第16話
ここは、現世。
初めて見る景色に三人は驚いていた。
「すごいのぉ…」
「うん…凄い人だらけだね…」
「す…凄いね……」
隙間がないくらい人がいて、凄く高い建物あって、変な乗り物を人が乗って操っている。
さて、この“現世”に見惚れている三人がどこにいるかと言うと、この凄く高い建物付近にいた。
「ねぇ河南、“コンビニ”と言う所はどこにあるの?早く行ってみたい!」
ロンが目を輝かせて河南に言った。
何しに来たかと言えば、いつか些々波達が話していた『コンビニ』と言う所に行きたかったのだ。
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「現世には“コンビニ”と言う場所があり、そのコンビニには色んな物を置いていて、何より“できたての食べ物”が食べられる、凄く便利な場所なんです」
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だが、その“できたての食べ物”が食べられる『コンビニ』とやらが一体どんな建物なのか分からない。
人に聞きたいところだが、
「おい、お主!」
………。
「何か、無視されたね…」
どうやらこの世界の三人達の声は聞こえないらしい。
少し歩いてみるが、大人の方が歩くのが早い為、三人の体を人がどんどん通り抜けていく。
体は透けていて、挙げ句に、何も触れない。
「やはりちゃんと許可を取ってないから透けるのかの?」
「やっぱ無断は駄目だったのかもしれないね…」
河南とロンがそう話す。
「まぁしょうがない…また今度、来よう」
「そうだね」
「じゃ帰るか」
三人は
「何とも残念じゃったのぉ…」
「もう…ちゃんと“許可”を取らないから…」
前を歩いている河南とノアが歩きながらそう話す。
「ロンはあんなに楽しみだったのに。残念じゃぁ…、なぁロン」
「…………」
河南はロンに話かけたが反応がない。
だから二人は後ろを振り返ろうとした。
その時、
「ごめんよ」
と、言いながら二人の間を通り抜ける人がいた。
とっさに、
「あっいえ…こちらこそ…」
と、ノアが答えた。
「って…あれ?今、人と話して…ねぇ河南…」
「おい!!ロンッ!!!」
急に叫ぶ河南。そして、河南は扉の方向とは逆に走った。
「河南、どうした…の…」
ノアも河南が走った方向を見た。
そして、その光景が視界に入った途端、ゆっくり歩き出した。
「ロ…ロンちゃん…?そ…そ…それ…どうしたの…?」
声を震わせながら話すノアが見たその光景は、
ー血を流している、ロンだった…ー
ロンは、力無く両膝を付いた。
そして、腹部を左手で押さえながら、
「か…かな…ん……、の……ぁ………た…すけ……て……」
力無く、途切れ途切れに、助けを求めた。
本当にさっきまで元気だった筈の親友に、今この一瞬で何が起きた…。
だがしかし、駆け寄った二人にはすぐ分かった…。
ーロンは何者かに腹部を刺されたんだとー
動揺を隠せない二人だったが急がなければ、命が危ない。
「おい!ロンッ!!大丈夫だ!今助けを呼ぶからの!!それまでの辛抱じゃ!!」
“誰かッ!誰か助けてくれェェェッッッ”
「親友が刺されたのじゃ!誰か助けてくれッッッ」
「誰か助けて下さいッ!お願いしますッッッ!!」
そう二人が叫ぶが、この世界の人間は、
二人の声は届かず、
三人の『存在』すら気付かれない。文字通りに、
三人をすり抜け、過ぎて行く。
何も出来ずに、ただ、親友が動かなくなるのを待つ事しか出来ない二人は、ロンの手をそれぞれ握った。
握った手はもう冷たくて、ロンはもう、ほぼ動きがない。
「お、おい…ロン…!死ぬな!起きるのじゃ!!」
「ロンちゃん…!お願い…!起きて…ッ!!」
二人はロンに話しかける。…が、反応は無い。
「クソッ…!」
ーあ〜あ…。その子、死んじゃったの?かわいそーに。ー
急に、一人の男が二人に話しかけて来た。
三人の前に立つ、フードを深く被った男。
どうやらこの男は、三人の姿が見えてるようだ。しかし、
「クッ……」
河南は、この人間の言い方に腹が立ったのだ。おそらくノアも同じ気持ちだ。
すぐに文句を言いたかった。
でも、もし、これを逃せば…と、思ったらそうはいかなかった。河南は意を決して、その男を見上げながら、
「お…、おい、人間!親友をどうか助けてくれぬ…」
ー「やだネ。自分達でどーにかしなよ」ー
フードの男は三人を見下し、そう言った。
そして、最後は、
「じゃあ、ボクは忙しいから」
ー「バイバイ」ー
男は、立ち去った。
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