第21話


赤髪のさらさらハーフアップショートの化け狸、真白。

身長は凪達より、小さい。


その化け狸は、愛想笑いが得意そうな顔をしていた。


「あ、そんな事より……ヨイショ…っと…」


“ガラガラガラッッッ”


真白が思い出したように背中に背負っていた荷物をテーブルの上に広げた。


「皆さんにお届け物です。えっと…神様が…」



***************************


「ちょっ、そこの狸。あいつ等に届けてほしい物があるんだけど」


と、神が狸にメモ書きを渡した。


「はい、承知しました。ところで何を届ければよろしいのでしょうか?それにこのメモ書きは…」


「まず最初に…」


神が説明する。

そして、


うんうん。

と、真剣に頷く狸。


「で、そのメモ書きは、今あいつ等がいる場所。そこに届けてくれればいいから」


      ー持っといて損は無いと思うからー


「そう伝えといてくれる?」


神の命令に、

「承知致しました」

と、答える狸。


「では、早速…」

「あ、後…」


狸が喋り終わる前に、神も口を開いた。


**


「はい!承知致しました!では、行って参ります!」


何を言われたのかは分からないが、狸は張り切って神の部屋をあとにした。


***************************



「てな事で、不躾ながら皆さんのお家から勝手に持ち出し、ここまで運んでまいりました。神様の命令だったのでどうかご堪忍を…」


そう言う真白だったが、


「いや…神様の命令とはいえ、勝手に家に上るなど言語道断…」


暁は腕組みをして言う。どうやら…許せなかったみたいだ。


「神様だったら何してもいいのか…。いや違う!!」


「真白…」

「でも、鍵は開いてましたよ」


「え!?マジッ!?」


「マジです」


「いや、だとしてもだ!人としてやる事ではな…」


「自分、狸なんで。」

「いや…狸だって…」


「た・ぬ・き、です」

「いやだから…」


「いい加減にして下さい。鍵を閉め忘れた暁様が全面的に悪いです」


些々波が口を開いた。


に!?それはちょっとおかしいじゃろ!絶対!この化け狸の方が悪いじゃろ!」


暁が真白に指を指して叫ぶ。


「いえ、に暁様が悪いです。何故、貴方様はそうんだか……」


ー“グサッァ”ー


と、暁の心に刺さる一言を些々波は発した。


「さ…些々波…、わ…儂は面倒くさい…のか?」


声を震わす暁。


「はい、かなり思ってました」


わざと、を強調して話す。


「い……か…?」


「だからそうだと言って…」


「ガーーン……」


酷くうなだれる暁は、


「儂は日頃から部下に面倒くさいと思われてたんじゃな…」


「はぁ…何を今更言ってんですか…いい大人がしょげないでで下さい」


「いい大人だってショゲたっていいじゃんか…」


その姿を見据えた些々波は、


「……じゃあ、分かりました。今から、貴方様と私の『上司』と『部下』の関係は終わり、これからは…ただの『名前も知らない鬼同士』、ということで」


さらに冷たい言葉を連呼した。


そして…


「それはヤダッ!!!儂が悪かったから……そんな冷たい事言わないでよぉ…」


暁は、些々波の右腕に勢いよくしがみついて泣きじゃくんでいる。


「そ…それに…今日はいつも以上に冷たいじゃんかぁ…」

「いえ、いつもどおりです」

「そ…」

「ほら、はよ」


些々波が顎で指図して、


「狸さん…ごめんなさい…」


やっと、収まった。 


** 



     ー『持っといて損は無いと思うから』ー



「神様のお言葉は間違いでは無かったですね」


些々波がテーブルに広げた『それ』を手に取りながら言った。


さて、真白がテーブルの上に広げたのは、各々の刀や銃。

そして、思い当たる、先程の天使の行動…


牲架と凪以外は、気付いた事だろう。



      











































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