第174話

「最近、蒼様がずっと悩んでいるとそうおもいませんか?」

「私もずっとそう思っていた」


 あくる休日のアリシア邸で、蒼の恋人たちが集まって会議を開いていた。


 彼女達が集まって話すことと言えば、一つの事しかない。当然それは蒼についての事だった。


「そうなの、蒼ちゃん最近、何か悩んでいてね。私がそれとなく聞くと気まずそうな顔をするの。何かしてしまったのかも」

「あ、お母さん。私もそうだよ。髪を乾かしてもらっている時に何となく聞いてみたんだけれど、気まずそうな顔をしたの」

「……ちょっと待って、梨美ちゃん。蒼君に髪を乾かしてもらってるっていう羨ましい事してもらってるの?」

「まぁ、私は妹で恋人ですから仕方がありませんね。お兄ちゃんはとっても優しく髪を扱ってくれて、終わった後はナデナデしてもらえるんです」

「くっ……結婚して一緒に住み始めたら私もやってもらうことにしよう」


 梨美がドヤ顔で、その他の人が悔しそうな笑みを浮かべるのを母は苦笑しながらその光景を見つめた。


「確かに、その話も重要ですが、今は蒼様の悩みについて話し合うことにしましょう」

「そうだね」

「なんか、みんな思い当たる節はある?蒼ちゃんが悩んでる原因に」


 各々が考え始めるが中々思い当たる節ことが無く、数分程度誰も何も言わない時間が続いたが、それを破ったのはエリ―だった。


「もしかして、私たちに愛想を尽かした……とかでしょうか?」

「………….い、いやいや。そ、それはないよ」

「お兄ちゃんが私達に愛想を尽かすことなんて無いもん。お兄ちゃんは私の事大好きって言ってくれたもん」

「わ、私は親に付き合った報告をするくらいには相思相愛だからその可能性はない………….絶対にないもん」




 エリ―がそう言うと、早口で反論するが段々と口すぼみになっていき誰も離さなくなってしまう。


「私達が蒼様に過剰に愛を注ぎすぎてしまい、うざがられている可能性があるかもしれません。私も蒼様に毎日大好きと言って壁ドンをされながらディープキスをして貰ったり、飲み物を口移ししたりしました。皆さんも何かしらあるのではないですか?」

「…エリー、あなたそんな羨ましいことしていたのね?」

「え、あ、はい」

「次からは私もしてもらうことにするけれど、確かに私たちは蒼様にベタベタと四六時中くっつきすぎかもしれませんね」

「わ、私もずっとお兄ちゃんにくっ付いているかも」


 各々が何かしらここと当たりがあるのか気まずそうな顔をする。


「私達がくっつきすぎるせいでプライベートの時間がなくなりストレスが溜まっているのかもしれません。今は大丈夫かもしれませんが、もしかしたら破局なんてことも」

「「「「ひッ」」」」


 その場の全員が息をのんだ。


 彼女達はもう、蒼がいないと生きていけないと思うくらいには蒼に依存している。


「理由ははっきりしていないので断定するのには早いかもしれませんが、気を付けて行ったほうがいいんじゃないでしょうか」

「そう、ですね」

 

 彼女達は出来るだけ蒼に負担をかけないようにしようと心に誓った。

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