第172話
「こうして、母さんと二人っきりっていつ以来だろうね」
「そうだね、いつもは梨美とかアリシアちゃん達がいるから、二人っきりって言うのはもしかしたら…蒼ちゃんが頭を打って入院した時以来かもね」
「そうかもね」
「蒼ちゃん、どう?痛くない?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
母さんに耳かきをしてもらいながらゆったりと二人きりの時間を過ごす。
今日は平日で、僕は週に三回ほどしか学校に行かないから今日はお休みの日で、母さんは有休を消化するためにお休みを取ったみたいだ。
「まさか、こうして蒼ちゃんの耳かきを出来る日が来るなんて。私感動しちゃうし、胸がドキドキしちゃうよ。蒼ちゃんの恋人なんだなって」
「耳かきって恋人がするものかな?お母さんとかでもしないかな?」
「私はお母さんで恋人だからね」
そうなんだよな。本当に前世では考えられないけれど、まぁ母さん可愛いし綺麗だし他にも沢山素敵なところあるから恋人に成れてよかったってそう思う。
母さんに耳かきをしてもらいながら雑談をすること十分程度で両耳が終わった。
「あぁー、もう終わっちゃった」
「じゃあ、もっと恋人っぽい事してみる?」
「な、何をするの?」
母さんとは恋人っぽい事……ハグやキスをする機会が他の人よりも格段に少ない。
エリ―なんて隙あらば僕にハグをして、頬にキスマークがくっきり出る程吸いついてくるし、シュガーちゃんも最近は軽い、バードキスに加え、舌を僕の口内に侵入させて蹂躙してくるフレンチキスをしてくるようになった。
梨美も毎日と言っていい程僕が寝るときにベッドへと入ってきて、首筋や顔が唾液まみれに成るほどキスしまくっている。
恋人たちからの愛を感じられて嬉しいけれど、いつか手を出してしまいそうで困る。
この世界には避妊具というものがほとんどと言っていいほどないから、彼女たちはいつでも準備が出来ているが、僕は未だにすることに対して躊躇ってしまっている。
でも、きっとこの調子でいけばすぐにしてしまいそうだけれど。
恋人たちも段々となりふり構わずしてくるようになるような気がするし。
まぁ、それはそれとして、今は母さんとイチャイチャしたい。
「こういうこと」
「あっ」
母さんを正面から抱きしめて、唇を啄むようにキスをする。
母さんは一瞬驚きはしたが、段々と落ち着いて僕のキスに合わせてくれるようにキスをし返してくれる。
「蒼ちゃん、私、これ以上したら……」
「うん、分かった。じゃあ、ハグだけしよっか」
「……うん」
少し残念そうにする母さんの頭を撫でる。僕の心の準備がまだ出来ていないのを知っているから母さんは待ってくれたのだ。
せめて何かお礼はしたい。
「そうだ、今日のお昼ご飯は僕に作らせてよ。母さんのために作りたい」
「え、ほんと?」
「うん」
「えへへ、蒼ちゃんすきぃ」
「うん、ぼくも好きだよ」
母さんと抱きしめ合ったまま微笑み合った。
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