第156話
先ほどまで明るかったステージが突如暗転し、僕がステージの中央に立つ。
先ほどまで五月蠅かった客席は、今、静寂に包まれ今か今かと始まるのを待っている。良し、予定通り。
行くぞ
暗転していたステージが明るくなり、映し出され後ろに見えるようにでっかいスクリーンにも僕の姿が映し出される。
すると、客席から小さな悲鳴のようなものが上がる。
最初に歌う曲は、僕の最初のオリジナル曲であるシュガーちゃんに作ってもらったこの歌だ!!
メロディーが流れ始め、僕も歌い始める。
ステージから見えるリスナーの顔は、泣きそうな顏だったり興奮のし過ぎで倒れて仕舞いそうな人だったり、嬉しすぎて涙で化粧が取れて仕舞いそうな人だったり。
凄いな、ステージからだとこんなにみんなの顔が見える。
ずっと練習してきた歌とダンスを一曲目に続き、二曲目も続けて披露する。
練習では多少ミスがあり、本番でミスをしないか終始不安だったけれど練習の成果が出たおかげで完璧に歌い、踊り切ることに成功した。
二曲目を歌い終えたところで、一旦挨拶に入る。
「ふぅ.......みんなー、こんばんわー。リスナーのみんな、やっと会えたね!!青だよー!!」
「「「「「キャ――!!」」」」」
「青様ー-------------!!」
「格好いいー---!!」
「大好きィ!!」
挨拶をすると悲鳴に近い声を上げる人が続出したり、褒めてくれたり、告白してくる人とか色々いる。
「ありがとね。でも興奮しすぎて倒れたりしたらダメだよ?まだ始まったばかりなんだから。それにリスナーみんなに折角会えたのにちゃんと見てくれなきゃヤだな」
「穴が開くほど見るから大丈夫だよー!!」
「青様以外見てないよー!!」
「青様最高ー!!」
「それじゃあ、次の曲行くよー!!」
先ほどまで僕を映し出していたかなり大きいバックスクリーンが、御伽噺に出てくるようなファンシーなものに変わり、曲が始まる。
曲に込められているお話が進むにつれて、バックスクリーンも変化していきバックダンサーも演技をする。まるで劇のような演出になっていて、僕もそれにつれて歌いながらダンスをしていく。
三曲目が終わるのと同時に衣装替えをして王子様のような格好で登場すると、声が涸れそうな程の悲鳴が湧きおこる。
四曲目、五曲目、そして、少しトークを挟みつつライブを順調に消化させ、全力で臨んでいると、あっという間に時間とは過ぎていくもので、最終曲まで来てしまった。
「はぁはぁ.........みんな、今日はみんなありがとう。みんなの前で歌うのが楽しすぎてあっという間に時間が過ぎちゃった」
「わ、私もだよー」
「しゃいこうすぎりゅー!!」
みんなも衣装替えをしたり、新曲を披露したから興奮が最高潮に達して叫びすぎてしまって喉がガラガラな人が多い。それにリスナーのみんなも踊ってはいないけれど体を動かしていたから疲れているはずなのにまだまだ僕の歌を聞きたそうにしてくれている。
かくいう僕も日頃から鍛えていなければ、使い物にならなくなっていたくらいには全力で歌った。
「次で最後の曲です。ここにいるみんな、そしてネットチケットを買ってくれているリスナーのみんなにも思いが伝わるように最後も全力で歌うので受け取ってください。僕が最初にみんなの前で歌ったこの曲、『あなたへ』」
これからの事、今までの事すべて含めてこの歌へ乗せてリスナーへと届ける。
ステージから見えるリスナーのみんなは総じて泣き顔で、だけれど必死に僕の歌を聞こうとしてくれていた。
最後の最後まで全力を出し切って歌い終え、ステージが暗転して僕は舞台から降りた。
観客席からは、沢山のありがとうと言う言葉や僕を賛辞する言葉、そして泣き声、嗚咽が聞こえてくる。
「はぁ.........やり終えたぁー」
特別席から見ていたいつものみんなもリスナーのみんなと同じように感動したり楽しんでくれていた。
今から、あの子達に告白するんだ。
...............って、あれ?
なんか、足元の感覚がない。体が崩れるような感覚に陥る。
「青様!?」
遠くから理恵さんの声が聞こえる。
大丈夫ですよ、何そんなに焦ってるんですか。
そう言う前に、僕は床に倒れ込みそこで意識が途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます