第141話
ある一人のバカな男がいた。
彼は、青をある日配信でバカにした一人の男性配信者だった。名前は玲。
その日からのネットのでの叩かれようは凄まじいものだった。
被害はネットだけに収まらず、現実までにも及び、家には動物の死骸や生きたライオンの子供、植物用の土が20kg送られてきたりと散々な目にあっていた。
ついには殺害予告までくるようになり、彼は精神的にかなり追い詰められていた。彼の家族はそんな彼の事を気にして優しく諭してあげていたが、彼はその優しさを踏みにじり罵倒したりしていた。
そして、遂に玲は精神的に追い詰められて強行に出ることにした。
彼はかなりのお金を使い、青がいつもどのように生活をしているかを調べ上げた。
基本的に、彼の周りには大勢がいるがスタジオから出た時やドラマの現場からの帰り道は護衛と二人きりの時が多いと理解した。
「護衛もろとも刺してやるよ」
彼は激情に駆られて、なんと青を今自分が持っている包丁で刺し殺してしまおうと考えていたのだ。そうすれば、清々するし最悪、自分は男であるから間違って殺してしまったとでもいえばどうにかなると思っていた。
まぁもしそんなことに成ったとしたら順当に警察に捕まり牢屋に入れられて判決を待つことに成るだろうが、この男はそれすら理解していな所謂バカだった。
男性という特権が何にでも適応されていると思っている傲慢が生んだバカだった。
スタジオから出てくる青を自分が男だとバレないよう顔をマスクで覆い隠し、物陰に隠れて待つ。
だが、最も馬鹿な行いとはそもそも青を殺してしまおうとそんなことを思ったのがそもそもの間違いだった。
だって、いつしか彼のバッグにはこの国の重要人物だけでなく、他国の重要人物までついているのだから。
青がスタジオから出て護衛と二人きりになったところを狙い、走り出そうとした瞬間。
玲は気を失うこととなる。
「青様以外の男は皆、ゴミ虫なのかしら?リース様、バカを一匹、確保しました」
「了解、良くやったわ」
「このバカ、どうしましょうか?私としてはこのまま処分してしまいたいのですが」
「私も同じ気持ちだけれど、止めなさい。そんなゴミでも一応男なのですから使い道はあります」
「分かりました」
リース リーズフェルト。
以前、青がアリシア達に呼ばれてパーティに出席した時、オリビアちゃんという子がいたが、その子のお母さんである。
つまりアリシアの国の外務省のお方であり、偉い方である。
「あら、先に越されてしまったみたいですね」
「エリー。あなたも命令されて?」
「えぇ、と言っても私たち以外にもかなりの強者が青様を見張っていたみたいですから、私の出る幕は無いと思っていましたが」
「そうみたいですね。青様は本当にすごいお方ですね。世界の権力者たちも魅了している」
「本当に、そんなお方が私やアリシア様の事を好いてくれていると思うと胸が高鳴って仕方がありません」
「いいなぁー」
「欲しがっても絶対にあげません。の地位は他の何よりも代えがたいものなので」
「分かっているわ」
「それより、あなたはそいつをどうするんですか?」
「リース様が、一応男だから利用価値があるって。多分、こいつは今後機械に搾性され続ける運命になるんじゃない?」
「なるほど」
「じゃあ、私、やらなきゃいけないことあるから」
そう言って玲を抱えて車に乗り込み何処かへと行ってしまう。
そも、なんでこんな街中でこれだけ人通りがないのかということに玲は気づけなかった時点でこうなることは決まっていた。
そんな凄いことの渦中にいる青はというと......。
「白金さん、どうすればもっと上手く演技ができるのかな?」
「十分、蒼様は演技が上手でした。今日も何度も泣いてしまいましたし」
真剣に演技について考えていた。
この事態に気づいていたのは白金だけだろう。
こうして、青は知ることも無く一人の男の人生が終わりを告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます