第124話

「見えてるかなー?こんばんわー。いつもより早いからまだお仕事で来れていない人もいるかもだけれど、お疲れ様」

『見れてるよー』

『今日もかわいいね』

『無理やり定時に帰ってきたよー』

『普通にお仕事終わって余裕あるから大丈夫だよー』


 今日はホワイトデーのお返し配信の日だ。


 料理配信をするからいつもの配信時間よりは早くなってしまっているため、人の集まりが悪いかなと思ったけれど、そんなことはなくいつも以上に人が来てくれている。


「今日は料理配信をするから、特別なスタジオを借りたよー」

『料理してくれるの!?』

『青様の手料理』

『聞いただけで涎が出てくるんだけれど!!』

「あと、今日は作ったお菓子は抽選になっちゃうけれどお菓子を渡してくれた人に渡したいなって思います。全員じゃなくてごめんね」

『全然いいよ!!というか、作ってくれたものをもらえるかもしれないってだけでうれしい』

『当たれ!!』

『欲しい!!』

『私の運よ、ここに集まれ!!』


 本当は全員に渡したかったんだけれど、さすがに全員渡すとなると僕の手作りじゃなくて工場生産になりそうだからね。


「お菓子のほうは抽選になっちゃうけれど、じゃーん」

『まじ!?』

『やっぱ、青様って本当に神なんだね』

『青様が天使なことは知ってる』

『青様最高』


 画面にシチュエーションボイスとASMRの画像を差し込む。


「ASMRとシチュエーションボイスはこの配信が終わった後に投稿するから楽しみにしててね」

『お金とっても全然いいのに』

『むしろお金を私たちが出したい』

『はい、これ。ASMRとシチュボ代ね』


 せっかく無料にしたのに、投げ銭を支払われてしまう。


 ありがたいけれど、これでいいのかという気持ちにもなるけれどありがたくもらっておこう。


「ここで、ちょっとお着換えタイムを挟むからちょっと待っててね」

『お着換えタイム?』

『わくわく』

『ドキドキする』

『どんな衣装?』


 急いでメイド服へと着替えて配信画面を戻す。


 鏡で見た僕のメイド服姿はまぁ、自分で見た分には気持ち悪かったけれどスタッフの人が鼻血を出していたからまぁ、女性受けはいいんだろうなって自分自身に言いかけて落ち着かせる。


「み、みんなー、どうかな?」

『................................』

『青君ってさぁ、天才って呼ばれない?』

『こんなメイドさんだったら家にずっといてほしい』

『逆にお世話してあげたいくらい』

『速攻でスクショした』

『私の下のお世話もしてほしい』

『foooooooooo』


 コメントが変態さんたちであふれてしまったけれど、どうやら凄く好評みたいだ。喜んでもらえてよかった。


「それじゃあ、お披露目も終わったことだし早速お菓子作りをしていこうと思うよ。今日作ろうと思ってるのはクッキーだよ」

『楽しみ』

『マジでかわいい』


 クッキーにした理由は単純に保存がきくからという理由と、失敗をそんなにせずに済むという点からクッキーにした。


 さっそく調理に取り掛かる。


 元から料理はしていた方ではあったので、レシピを見て難なく調理できている。


 配信者的には調理を失敗した方がいいのだろうけれどみんなに渡すものだからそれは今はなしかな。


 僕が料理をしているところを応援してくれるお母さん的なコメントもあれば、めちゃめちゃ杞憂してくれる人もいれば、可愛いと連呼してくれる人もいて沢山だ。


 今回はできるだけ多くのリスナーに届けたいし、沢山頑張って作りたいから配信時間はかなり押しちゃうだろうけれど、まぁいいか。


 理恵さんもきっと許してくれるだろうし。


 焼いている時間は暇なので、メイド服だけじゃなくて執事服もきて、モデルさんのように振舞ってリスナーのみんなに写真を撮ってもらった。


「こう、かな?」

『うん、最高』

『めちゃくちゃ格好いい』


「僕だけのご主人様。ずっとそばにいてね?」

『誰にも渡さない!!』

『最高じゃない?』

『本当に青君って!!』

『罪作りだよ。大罪だよ!!』

『青様最高すぎる』


 とかいろいろやっていたら、焼けたみたいで見てみるとしっかりとクッキーができていたみたいでよかった。


「このクッキーは、後ですぐに包装してリスナーの誰かに送るから待っててねー」

『わくわく』

『私のところに来い!!』

『もし来たら、仏壇に飾ろう』

「いや、ちゃんと食べてね?腐っちゃうからね?」


 何故か当たったら、食べないで鑑賞する勢が一定数いるから突っ込んでしまった。


「配信時間も長くなってきたし、そろそろみんなとお別れかな。また次の配信でね?」

『うぅ、寂しいけれど。またね』

『ASMR楽しみ』


 配信を閉じて、スタッフの人とかに挨拶をしてからtritterへ。


 tritterでは、クッキーはだれがもらうのかやASMRについての話題で持ちきりだった。


 早く、届いて食べた感想とかASMRとシチュエーションボイスの感想が聞きたいな。

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