第20話
「ちょっ、ちょっと兄さん…?そんなあっさりオーケー出さないで?得体の知れない奴等なんだよ?」
「え…、だってこの人達住む所無いみたいだし、僕等を護ってくれるみたいなんだよ?…だからすぐ駆け付けてこれるように一緒にいた方が安心だよね?凪」
牲架は、同意を求める顔をして凪を見て言った。
「そ、それはそ…」
「そうだ!そうだぁ!!」
凪の言葉を掻き消した、鬼の暁。
「儂等はお主等を護ってやるんじゃから住む所くらい提供しろ!」
そう暁が強気で言う。
「チッ…!」
言い方に苛ついたのか凪は、聞こえるか聞こえない程度の舌打ちをした。そして、
「じゃ、トイレに住んで下さい」
「えっ?」
「僕は提供しました、文句はないですよね?」
たんたんと会話を済ませた。
「と、トイレに住んだら他の者が困るじゃろ?だ、だから…」
急にシュンとなる暁…。
ー「2個あるんで、大丈夫です。お気になさらず」ー
「へ…へぇ~…」
と、会話が終了した。
だがしかし…!暁は立ち上がり、
「あ、後じゃな!儂等は“得体の知れない奴等”ではないぞ!」
まだ食らいつく。
「儂等はれっきとした『鬼』じゃ!この角が見えぬのか?朝も説明したじゃろ?」
自らの角を凪に見えるように、頭を下げて必死にアピールし始めた。
そして、“朝”は何処に居たかというと、閻魔町の暁の部屋に居たのでその時の話になる。
凪は、『はいはい…』とくだらなそうな顔で暁を見る。
「己…“恩を仇で返す”というのはこの事じゃな…!」
頭を下げたまま話す暁に、凪は、
「何処が『恩』で何が『仇』なんですか?」
挑発するような事を言う。
その挑発にのる暁は、頭を上げ、
「大体お主ッ!儂等に“協力する”と申したではないかッ!!」
半ば、叫ぶように話す。
「“協力する”とは確かに言ったけど、まさか“命”がかかっているなんて分からなかった。そんなの詐欺ですよ」
凪の声は今だに落ち着いている。
「まぁ確かにそうですね…」
些々波が腕組みをして口を開いた。
「こちらに非があったのは確か…。ですが、貴方は全て承知の上で私達に協力すると仰ったんじゃないんですか?もし“それは違う”と今、仰るのでしたら自分の言葉に責任を持って下さい」
パチパチパチパチパチ…
すぐ近くから拍手と、
「おー…。些々波〜言うね〜さすがだよ〜」
歓声が。全て暁だ。
「はぁ…暁様…、貴方様は感情に身を任せすぎ…」
コンコンコンッ
と、突然、些々波が話してる途中で窓の方から音が聞こえた。
そして、
*
すぐにギルバートは目をそらすように振り返り、何かいたのか黙って横に移動した。
すると、窓の外にいたのは見知らぬ狸。そして何故か、その狸は、“見つけた!”と言わんばかりに窓に顔を押し付け、凪達の方を凝視している。
ーそして何故に…、ー
何故に、皆、窓から入って来ようとするのだろうか…と、
凪は切実に思うのであった。
**
そう思っている凪を目の前にして、ギルバートは早速窓を開けた。
「あっ、どうもありがとうございます。ではお邪魔します」
窓を開けてくれた事に丁寧に礼を言う、おまけに家主の許可無く侵入する、“喋る狸”。
「わぁ…狸が喋ったぁ」
落ち着いた反応を見せる牲架。
「あっ、皆さんこん…」
さらにその狸は挨拶でお辞儀をしている最中に、
「にちは。自分は化け狸の、
“人の姿”に変わったのだ。
「た、狸って人になるんだね…凄いなぁ…」
牲架のこの言葉に化け狸の真白は、
「いや、そんな事無いですよ?狸だったら皆出来る事で、普通です!」
双子の方を見て自慢気に話す真白。
「へぇ~、なるほど。…狸は“人”に化けるのか…うん、分かった」
そのうち牲架だけ納得したみたいだ。
そんな兄の反応に弟は、
「兄さん、そこは分からなくて大丈夫だよ…きっとこの化け狸もこの世界の狸じゃない」
そう言うのだ。
「はい、そうですよ。自分は神様の召使いで
「うん、どこなの?」
牲架がまじまじと真白に聞く。
「『
そう真白が答えた。
ー???ー
「狸…町…?ってどこにあるの?」
牲架の頭上には『?』マークでいっぱいになっていた。
「何処…って、…えーと…」
「うん」
「それは…」
「うん」
「それは」
「うん」
ー「それは内緒です」ー
散々、焦らしておいて『内緒です』と笑顔で煽ってくる狸。
だが、その“笑顔”は『愛想笑い』のように見えた。
だからその回答に、牲架は、
「…て、内緒なのかいっ」
と、優しくツッコミをいれるのだった。
「はい、決して人には知られてはいけないのです。これは狸町においての…、絶対の掟ですから」
また、愛想笑いをする真白だった…。
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