第10話
ー騙したの?俺の事ー
「いや…神様……。決して、騙してなどいません」
側近のミヅキがそう言うが、本当にミヅキは何も知らなかったのだ。
“ギルバート達が嘘をついている事を”。
神は、いつもいい加減だが、怒るとメチャクチャ威圧感を出してくる。まさに、今がそんな感じだ。
「俺ってさぁ、君達の心は読めないんだけど…、人間の心は読めるんだよね…、知ってた?」
神が衝撃の言葉を口にした。
その事実を知った一同は…、
“知らなかったァァァァァァ”
って、顔をした。
ーそうか…!あの放送は…ー
(やる気がなさそうな声だ。)
「えーっと…、はい、今、“テキトーだな”、“やる気がなさそう、”と思ったそこのキミ、神は、何でもお見通しでーす…。何でも分かっちゃうから。嘘はつけませんから、嘘つきは大嫌いでーす、ていうか死刑です。」
とか。
(共感する。)
「はい、見ず知らずの人に“共感”されても困ります」
とか。
(なんて理不尽な…)
「理不尽じゃありません」
とか…。
誰と会話しているか分からなかったが、
(あれは、閻魔様の中にいる凪の心の声を読み取っていた……。まさか、死人の心までは神にだって読めないだろう……。だとしたら、こんな演技は最初から無意味だった……。ならば…)
(よし…!)
何かを決断した。
「あの、神様。一ついいでしょうか?」
「何?言い訳だったら、聞かないよ?面倒だし」
些々波と神が立ち上がった。
(どうせ刑を受けるなら…)
些々波は一旦、目を閉じ、開けて、
ー「あの白髪の右目隠しが、儂らの獲物を先に盗ったんじゃァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」ー
と、些々波の前にいた暁が突然立ち上がり、ギルバートを指差し、叫んだ。
すると、神が、
「暁さぁ…」
と、呼んだ。そして、
ー「さっきからその顔で、俺の事バカにしてる?」ー
ー「えっ!?」ー
そう言われた暁は、自分の顔を触り始めた。
「…バカにはしてないんじゃ…」
何せ、触っただけでは分からないので、
そこへ、
ー「じゃあ、はいっ!」ー
と、何処からか手鏡を渡す者がいた。
「出かける前は、ちゃんと鏡を見たほうがいいと思いますよ?」
ニッコリと笑顔を返す、神の親友、
。
そして、暁は、手鏡を受け取り、
「なんだ?失礼な奴だ……」
見た。
「なァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?!?」
また、叫ぶ。
すぐに暁は、閻魔、
「お前等ァ……」
暁は手鏡を伏せ、
ー「儂の顔で遊び過ぎじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ー
て、正に“鬼の形相”で3人を追いかけ回る。
そして、その3人はただ何も喋らず、黙々と走り回るのだった。
暁の顔に何があったかと言うと、”ただの落書き”だ。
だが今の今迄、誰もツッコまず、笑わず、よく耐えていたものだ。
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ー「あっ…凪!」ー
そこで、追いかけっこの最中の閻魔の魂が入っている本物の『藤江凪』の存在に気が付いた本物の『藤江牲架』が、呼び止めて立ち上がり、凪の両手を握って、
ー「良かったぁ。凪も一緒に居てくれて」ー
安心した笑顔で言った。
この言葉を聞いた凪は、
ーあぁ… 僕は、兄さんを殺し損ねたのか…ー
ーあの時、やっぱり、ズタズタに刺せば良かったー
と、後悔した。
ー兄さんを誰の物にもしたくない。ー
その行動の表れが『兄さんを殺す』事だったのに……。
ーそれ以上、その笑顔を誰にも見せないでくれ。ー
今は、この言葉すら、兄さんに届かない。
そんな凪の思いとは逆にこの体は、
「おい!お主ッ!勝手に触るな!馴れ馴れしいぞッ!!」
それもそうだ…。
ー今は、僕じゃない。ー
ーこれが普通の反応だー
「ど、…どうしたの?……凪……。僕…、何か悪い事…、した…かな……」
兄さんがそんな事を聞いて来たが、強いて言えば、
(
「知らない奴にいきなり触られたら、そりゃあ、そうなるじゃろっ!!」
「“知らない奴”だなんて……僕達、生まれた時から一緒だった筈…。何をするのも……。なのに…」
(そうだ!僕達はずっと一緒だった!なのに余計な事を…!それに…、)
ー兄さんの、その、困った顔ー
ー最ッ…、高ッ…、………だァァァ……!!!ー
そんないい時に、
「もう面倒くさいから、君達全員、」
神の
「………、え〜っと、どこにし、よ、お、かぁ…」
神が悩んだ後の一声は、
「じゃあ、」
ー僕達はこれから、ー
「『人間の町』以外、追放で。それじゃあ…」
ー神の気まぐれで、ー
「さっさと消えてよ」
ー追放される。ー
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