第168話

「良かったぁ」

「何が?」

「いや、実は由利がもしかしたら大金持ちで豪邸に住んでいたりするのかなとか考えてて」

「えー、何それ。そんなわけないよ。私の家は至って普通の家庭だから。アリシアの家みたいな豪邸じゃないよ」


 アリシアとエリーの母親に挨拶をして日本に帰ってきて数日後、今度は由利の家へと挨拶をすることに成った。


 ちなみにアリシアのお母さんとエリーのお母さんとはかなり仲良くなって今度どこか出かけようという話になったけれど、当然エリーとアリシアが止めてせめて五人で行こうという話に纏まった。


 母親たちと話していたら、僕が前にパーティに出た時にハンカチをあげたオリビアちゃんが僕に会いに来て少し遊んだり、オリビアちゃんから将来僕と絶対に結婚すると宣言されて少し焦ったりもしたが、不穏なことは何もなく無事に付き合ったという報告が出来た。


「じゃあ、開けるね」

「うん」


 由利が玄関を開けてくれるので、二人で由利の家に入ってリビングへと足を進める。


 リビングへ行くと、一人の女性が少し緊張した様子で座っていた。


「お母さん、祖師谷君連れてきたよー」

「う、うん」


 由利のお母さんだろうと思われる人の前に座る。


 顔を見てみるとどことなく由利と似ていてやはり親子なんだなと感じる。


 だけれど、由利はどちらかと言えば明るい感じでギャルのようなというかギャルなんだけれど、お母さんはいたって普通のお母さんという感じだった。


「は、は、初めまして、祖師谷蒼君。私は、由利の母親の冴島春香さえじまはるかです。これからよろしくお願いします」

「こちらこそ。ぼくは祖師谷蒼です。由利さんとお付き合いさせていただいています」

「ほ、本物だよ、由利。本物の青様だよ」

「お母さん興奮しすぎ」


 恥ずかし気に手で顔を覆ってはいるが、指の間からこっそり窺うように見ている。


 由利に聞くと、どうやら僕の大ファンのようで、本物をみて大興奮のようだ。


「サインとかって、いりますか?」

「え!?い、良いんですか!?お願いします」


 慌ててサイン色紙を取り出してきて、ペンを渡される。


 そこにササっとサインを書いて渡すと、ものすごく嬉しそうな顔をしてくれた。


「か、家宝にしますね!!」


 サイン色紙一つでここまで喜んでくれるなんて本当に僕の事を応援してくれているんだな。


「それで何ですけれど、僕と由利さんの交際を認めてくれませんか?僕は由利さんと結婚の事まで考えています」

「っ!?そ、蒼君!!」

「勿論です。青様…祖師谷君がうちの娘を貰ってくださるのなら、きっとこの子は世界一幸せな子になるでしょうから」

「絶対に幸せにして見せます」

「蒼君!!」


 由利は嬉しくなったのか勢いよく抱き着いてくる。


 由利の頭を撫でつつ宥めていると、視線を感じ、そちらを向くと由利のお母さんがジィっと見ていた。


 もしかして….



「由利が終わった後、しますか?」

「っ!?良いんですか?」

「はい。春香さんも間接的に僕の家族になるわけですから」


 春香さんは目を見開いて、物凄く嬉しそうに微笑んだ。


 その後、春香さんを抱きしめたり、由利が作ってくれた料理を食べて話してからお暇することにした。

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