第2話 力の限り……

僕が……喫茶店を後にして


『絵にとっかかるか?』

と……油絵の具を出して用意を

始めた。


僕は、思いのままキャンバスに

筆と絵の具を叩きつけた。


《10万円か、悪くない話だ。

でも、何で急に……。》


まぁ、いっか……。


絵に集中し始めると何も口に

しなくなる。世界に没頭して

しまうからだ。


もちろん、時間さえ気にならない。深夜にも及ぶ作業……


『か…………描けた!』

僕は、筆を握る手の力が抜けて


筆を落としてしまっていた。

【カラーーーン……】



出来上がった絵には、

真ん中に、昨日訪問して来た


女子高生を何となく描いてしまった。



『コイツ、弁当持ってくるとか

言ってたな……?


いつ来るんだろう?』



時計に目をやると、

明け方の4時だった。



僕は、エネルギーを使い果たして、仮眠用のソファーベットに

倒れ込んだ。



いつの間にか。

深い深い眠りに入っていた。



『ココンッ!!』

ノックする音が何度となく

夢の中で……聞こえる。



僕は……まだ夢の中だ。

『ココンッ!!コンコン!!』



『ん……うーん、、、!!!?』

ガバッ!!と目覚めると

昨日の女子高生がお弁当袋を

フリフリしながら。



『先生~起きて~?私だよー?』

あ!!またか!!?



僕は……慌てて顔を洗い、扉を

開けた。すると。


とてつもなく、良い香りのする

お弁当袋が目に止まった。



僕が……ボォ~っとした

寝起き状態の時に……ホント

しょーがねぇヤツ。



悪い気もしなくて、まだ暖く

とても良い香りの漂う弁当箱を

受け取った。



『悪いな。サンキュ。』



そういえば。

あの絵をどうしたか?と聞くと

妹に持って行ったとの事だった。



理由を聞いていくと、



妹は小さな頃から入院していて

……今まで生きてられる事が

奇跡なんだよ?と……明るく


普通に話していた。



代わりに自分が学校へ通い

嫌な事も、たくさんあるけど



妹に勉強を教える為に

頑張ってるんだよ!!と……

その女子高生の、亜美は話を

始めた。



僕は少し驚き……

なんだよ?コイツ大変なんだ。



と……少しだけ

いたわりたくなってきた。




『先生~~亜美が朝から作った

お弁当食べて~~?んも~!


そんな寝起き状態でぇ~!!』




亜美は、少しだけ横顔の頬が


ぷっくりと膨らんでいた。

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