第136話

「ねぇ、お兄ちゃん。私、似合ってるかな?」

「うん、すっごく可愛いと思うよ」


 梨美が高校の制服を着て、くるりと一回転して見せてくる。


 僕の中ではいまだに中学生という感じが残っていた梨美だけれど、制服に袖を通した梨美の姿は様になっている。


 女子高生だなぁと親のような感覚でシミジミとしてしまう。


 長いようで短かった春休みを終えてから、入学式の日になった。


「二人とも、行くよー。早くしないとおいて行っちゃうからねー」

「「はーい」」


 母さん、白金さん、梨美、僕の四人で車に乗り、学校へと急ぐ。


 入学式まで時間はあるが、在校生代表挨拶のこととか確認することがあるから少し早めに行かなければならないのだ。


 学校へと着いてから、母さんたちと別れて職員室へ。


「おはよう、祖師谷君。本当は休日なのにごめんね」

「いえ、僕は元から来るつもりでしたから全然問題ありませんよ」

「それならいいんだけれどね。在校生代表挨拶の文は完ぺきだったからあとは自信もって................って言っても祖師谷君はもう慣れっこか」

「いえ、未だにみんなの前に出ると緊張しますよ」


 確かに大勢の人に見られる機会が増えて緊張は段々としなくはなったけれど、完全に無いわけではない。


 元々僕は、そんなに前に出る人ではないから。


 先生と少し話して挨拶を済ませて後に体育館へと行くと新入生の母親の皆さんが既に結構の数いた。


 そして、入ってきた僕のことをガン見している。

 

 手を振ってみると、胸を押さえて苦しそうにしていたり頬を真っ赤に染めていたり喜んでくれているみたいでよかった。


 僕の母さんは頬を膨らませていたけれど。


 そして、数十分経ってから入学式が始まった。


 新入生の子達はこれからの高校生活を思って、ワクワクしていたり緊張していたりしている色々な顔をしている。


 その中で、梨美だけはキョロキョロと周りを見渡して僕を探していたけれど。


 入学式も恙なく進み、在校生代表挨拶となった。


 壇上に上がると「きゃー!!」と言う声だったり、涙を流している子だったり、一生懸命話を聞こうとしてくれている子だったり沢山いる。


「暖かい春の日差しに包まれ、桜の花が満開となりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます。さて皆さんは.....」


 考えてきた硬い文章を読み進めていくが.....。


「新入生の皆さんの今後のご活躍を心からお祈り申し上げ祝辞とさせていただきます.....っと硬い挨拶はここまでにして最後に.....みんな、これからの高校生活、楽しもうね!!学校であったら仲良くしてくれると嬉しいです。上級生の人たちは優しいので頼って何でも聞いてくださいね?皆さん、入学おめでとう!!」


 そう言うと、沢山の拍手が体育館に響く。


 壇上を降りてからも、拍手は鳴りやまず進行の妨害をしてしまったかなとも思ったけれど、先生方は褒めてくださったので構わないだろう。



 あぁ、これからの高校生活が楽しみ。





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