第121話

「エリー、今日はよろしくね」

「お任せください、祖師谷様。やっと、あなたに尽くすことができるのですね。私はとてもうれしいです」


 ホワイトデーのお返しで料理配信をすることが決定したので、今日はエリーに頼んでお菓子作りを教えてもらうことにした。


 まぁ、料理配信のためだけではない。


 不格好かもしれないけれど、どうせならアリシアたちに手作りのものをもらったのだから、お返しは僕が作ったものをあげたいなって思ってるから。


「そういえば、料理とは全く関係ないんだけれど僕がメイド服とか執事服とか着て料理したりお給仕したりしたら、エリーは良いなって思う?」

「……。最高ですね。私は常々祖師谷様が天使なんじゃないかって思ってましたけれどやっぱりそうなんですね」


 少し考えた後、たらーっと鼻血が垂れてきたので、相当僕の姿に興奮してくれたんだなって思う。


「特にメイド服を着た祖師谷様を想像するだけでもうっ!!最高ですね。ぜひ着ましょう、今着ましょう!!屋敷に余っているはずなのでっ!!」


 興奮したエリーはそのまま走って、厨房から出て行ってしまった。


「どうしたんですか?エリーは」

「えーっと、あはは」


 エリーと変わるように入ってきたのはこの屋敷の主人であるアリシアだ。


「僕が、メイド服着たら萌えるかなって言ったら、走って出て行っちゃって」

「祖師谷様がメイド服!?……あぁ、天使です。最高です」

 

 アリシアの顔がだらしないものになっている。そこまで需要があるものなのか。リスナーのみんなが見たらきっと喜んでくれるだろうな。


「こうしてはいられませんね。私も行ってくることにします!!屋敷にある最高のものを持ってきますので、少々お待ちを!!あぁ、配信をするときに使うのなら、最高のものを取り寄せますので。あぁ、楽しみすぎます!!」


 そのままアリシアも出て行ってしまったので、厨房には僕一人となってしまった。


 三十分ほどたってからアリシアとエリーが、執事服とメイド服をたくさん持ってきてくれたので、一旦中止して衣装室でお着換えタイムとなった。


 メイド服や執事服の着方なんて分からない為、エリーに教えてもらったり着方のマニュアルをエリーから渡されたのを見て、実際に着てみる。


 執事服を着て、エリーたちへと見せると……


「あぁ……最高です!!」

「格好いい。写真撮ってもいいですか?」

「みんなへ送ってもいいでしょうか?」

「いいよー」


 カメラの連射機能を使って物凄い数の写真を撮っていく二人。二人が十分なほど写真を撮った後に、次はメイド服を着ることにした。


 こういう時、ちゃんと毛の処理していてよかったなって思う。


 鏡の前に立ち、自分の姿を見てみて自分だとやはり少し気持ち悪く感じてしまう。


 いくら僕がかわいい寄りの童顔だとしても。


「どう、かな?」

「………祖師谷様は、天使なんかじゃない。女神様だったんだ」

「最高ですね。私はここで死ぬのかもしれません」


 二人とも鼻を抑えて、感動で涙を流している。


「そこまでかな?」

「そこまでです。可愛すぎます。エグイです。究極の萌えです。こんな可愛いメイドさんがいたら絶対にご主人様が興奮して夜のお給仕が始まっちゃいますよ!!」

「私はずっと、祖師谷様のメイドになりたいと思っていましたけれど先輩メイドとして色々教えてあげるのもいいなと思いました。というか教え込みたいです。たっぷりと体に」


 二人が三百六十度物凄い速さで僕を嘗め回すように、見つめて写真を撮りまくっている。


 そこまでいいものかな?


 リスナーのみんなも喜んでくれるといいんだけれど。


 結局その日は、料理をすることはなくアリシアとエリーにいろいろとメイド服を着せられて終わってしまった。





 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る