第6話
「魔法師様は調べているので、既に知っていると思いますが、この街には派閥がいくつか存在している。それぞれが手を取り合い街の繁栄を願っていたので、派閥の立ち上げを許したが、実際はその逆。繁栄どころか、足を引っ張り合いを行っていた。現状を知った私は何とかしようと動いたが既に遅く、私の家族以外は全てどこかの派閥に所属していた。そこで私は考えたのだ、長としての権力だけではなく、派閥自体も瓦解させ、街全ての権力と財力を得ようとね」
街長はそう言って、妻を引き寄せた。
「もちろん妻にも相談した。最初は否定的だったが、街の現状を実際に目で見て知ったことで、計画に賛同し協力してくれたのだ。息子たちには話すわけには行かなかったので、街を襲った際に保護するように頼んでいた」
トウヤは驚く。
まさか自分たちが戯神信仰守護騎士団に攫われたことが、実の父親の考えだったとは思っていもいなかったからだ。
「誤算だったのは魔法師様、あなたです。復興を目的に派閥の代表たちを亡き者にするつもりだったのに、まさか運悪くあなたがこの街に来てしまった。やつらを簡単に追い払った実力を持っているため、大きく計画を変更せざる負いませんでした。まあそれも最終段階まで来ましたが」
戯神信仰守護騎士団達はニタニタと笑いながら、徐々に近づいてきていた。
そう簡単には逃がしてもくれないし、殺してもくれないようだった。
「派閥のトップを殺すなら、こんな堂々としたやり方でなく、暗殺や事故死などの手も取れたはずだが?」
「ええ、確かのそのようなやり方もありました。しかし、私は途中で目的が変わったのですよ。たったこの小さな街ごときだけではなく、この国の権力を得ようと思ったのです。そうすれば、絶対的な力を手にし、幸せに自由に暮らしていける。そのためにこの街は、騎士団達の大きな隠れ家として利用することにしたんですよ。さっきの映像の会話のようにね」
「その判断は正しいと?」
「正しいかどうかは私が決めるのではないですよ。それを決めるのは神であり、善行かどうかも定めるのは神です」
街長はそう言って、右手首にしていた包帯を取る。
そこには邪戯創神教の入信者の証である、エンブレムが刻印されていた。
「なるほど、貴方は既に……」
「ええ、そうですよ。私は自身の信じる神が見つかったのです」
長は、再度指を鳴らす。
敵の騎士団達が剣や杖などの武器を引き抜き、臨戦態勢へと入る。
冒険者たちは街の住人たちの安全を確保するのが最優先だと決めたのか、彼らを守るように陣形を取った。
「再度聞く、その判断で良いですね?」
「何度聞かれても答えは同じです――――やってしまえ!」
騎士達が一切に襲い掛かる。
剣と剣がぶつかり合う金属音が響き、住人たちも冒険者には劣っているが抗う。
しかし、全員が手練れである騎士団と比べると、その戦力差は大きく、全滅するのも時間の問題だった。
「……そうか、ならもういいな」
「何を言ってるんだ?今更何かしようとしても遅いですよ、魔法師様」
アレンは嘲る街長を無視して魔法を展開する。
その速度は普通の魔導士を凌駕し、更には魔法陣の同時発動で難しいとされる球体魔法陣を展開していた。
「―――〈
「な、なに!?」
魔導騎士、それは数百年前に魔法界に激震を走らせた召喚魔法。
大量の魔力を消費する代わりに、どんな物理攻撃も魔法攻撃も通さない対物魔防具を纏い、魔力を込めて本気で振るえば山を真っ二つにできる力を有する魔法大剣を持つゴーレムを召喚する、最上級に位置する召喚魔法。
四体の魔導騎士を召喚し、魔力に声を乗せて命令を送る。
その命令は至極単純な一言、「敵を殲滅せよ」の一文だった。
「おい、あいつは一体何なんだ」
敵騎士の一人が、魔導騎士を見て驚きの声を喘げた。
「魔導騎士なんて、一介の魔法師が安易に召喚できるモノじゃない。しかも四体同時なんでもっとあり得ない!」
「俺も魔法師だが、あんなやつ見たこと無いぞ……」
敵騎士団の中にも魔法師がいるようで、詳しい奴が居るのか魔導騎士を見て顔色をかえていた。
なにしろそれは至極当然の反応であり、アレンが異常なのだ。
通常、魔導騎士を召喚するの必要な魔力量は上級魔法を十発ほど連続で撃てる魔力量だとされている。
上級魔法を使用するにも相当な技量と魔力量が必要なのだが、それを十発分使用するのと同等な魔力量を消費するので、召喚魔法の中では最上級に近い部類になる。
しかもそれは、一体召喚するのに必要な魔力量だ。
アレンの様に四体も召喚することは、もはや魔導師であっても難しい。
生まれつき膨大な魔力量を持ち、魔法や魔術の技術を常に研鑽した者ぐらいしか扱えない代物となっているのだ。
「ま、まさか……」
「おい、お前が前に教えてくれたあれなのか!?」
敵騎士団の魔法士達は躊躇し、魔法師は警戒する。
だが魔法師でない奴らは「デカブツぐらいなら動きも遅いから簡単に殺せる」と息巻いて、我先にと飛び出してくる。
「おい、お前ら待て!」
敵魔法師が呼びかけるが間に合わず、魔導騎士に剣を振りかざした。
瞬間、敵の剣士が縦に真っ二つに斬れた。
「は?」
斬られた剣士は自分が死んだことも気づかず、素っ頓狂な声を出して絶命した。
「ま、魔法師様。一体あなたは、な、なんなんですか!」
「自分が此処に来た時に自己紹介した筈ですけども、まあいいです。では改めて」
そう言ってアレンは軽く宙に浮く。
「私……いや、もう敬語もいいか。――――俺の名前はアレン。魔導都市アストレザに属する魔導師だ」
「な!?」
「……やっぱりそうだったか」
街長は驚き、敵の何人かが正体を予想していたのか驚いてはいなかった。
「さて、既にこうなった原因も分かったところで、おとなしく斬られてくれ。抵抗しなければ痛み無く死ねるぞ」
「ぜ、全員、奴を殺せぇぇ!!」
敵騎士団は次々とアレンに向かって武器を向け、突っ込んでくる。
魔導騎士に魔力を投入して、アレンは言った。
「―――殲滅せよ」
魔導騎士たちはその命令を聞いて一斉に動き出す。
その動きはとてもじゃないが鎧を着ているようには見えず、軽装で動き回るかのように素早く、液体でも斬っているかのように敵剣士たちを薙ぎ払っていく。
「な、なんなんだその動きは!」
「まるで盗賊のような動きじゃないか!ッグ!?」
予想していた動きと違うのか、敵は魔導騎士の動きに翻弄され、混乱を起こしている。
本当ならその図体通り重騎士並みのスピードで動くのだが、アレンの魔導騎士は少し特別製なのだ。
アレンの魔導騎士は、その中身は装甲を纏うためのコア以外は空っぽで、必要のない部分は最大限に削っているため、総重量は装甲とコア以外には無く、実は軽い。
なので俊敏な動きを行うことができ、装甲が刃を通さないためコアが壊される心配も無いのだ。
だが、こんな芸当が出来るのもアレンだけだったりする。
ゴーレムは本来、コアを中心に密に組織を組み上げて形作るもの。
その必要な組織を空気と置くことで、コアを認識させ、魔力でそれを制御することを平気で行うやつは、この世のどこを探しても後にも先にもアレンだけだろう。
敵の数は瞬く間に数を減らしていき、遂には街長と騎士団の指揮を執っていた紳士風のリーダーだけになった。
「さて、後はお前たちだけだぞ」
アレンがそう言って左手を横に払って魔導騎士を三体消し、一体だけにする。
「そんな余裕を見せていて、いいのですかな?」
敵のリーダーが喋った。
「ああ、もうこれ以上必要ないしな。お前らを殺すのに」
「なるほど……ですが、私は殺されませんよ。この街は私達の根城にしてみようと考えて来たのですが、ここまで返り討ちにあってしまうとは思ってませんでした。仮にここを乗り越えてここを根城にした所で、この国とあなたの国にはバレてしまっている。正直、ここで抗うのは無意味です」
「かもな」
「なので、私はここら辺で失礼させてもらおうと思います。私の名前はディール、またいずれ何処かで」
そう言うと敵リーダー、ディールの後ろに、空間の裂け目が出来る。
転移魔法の予兆、この場から立ち去るつもりなのだ。
「そうか、まあ、その魔法が使えたらの話だが」
「なにを言って……!?」
瞬間、空間の裂け目が弾け、何事も無かったかのように戻ってしまう。
「
「そうだな、普通の魔導士だとそれが安全で効率よく結界を張れる。だが、魔導都市アストレザは違う。これくらい一人でやれないと、とてもじゃないが魔導師なんて名乗ることはできないな」
「……これはまた、我々の知識を塗り替えなければならないようだ」
対魔法結界は、注いだ魔力量に比例してその大きさと持続時間が変わり、範囲内の魔法を全てを無効化する能力を有する。
だが使用者の魔法技能に左右する面もあり、結界を張った魔導士のレベルによっては無効化に失敗することもある。
だが強力なのには変わりなく、発動の難易度が高いこと以外では重要施設の防御構築に使われていたりするのだ。
「かもしれないな。まあ、塗り替えるチャンスがあればだけども」
「舐めるなよ、魔導師ごときの分際で」
魔導師ごとき、ね。
アレンはそう呟き、右手の指を鳴らした。
すると、空間に波紋が広がり、ディールの四肢を鎖で拘束する。
「これは……〈
「昔、少し学ぶ機会があってな。流石にこの技を会得するために人里離れた秘境の奥地まで行くのには手こずったな」
「……アレン、その名前をどこかで聞いたことがあると思っていましたよ。まさか、遠い昔に生まれ、神山を統べていたあの桜龍を単独撃破した者だったとは」
「それを知っているなんて、珍しい奴がいたもんだな。じゃあ、この技のことも知ってるんだよな」
「ええ……、どうやら私はここまでのようですね」
封陣鎖は、物体を確実に拘束力を有し、拘束された者は動くどころか、自身の生きていく気力さえも吸い取ってしまう代物。
これを魔法に転用した古流な侍がおり、アレンはその侍を師事して教えを説いてもらったのだ。その技を〈天樹流〉と言う。
だが教えてもらう代わりとして、桜龍の単独討伐を卒業試験として決められてしまい、仕方なく行った。
桜龍は温厚で、基本的に外界に姿を現すことなく山の頂上で静かに暮らしているのだが、魔族の襲撃を受けて気が荒立ってしまい、誰もが抑えきれなくなってしまっていたのだ。
そのため、たまたまアストレザから出向いていたアレンに白羽の矢が向いて、結果的には桜龍を討伐する形になってしまったのである。
「それじゃあな」
そう言って、アレンは右手を前に差し出し、握りしめた。
瞬間、鎖はそれぞれ引っ張り合いディールの体をいとも簡単に引き裂いた。
と同時に、異空間収納魔法を展開し、ディールと鎖を一緒に仕舞い込む。
なるべく残酷な場面は見せないようにという配慮だった。
「さて、後は街長。貴方だけだが」
「ひ、ひぃ!」
街長は自身があった騎士団が全滅し、挙句の果てには一番力を有していると思っていたディールまでやられてしまった。
完全に、意気消沈していたのである。
「す、すみません。どうしてもこの街の状況を変えたくて、つい出来心で彼らと手を組んでしまったんです!」
街長は地面に頭を付け、土下座をする。
だが街の住人はそんな街長の姿を冷たい目で見ていた。
「アレンさん」
「どうした、トウヤ」
街長の息子であるトウヤが、アレンの前に出る。
「弟子の件、まだ生きてる?」
「ああ、お前とその妹なら歓迎するぞ」
「なら、僕たちを引き取って養子にしてくれない?」
そう言って、トウヤはアレンの方に向き直り頭を下げる。
「僕は父さんと血がつながっている。だがそれはあくまでも家族のつながりを示すだけで、自分がどうなるのかは自分次第だと思ってる。だから、僕は父さんと縁を切る」
「な!?」
街長は顔を上げ、驚いた表情を見せる。
「トウヤ!待ってくれ、私は!」
「父さん、今まで育ててくれてありがとう。だけど父さんと母さんが僕たちを意図的に捨てたと分かった時に決めたんだ。僕は魔法の世界に足を入れるって」
「トウヤ……」
街長はトウヤの言葉に力が抜けてしまい、立ち上がることができなくなってしまう。
母親の方も、トウヤのその堂々とした姿に驚き固まっていた。
「レナはどうする?」
アレンが問う。
「レナは……、レナはお兄ちゃんに付いて行く」
「レナ……」
トウヤはレナのその言葉がうれしくて、レナを抱き寄せた。
「お兄ちゃん、苦しいよ……」
「あ、ごめん。嬉しくてつい……」
「どうやら結論は決まったようだな」
そう言ってアレンは街長に右手を向ける。
「これがお前ら夫婦の子供たちが選んだ道だ。親として子供を導くどころか、子供から離れられてしまうような、そんな存在になってしまったんだよ」
「ああ、ああああ……」
「トウヤ、レナ……」
街長は絶望し、また母親も顔を青ざめる。
「どうする、トウヤ」
「アレンさん、いや、師匠。簡単な攻撃魔法を教えてください」
「よし、ならこの魔法陣をあげよう」
アレンがトウヤに渡したのは、小さな魔法陣が書かれた紙きれだ。
これに魔力を込めると、アレンが最適化した魔法である〈火球〉が発動する。
「魔力の流し方は分かるな」
「はい、一度経験したので分かります」
実はアレンは、トウヤに対して一回だけ魔法の基礎訓練を行っていた。
魔力を感知するために、アレンから魔力譲渡を受けて、自分の中に眠る魔法の魔力回路を覚醒させたのだ。
一度覚醒すれば、自身の魔力を感知し魔法や魔術が扱えるようになる。
それを教えた所、ぜひやって欲しいと頼まれたのだった。
「父さん、母さん、僕たちをここまで育ててくれありがとう。だけど、自分たちの利益と幸せだけを願ってしまった姿を見て、正直絶望したよ。僕たちはここから新しい道へと進むから」
「トウヤ、レナ、待ってくれ!」
「そうよ、私達はあなたのためを思って!」
彼れらは必死に言い訳をする。
それだけ必死に生きたいと言う現れなのだろうが、時すでに遅い
生きるか死ぬかの運命は、自分の息子の手に握られていた。
「師匠、私の選択は間違っているでしょうか」
「さあな、だが少なくともお前達が悲しむようなことがないと約束しよう」
「……分かりました。僕は、自分の選んだ道をレナと共に生きていきます」
そう言って、トウヤは父親に魔法陣を向ける。
後は魔力を込めれば、火球が一直線に飛んでいき、父親を絶命するまで燃やすこととなる。
悪を断罪するのは間違いではなく、その手段は問わない。
だが、それでも自分の実の親を殺すのは心苦しいのか、トウヤは中々魔法を使用することができなかった。
「トウヤ、お前が躊躇するのは正しい。いくら悪人だからと、自分の親を殺すことが正当化されるわけじゃない。今ここにいる人たちは正しかったと言うだろうが、此処にいない第三者は間違いだったと言うだろう。自身の行いに対して正解は無い。だからこそ、その行動を正当化するために理由と根拠を求めるんだ」
「師匠……自分は魔法を使うことができません……」
「ああ、それでいい。その行動も正解なんだろう。だから、そこから先は俺がやろう」
そう言って、アレンは魔法を展開した。
その魔法陣は火球の比にならないほど大きく、そして細かく繊細な模様を示し、魔法や魔術で使用されているルーン文字が一切入っていない。
その魔法の名は〈
対象の生命力を糧に青白い炎を上げて燃え、確実に全てを焼き尽くす技で、魔法での分類は究極クラスに匹敵する。
因みに魔法の分類は、初級、中級、上級、最上級、究極、神級、幻級、創世級と別れ、例外の分類として固有の合計九つのクラスからなる。
「自分の息子に見限られ、周りを導く者として選択を誤ったことに対して、後悔して逝くといい―――――〈天樹流奥義・炎極〉」
魔法陣から青白い炎が横柱の様に放たれ、街長と妻を焼く。
「ああアアアッァァァ!!!」
「嫌ぁぁアアアッ!!」
二人は燃える痛みと生命を蝕まれる苦しみに耐えかねるように、劈くような叫び声を上げる。
だが、次第にその声も小さくなり最後には静かになった。
炎も消えた時には、灰すらも残っていなかった。
「……トウヤ、レナ。お前たちは俺に恨みでも怒りでも抱いていい。悪人とは言え、お前たちの親を殺したのは俺だ。その権利はある」
「いえ、僕は師匠に付いて行くと決めた時に両親との縁は捨てました。あるとするならば、今まで育ててくれた感謝を踏みにじられた怒りだけです」
「……そうか」
アレンはそう言って、数秒ほど目を閉じて黙とうを行った後、残った住人達に話しかける。
「今起きたことは全て現実だ。それを踏まえて、この街から悪さをする者は消えた。これからは復興に力を入れることができる。もしこの中で新たにこの街の長となり、街を再建し、引っ張っていくことができると思う者は前に出てきてくれ」
住人たちはざわつき始め、話し合いを始める。
あいつはじゃないやら、俺はこの街を出るなどと意見が飛び交うが、最終的にはこの街で一番長く住んでいた老人の名が挙がった。
「ワシのような年寄りで良いのなら、いくらでもやろう」
「爺さん、名前は?」
「ワシの名はフレッドと言います」
新たなる街長となったフレッドというお爺さんは、街では農業を営んでいた元冒険者だった。
実際に彼が街の問題をいくつか解決したこともあり、盗賊同然だった荒くれ者達を町一番の衛兵へと変貌させたり、食糧難だった時は森の中で食材をいち早くそれも大量に確保し、住民の餓死を回避したりとその功績は大きいと言えた。
「フレッドさん、我々と手を組みませんか?」
「と、言いますと?」
アレンは提案する。
現在、この街が属しているのは商業国家アファトで、その王都よりはるか遠くに存在する街。
今回の様に何かあった時に迅速に対応できる状況ではないので、それならばいっそのこと魔導都市アストレザと手を組むという提案。
実は既にアストレザの傘下に居るので、提案と言うより強制になるのだが、それはこの街に人々の知ることではなかった。
「我々、魔導都市アストレザはこの街の復興に力を貸します。その代わりと言っては何ですが、私達に属する街としてこれからは生きて欲しいのです」
「つまり、商業国家アファトから魔導都市アストレザに鞍替えするという事ですな」
「そうなります。もちろん何かあった時の対応は迅速に行い、最悪の場合は魔導師を在中させるために派遣することも構いません」
こんな勝手なことを言っているアレンだが、実際のところ魔導都市アストレザのトップであり、学園のトップでもあるアリスとは話が付いてた。
別に国土を広げたいわけではなく、ただ単に困っている人々を助けたいという純粋な動機での行動と提案だった。
「しかし、そんな大事なことをアレン様が決められるのですか?」
「大丈夫です、問題ありません。既にアストレザの全権者とは話が付いており、その約束を果たす書面もいただいています」
書面は鏡で送ってもらったので、アストレザ国璽が入った正式なものだ。
その書類をフレッドへと渡す。
「この刻印は……まさしくこれは本物のようですね。分かりました、私達は魔導都市アストレザの傘下へと属します」
「了承しました。ではその書面にサインをお願いします。その写しがアストレザの行政区へと渡します」
フレッドはサインし、書面をアレンへ返す。
アレンは書面を魔法で複製すると、その片方をフレッドへと渡し、残りを収納魔法に入れた。
「では明日にはアストレザより復興のために必要な人員と物資が運ばれてきます。前街長の前では、物体を創造するような魔法は無いと言いましたが、実はありまして、それで復興させてもらいます。もちろん魔力を切っても、壊れたり崩れたりすることはありませんので安心してください」
そうして、街の復興は改めて本格的に始動するのだった。
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