休みもそこそこに
三
「正直、
遠野さんの声に釣られ、俺はアスファルトから面を上げた。正午に差し掛かった頃のことだ。
「休日に清掃活動なんて柄じゃないだろう?」
「ひどい言い様ですね」
「おっと、すまない。気を悪くしちまったかな?」
「いえ、気にしていません。仰るとおりですから」
人付き合いは、広く、浅く、ほどほどに。遠野さんの言うとおり、これ以上の交流は俺の信条に反する。一方で、見知らぬ人との交流は俺の信条に合致する。
「俺としては、先生こそ渋ると思っていました」
「ノリノリだったな」
「盛り過ぎでは」
昨日、学校の清掃活動を行いたいと提案すると、
「要は『社会奉仕部は便利屋じゃない』ってことを言っていたんだろう? そりゃそうだ。俺たちは『校内奉仕部』じゃない」
校内の困りごとを何でもかんでも引き受けていれば、いずれ都合良く利用されるようになるだろう。便利屋あるいは雑用係と見られないよう、ボランティア活動を行う上で線引きが必要ということだ。
「だが、今日は練習だ。先生もそれをわかってくれたから、快諾してくれたんだろう?」
遠野さんが基先生を横目に見る。当の先生は少し離れた場所で黙々とゴミを集めている。俺たちの監視は業務外のようだ。
「では今後、校内で困りごとがあった場合には、頼まれても断るのでしょうか」
「社会奉仕部としてはな。学校同好会としては快諾するかもしれん」
まあ、と遠野さんは俺の方を見て、
「友人相手なら、同好会なんて関係ないがね」
と言った。
それは俺も同意見だった。
時刻は正午を回った。美化委員会による清掃活動が丹念に行われているおかげか、ゴミ袋を十分の一も使うことなく、東駐輪場の清掃が終わった。
遠野さんが額に玉のような汗を滲ませ、清々しい笑顔を浮かべる。
「いやあ、いい汗かいたね、
「そうですね」
同調する俺だったけれど、実のところ汗一つかいていない。代謝がとても悪いのだ。
「平気そうで
物は言いようだと思った。
「
基先生がゴミ袋を持って、集合場所である東昇降口前へとやって来た。ゴミ袋の中身は俺と同程度だった。
「問題ありません。コツが
俺の返事に先生が小さく
遠野さんは、しかし俺が想定しないことを口にした。
「そう言えば一つ、気になることがあったんだ」
遠野さんは先生ではなく、俺を見つめている。逃げ場はない。何があったか
遠野さんは俺たちを正門方面の駐輪場へと案内した。指を差した先には、一台の自転車が停められている。後輪の
「一年か」
基先生が呟く。さすが学年主任。認識が早い。
放置自転車を見て、俺は遠野さんが言っていたことを理解した。確かにこの自転車には違和感がある。
遠野さんは自転車の前に立つと、リング
「鍵がかかっているんだが、開かないんだ」
リング錠は施錠されていた。しかし、当の鍵はささったままだ。遠野さんが鍵を
「押すタイプではないでしょうか」
鍵を奥に押し込むことで解錠される種類もある。遠野さんが俺の指摘に従い鍵を動かすけれど、びくともしない。
「鍵がこの自転車のものではない、ということか」
基先生が重々しくそう言うと、遠野さんは
「
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