第13話

         ー「アルメリア」ー


「は?」


些々波が聞いた時がない単語を言ってきたので、僕は反応した。


「”アルメリア“…。小さな花が丸く集まって咲いている、赤・ピンク・白と可愛い花。それを閻魔城にある閻魔様の部屋に飾ってあるのだ。」


「へぇ~、それで?」


いきなり花の話をする些々波に少し呆れた感じで僕は反応した。


「その花は閻魔様にピッタリだと思い私がプレゼントしたのだ。」


「で?」


「花言葉は『同情』。」


「で?」


「足が臭い閻魔様に同情しているのだ」


「お前やっぱ酷いな」


「お前って言うな」


***************************



僕達が変な会話をしているうちに、周りの人達がやっと、起きた。


そして、


この数分の間に起きた出来事を、暁が説明してくれた。自分が馬鹿にされた事も。



***************************


「そんな事が……。“天使”がこの人間の命を狙っているのならば…もう…」


ここで、初めて見た、いや…、

ここに戻る前にも居た、白髪の赤メッシュの糸目、多分…悪魔よりの人が口を開いた。そいつはドア近くの壁に寄りかかっていた。


さっきから、“天使”とは何なんだ。


「あぁ…、おそらくこの二人の中に“閻魔”と“サタン”の“魂”が入っている事に気づいている」


窓近くに寄りかかって腕組みをしながらギルバートがそう話す。


あの“天使”に気づかれたら何かまずいことでもあるのだろうか…。


そこで、


「あ、あの〜…、僕これから仕事に行かないと行けないのでその…、皆さん帰ってもらってもいいですか…?」


僕と隣どうしでベッドに座っている兄さんが、眼鏡をクイッと上げながら申し訳なさそうに言った。


こんな時にまで仕事に行こうとする兄さん…。


(素敵だ…)


僕は兄さんの左腕を組んだ。


すると、


「イテテッ…」


兄さんが痛がった。


「ごめん、兄さん。痛かった?」


僕はそんなに強くしたつもりはないが兄さんは、


「うん…ちょっとね…。…でも…凪に見て欲しいんだけど…」


そう言って、着ていたシャツのボタンを上から外し始める兄さん。


しかし、兄さんが見せようとしている場所には、何があるかは僕は知っている。


「これなんだけど…」


何個かボタンを外すと、“その部分”を見せてきた。


だが僕は、見なくたってわかる。何故なら、それは僕が刺した刺傷…



   ー「こんな“火傷痕”…いつ出来たんだろ…」ー



火傷痕…!?


見ると、僕が刺した刺傷の上から赤黒い火傷痕…。

生きているのが不思議だと思っていたがこういう事だったのか。


「全然、記憶が無いんだよね…。ねぇ凪は知ってる?」


本人は記憶が無いらしい。

だったら僕が教えよう。


「兄さんそれは…」


        ーヴッヴッンンンッッッー


その時、わざとらしい咳払いが僕の言葉を掻き消した。


そいつはここに戻る前、兄さんに向かって「サタン様ァァァ」って一生懸命に叫んでた奴。今も座っている兄さんの脇で立っている。何だか兄さんを見張ってる感じに。


「あの、“サタン様”…。“女性”がそう簡単に男の前で服を脱がないでくだ…」


「え?僕、男だけど」


「そうだ!兄さんは男だ!」


僕達は男を見上げ、“男宣言”をした。


「いえ、“サタン様”は“女性”です!」

「だから僕は“男”だよ…!」


どっちも少し強気で話す。


「いえだから、“サタン様”は女…」


「もう黙れ、お前等。ややこしい…!」


ギルバートが割って入り、


「いいか人間。お前の中には今、“サタンの魂”が入っている。そしてサタンは“女”だ。だからこの“変態野郎”は“女、女、女”って五月蝿い。分かったか?」


「うん、とりあえず」


兄さんは素直に返事をする。

そして変態野郎は反論する。


「ギルバート。私は決して、“変態野郎”じゃありません。サタン様の側近、ミ…」


「でもどうして僕の中にその“サタン様”の魂?が入ってるの…ですか?それに皆んな、変な格好してるし…」


兄さんは質問した。


そういえばそうだ。

僕達は何故“そうなった”のかを知りたい。


「あぁ、面倒くせぇからもう説明はパスだ」


ギルバートはパスした。


「じゃあここからは私が」


名乗り出たのはベッドのフッドボード側に立っていた些々波だった。
















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