたでしょ?
今は誕生日会の真っ最中、村の広間で宴会のような形をとっている。
村はそれ程大きく無く、10軒程の丸太小屋が建っている。
丸太小屋っていうより、丸太大屋なんだけどね。
いや~誕生日お祝いして貰えるって前世のお祖父ちゃんが生きてた時までだから、照れる照れる。
はっはっはっはー、苦しゅうない苦しゅうないぞ!
一歳だから、当然離乳食も始まっている。
なので、今の私の目の前にはお祝いのご馳走が並んでいるのだよ。
全部、ペースト状だけどね。
そりゃそうさ、まだ歯も少ししか生えて無いんだから。
ペースト状になっているのは、野菜や果物ばかり。
肉が食べたい! 肉ー!
野菜や果物も、見た目は前世から知ってるのばかりだけど大きさがそもそもおかしい。
私と同じ大きさなのよ。
私がどれぐらいの大きさかって?
誕生日会のお祝いに来てくれた商人さんで、ようやくわかったのよ。
もちろん敵対してる人間じゃなくて、同じ亜人の獣人さんだったんだけどね。
その商人さんと、私の大きさが一緒。
大人と同じ大きさの一歳児なのよ。
さすが、巨人!
前世では見下される人生だったけど、今世では既に普通の大人と……同じ身長を手に入れたのだよ!
大人の巨人は、10mぐらいかな?
じーじは……前世で見た、進撃しそうな巨人に出てくる門を蹴りで破壊しそうな巨人ぐらいの大きさかな?
例えが分かりにくい?
多分、50mぐらいかな。
あれ? あの漫画に出てくる一番でっかいのってもっと大きかったけ?
でも、実際にじーじの全体像を見たら死ぬ程大きいからね。
まぁ、いいや。
ごめんごめん、話が逸れた。
私と同じ大きさの野菜や果物の話ね。
あ、食べながらでも良い? お腹空いてきた。
バクッ! モグモグモグモグモグモグ
「クウネル、挨拶に来て下さってる方々に失礼にならないように程々にしなさいね」
バクッ! モグモグ
「うん……わかった。ママ」
ちぇっ、今は爆食いしてはいけないらしい。
まぁ、いっか。
ママが子守歌替わりに大雑把に教えてくれたんだけど、今私達が住んでいるのは巨人の王国の村の1つなんだってさ。
バクッ! モグモグ
巨人の王国には、何個か村や街が有るらしい。
で、この村は狩りを仕事としてる。
モグモグモグモグ
まだ地理が良くわかってないんだけど、魔物が大量に居る«魔の森»っていうめちゃくちゃ大きい森の側に村を作ったそうな。
なして? って思ってたら、魔物を狩って街や王都に肉や素材を送る為。
正にここは、狩人専門の村。
そう聞くと、確かにパパやママにもスキルに狩人があったね。
モグモグモグモグモグモグ
で、そこの森には魔力が豊富だから採れる野菜や果物も大きいんだってさー。
もっと大きくなったら、1人で大食いしに行きたいものだ。
ぷはー、食べるのは一旦止めとくか。
ママ怒らしたら怖いしね。
さて、そんな事を考えてる間にもどんどんお客さんが挨拶に来る。
近所に住んでる巨人さん達や、他の国からの使者も来てるから少し紹介しとこう。
まずは、ご近所のおじさんやおばちゃん達。
「「「クウネルちゃん、誕生日おめでとー!」」」
皆とっても優しい。
この村で唯一の子供が私だけってのも有ると思う。
もちろん、皆筋肉ムキムキの狩人達だ。
少し鑑定したけど、じーじやパパママより強い巨人さんは居なかった。
でも、狩人っていうよりは戦士の方が近いかも。
次に、他の国からのお客さんを紹介。
獣王国からの使者。
「おめでとう嬢ちゃん」
獣人は前世でも有名だよね、基本的には脳筋で物事を力で解決したがるらしい。獣の耳や尻尾等の特徴を持つ亜人である。
地底王国からの使者。
「あん? 儂の酒が飲めんのかっ?!」
ドワーフもマイナーな亜人だね、鍛冶と建築が得意な背の低いおっちゃん。お酒が大好きなのも確実だね。
だって、一歳の私の祝いに酒樽持って来てるんだもん。
めちゃくちゃ頑固そう。
世界樹の都からの使者。
「ふふ、おめでとうございます」
エルフもドマイナー、説明必要? っていうイメージそのまま。巨人も長寿だけどエルフはもっと長生きするんだってさ。もちろん、耳長さんだよ!
武器も弓と短剣だから、本当にイメージそのまま!
サラサラな金髪が眩しいよ! 後、超美人さん。
鬼人の集落からの使者。
「肉、狩ってきた、めでたい、食え」
鬼人はTHE鬼! って感じだね。二本の角が額から伸びてて、筋肉もモリモリだよ。何? 亜人って脳筋が多いの?
着てる服も、魔物か動物かの毛皮だし。
蛮族かな?
ちなみに祝いの品は、デッカイ猪みたいな魔物だった。私まだ食べれないよ~! ちくせう。
来てくれた鬼人さんが狩ってきてくれたらしい。
竜神帝国からの使者。
「めでたき事よ、祖父の様に強くなれ」
竜人は人っていうよりは、爬虫類寄りだね。リザードマンって感じ。伝わるかな~。
何でも、竜と人との間に生まれたのが竜人の始まりなんだってさ。表情が分かりにくいのが難点。
特に、戦闘力にも優れていて亜人の中でも上位の種族になるそうです。
知らんがな。
魔王国連合からの使者。
「はっ! こんな田舎までわざわざ来てやったぞ、この私自ら祝ってやろう」
魔族は山羊みたいな角が頭の両サイドから生えてるのを除けば、普通の人と変わらない見た目をしてる。
でも、何よりも違うのは……めちゃくちゃ偉そう!
さっきも、すんげー上から目線で祝われたさ!
私には、好きになれない種族さね。
貴族みたいな良い服来てたから、文明はそれなりに進歩してるのかな?
亜人だけど、誇り高いのが多いから魔族って名乗ってるんだってさ。プライド高そー!
癒しの森からの使者。
「おめでとー! クウネルちゃんおめでとー!」
妖精は可愛いフェアリーだね。小人に羽が生えててパタパタ翔んでるの。
最初会ったときに見とれてたら、パパに食べないように言われてぶちギレたさ!
私を何だと思ってるの!パパの事は無視です、無視。
エルフさんと仲良しなのか、挨拶の後はずっと一緒にいてご飯食べてる。
パタパタと、とっても可愛い。
乙女心くすぐるわ~。
と、こんな感じで今この村は亜人のオンパレードだ。
もちろん、巨人の王国からも使者が来てた。めちゃくちゃ厳つい巨人のおじさんだった、今の戦士団長を務めてるらしい。
じーじやパパと話が盛り上がってたから、知り合いっぽいね。
種族の名前や由来、特徴はじーじとママがその都度教えてくれる。
パパも何か言ってるけど無視です、無視。
あ、ちなみに私はもう言葉はペラペラです。
少し喋ってたと思うけど。
やっぱりこの世界の言語は日本語と英語が当たり前に使われてる。
疑問は沢山あるけど、今考えても仕方あるまい。
何ヵ月目かに普通に喋ったら、パパもママも大喜びだった。
じーじは何故か思案顔だったけど、直ぐに喜んでくれた。
今、私はこの村では神童と呼ばれている。
ふふふ、苦しゅうない苦しゅうないぞ!
え? それはもう良いって?
ん?
普通の人間が挨拶に来たぞ?
「この度は、お誕生日おめでとうございます。ジンネル王国を代表し、心からお祝い申し上げます」
えらく畏まった人間のおじさんが挨拶に来てくれた。
でも、確か巨人と人間は敵対してるんだよね?
「儂の初孫の為に、わざわざお越し頂き感謝する。ジンネル王にも、礼を伝えてくれい」
「はっ! 必ずお伝え致します! 我等の国を救って下さったお方のお孫様のお祝い、何があっても祝いに駆け付けると王が騒ぎまして。何とか静めた次第でございますゆえ、これで私も肩の荷が降りました」
「ぐぁっはぁっはぁ! あれは偶然じゃと何度も言ったんじゃがな。まぁ良いわい、ゆるりとして行かれよ将軍殿」
ふえー、じーじの知り合いか。
敵対してるって言っても、全ての人間とじゃ無いんだね。
少し安心したかも、ナイスじーじ!
あ、でも将軍さん何か針のむしろみたいな扱いを受けてる。
他の国からの使者さん達とは仲良くないみたい。
しかし挨拶兼お祝いに来てくれた人達は何故、皆私の方を一瞬怪訝な顔で見てくるの?
さっき来てくれた、人間の将軍さん以外の皆だ。
魔族の使者さんに限っては、何か憎しみすら感じた。
私そんなにブサイク?
え、待って、こわいこわい。
まだ自分の姿見てないのよ。
この村には、鏡も無いからね。
ママは身嗜みを整える時には、パパのでっかい戦斧の刃を鏡みたいにしてたぐらいだから其処まで文明は進歩してないらしい。
巨人が脳筋なせいかも。
「クウネルや……気にする事はない」
私がうんうん唸っていると、じーじが話しかけてきた。
「え? ……じーじ、何を?」
「む? 髪の色を気にしておったのではないのか?」
え? 髪の色??
そういえば、茶髪のパパと赤毛のママとの子だと髪は何色になるんだろ?
じーじがそんな事を言ってくるから、もしかして二色の奇抜な髪の色してるの?!
「じーじ……私の……色はもしかして……変……なの?」
「ぐあっはぁはぁ、クウネルは口数は少ないが本当に賢い子じゃ。どれ、自分で見てみるがよいわ」
そう言ってじーじは、腰に付けてた短剣を私の目の前に刺した。
私にとっては短剣じゃなくて、大剣ぐらいの大きさだ。
恐る恐る短剣に写った自分を見る。
「うわぁ……お」
其処には、前世の私の面影を残した黒髪の美少女が居た。
良い? 美少女だからね?!
はぁ、しかしまさか顔も髪も前世のままとは。
あの自称創造神の爺め、キャラデザ考えるの面倒臭くて適当にしやがったな。
でも、いっか。
私はコンプレックスだった身長を除けば、美人に入る見た目をしてた筈だ。
結果オーライ、結果オーライ。
「む? どうじゃクウネル」
はっ、いかんいかん。
じーじが反応に困ってる。
「ん……私美少女だった」
私がそういうと、じーじは爆笑し始めた。
おい、じーじ。
どういう意味だ!!
「ぐぁっはぁっはっ! はっ!? すまんすまん、クウネル。そんなつもりでは無かったんじゃ。機嫌を直しておくれ」
私のパンパンに膨らんだ頬にようやく気付いたか。
全く、これだからデリカシーの無い男は。
え? パパ?
泣きながら現戦士団長さんとお酒飲んでるよ。
何でも、愛娘に無視されてるんだってさ。
ふーん。
「うむ、まだ話さずとも良いか。クウネルはそのまま大きくなるじゃぞ? ぐあっはぁっはっ!」
良くわからないまま、私の誕生日会は終了した。
でも、すっごく嬉しかったなぁ。
あ、猪の魔物はママが丸焼きにしてたよ。
こっそりかぶりついたら、ママにバレてめちゃくちゃ怒られた。
パパが庇ってくれたから、今回はこれぐらいで許してやろう。
じゃあ、お休みなさい。
◆◇◆
―――クウネルは気づかなかった。
挨拶の時にも、宴の時にも、終始悪意の視線を向けてくる者に。
巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~ 秋刀魚妹子 @sanmaimoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます