第154話
最近の蒼様はとても頑張っている。
前まで頑張っていなかったと言いたいわけではない。
前以上に頑張っているということだ。
毎日のスケジュールはキツキツで、とても子供には耐えられなさそうな日々を送っている。
朝起きてから、生ライブのための体力作りにランニングをして、それから学校へ。
授業を終えてからはダンスレッスンへと行き、その後は理恵様との打ち合わせ。
帰ってくる頃には10時を過ぎていて、それからお風呂へ入り、ご飯を食べ、それから配信して、tritterで反応を見てから二時ごろに寝る。
まだこれは軽い日で、本当に忙しい時はドラマの撮影とか番宣とかそのための打ち合わせが入るためもっと忙しくなる。
蒼様は楽しそうにしているし、疲れを見せませんが、心配になって前にそれとなく言うと…
「大丈夫、ドラマの撮影とかはもうすぐです落ち着くし、生ライブまであとちょっとだから。心配してくれてありがとね。白金さんにも喜んでもらえるようなライブにしてみせるから。見守っててね」
とそう言われてしまったのでそれ以上は何も言う事ができなかった。
今も青様はスタジオでダンスレッスンをしている。
前からショート動画とか配信上のライブでダンスを披露をしていたこともあったけれど、その時以上にキレがあって動きが洗練されていて何度見ても見惚れてしまう。
一通り終わったのか、その場に座って休憩をしていたのでタオルと飲み物を持って行く。
「これをどうぞ」
「いつもありがとう、白金さん」
「いえ、当たり前のことですので」
そうは言っているけれど本当は凄く嬉しいのだ。
蒼様にありがとうって言われる度にあぁ、私は本当に蒼様の護衛になれてよかったなってそう思うのだ。
…っと、感慨に耽っている場合ではありませんね。
「蒼様、帰る前に少しお時間をいただけませんか?」
「いいけれど、何をするの?」
「何もしなくていいです。ここに寝ていただければ」
「え?で、でも僕、汗かいてるし臭いと思うけれど」
「逆にそちらの方が…えぇこほん。大丈夫です。私は汗など気にしませんから」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えようかな」
座っている私の柔らかくもない鍛え上げられた硬い膝の上に蒼様の美しいお顔がのります。
蒼様を少しでも休ませたくて提案した案ですが、こんな硬い膝では疲れてしまうかもしれないと気づきました。
そう思ってやはり辞めようかと言おうとしたところで
「あの...............白金さん。頭、撫でてくれますか?」
「っ!?良いんですか?」
「はい。いつも護衛してもらってそれに膝枕までしてもらって図々しいと思いますけれど」
「い、いえ!というか私の膝、硬いと思いますが大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。白金さんの膝、とっても気持ちいいよ。これに僕はいつも守られているんだね。ありがとう」
そう言って、そっと優しく膝を撫でてくださると、私はビクビクと反応してしまいます。
私が気持ちよくなってどうするんですか、今は蒼様を癒さなければいけないでしょうが。
蒼様に要望された通りそっと頭を撫でてあげると、安心したように目を閉じてお休みになる。
蒼様、凄く可愛い。
将来、というかもうすぐこの可愛くて格好良い人と付き合うことに成るんだと思うと愛おしさが今までの倍以上になる。夢中になって頭を撫でる。
蒼様をお膝の上に乗せてからどのくらい時間が経ったのだろう?
蒼様は眠っていらっしゃるし...............。
時計を見てみると、もう十時を過ぎていた。
ここのスタジオはそもそも蒼様のために用意されたものだから、時間指定とかはないけれど流石に私の膝でこれ以上寝させるのも体に悪い。早く家に帰ってご飯食べてふかふかのベッドで寝てもらった方がいいはずだ。
蒼様を軽く揺さぶってみると、目をうっすら開けて光が眩しいのか手を目に当てて防いでいる。
その仕草が非常に可愛らしくて、起こしてしまったのが申し訳なくなるけれど起こさなければさらに体に悪いので仕方が無い。
「おはようございます、蒼様。すみません、起こすのが遅れてしまって一時間ほど寝させてしまいました」
「.........え?うわ、マジか。というか、ごめんなさい白金さん。膝、重かったでしょ?」
「いえ、蒼様の寝顔がとても可愛らしかったので全く苦ではありませんでした」
「そっか、それなら良かった」
それから急いで、荷物を持って家へと向かう。
その途中.........
「ねぇ、白金さん」
「何でしょう?」
「こ、今度さ、また膝枕してくれる?」
「は、はい!勿論です。あなたの護衛ですから」
「それ、護衛関係あるかなぁ?」
残念ですが蒼様のお顔は暗くて見えませんでしたけれど、きっと恥ずかし気にそんなお願いをしてくれたのでしょうね。
あぁ、やはりとても胸がときめきます。
私こそあなたに何度でも伝えたいです。
私を護衛にしてくれてありがとうございます。
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