第167話

「蒼様、こちらです」

「は、はい。あ、ありがとうアリシア、エリー」

「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。前にも一度挨拶したではないですか」

「あ、あの時はまだアリシアと付き合っていなかったけれど、今はアリシアとお付き合いさせていただいてるんだからそりゃ緊張するよ」

「うふふ、とっても可愛いです、蒼様」


 今日、僕はアリシアの実家へと来ていた。


 アリシアが母親に僕とお付き合いすることに成ったと報告したところ大喜びしたみたいで、僕を連れて一緒に戻ってきなさいと言われたみたいでこういう事態になったわけだけれど、あぁ、緊張する。


 それにどうやら初めましてのエリーの母親もいるみたいだから、さらに緊張する。


 前世ではありえない二人の母親に挨拶をするというイベント。


 ふぅー、大丈夫。僕は二人の彼氏なんだ。堂々としないと。


 ものすごく大きい玄関を開いて中に入る。


 ものすごく大きいお屋敷には沢山のメイドさんがサイドでお辞儀して、道が作られている。


 その真ん中を歩いて行き、アリシア、そしてエリーのお母さんが待つ部屋へと行く。


 中に入ってみると、パティ―の時に見たアリシアのお母さんの顔、そしてどことなくエリーに似た雰囲気を持つキリっとした女性が座っていた。


「お母さん、ただいま」

「お帰りなさい、アリシア、エリー。そして蒼君」

「お、お久しぶりです。ソフィアさん」


 流暢な日本語で挨拶をされて、少し戸惑ってしまい返すのが遅れてしまった。


「どうかしら?ちゃんと話せてる?蒼君と話すために私、日本語覚えたのだけれど」

「はい、凄く上手です。上手すぎて過ぎてびっくりしちゃいました」

「うふふ、良かった」


 ニコニコとほほ笑むアリシアの母…ソフィアさん。


 相変わらず物凄く綺麗だよなぁ。将来アリシアはこんな風になるのかと思うと凄く楽しみ。


「……蒼様がソフィア様にデレデレしています」

「……蒼様は私のお母さんにきょうみがおありなんですね」


 と二人からジト目を向けられてしまい、そっと目を逸らした。


 ソフィアのお母さんに席に座るように促されて目の前の席に三人で着く。


「今日は急にごめんなさいね、蒼君。あなたとアリシアが恋人?になったと聞いたから凄く嬉しくなってしまって」

「いえ、その逆に…アリシアの返事をずっと保留していたので褒められたことではないです。ごめんなさい」

「いいの、蒼君にも色々考えていたことがあるんでしょう?」

「はい」


 ソフィアさんの僕を見つめる視線はどこまでも優しい。


「まぁ、それより蒼君はエマと会うのは初めてよね」

「は、はい。エリーのお母さんですよね?」

「はい。私はエリーの母であるエマバットレットと申します」

「ぼ、僕は祖師谷蒼です。この度、エリーさんとお付き合いさせていただきました」


 がちがちに緊張しながらもエリーのお母さんに付き合ったということを報告すると、凛とした顔を綻ばせて……


「ふふふっ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ、蒼君。こんな不出来な娘でも良いのなら貰ってやってください。蒼君が夫になるのならきっとこの子は世界一幸せな女に成れるでしょうから」


 と優しい声でそう言われる。


 良かったぁ、もしかしたらあなたにエリーはもったいないですとそう言われてしまうかもしれないと思っていたから。


 エマさんにそれだけ期待されているのだから僕もそれ相応に返さなければ。


「はい、任せてください。僕が必ず幸せにしてみます」

「ふふっ。エリー、良かったわね」

「そうさまぁ、大好きです」


 涙を浮かべて母親がいるのにも拘らず僕の事を抱きしめて、唇を近づけて舌を入れてキスをし始めた。


 息が出来ない程、下で嬲られた後やっと離れたと思ったらまた強く抱きしめられてしまう。


「うぅ……エリーだけずるいです、蒼様。私も、言われたいです‼!キスしたいです!!」


 今度はアリシアが別の意味で涙を浮かべて悲しそうにしているので、ソフィアさんにもアリシアの事を幸せにして見せるというと、パッと顔を明るくさせてエリーを同じようにキスをしてきた。


 ジィっとソフィアさんとエマさんが見つめる中僕たちは濃厚なキスをして、ハグし合っている。


 正直、物凄く恥ずかしい。けれど、拒むと悲しい顔をされるし……か、海外ならこれくらい普通ってことで。


 ソフィアさんとエマさんの方を窺うように見てみると、ぼそりとこうつぶやいた。


「いいなぁ、私も蒼君とキスしたい。舌絡ませたい」

「私も、蒼君の物を舌で嬲りつくしたい。ご奉仕したいわぁ」


 とアリシア、エリー以上にエッチな雰囲気を漂わせてそんなことを言っていたので僕はそっと目を逸らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る