第118話

「蒼様、今日は遅刻確定ですね。これは仕方がありません」

「そうだね」


 今日はバレンタインデー。


 今日の朝には妹の梨美と母さんから愛情の籠ったチョコレートとマカロンを貰っていて朝から少しだけ気分がいい。


 いつものメンバーからは何かしら貰えるだろうなと思ってウキウキとしながら学校へと行こうと思った。


 けれど、校門前にはかなりの女性がいて正面からは入ることは厳しそうだ。


 みんな手には何か持っていて、恐らくだけれどあれは僕にバレンタインの品物を渡そうとしてくれているんじゃないかって思う。


 けれども、今ここで出てしまったら大騒ぎになって仕舞うかもしれないから出るになられない状況となっている。


 校門前で先生がそれを対処してくれていて、僕に間接的に渡すためにチョコを回収して回ってくれているみたいだ。


 本当に、僕のせいで迷惑を掛けてすみません。



 

 一時間程度してから、やっと人がまばらになってきたので正門からは入らず別の所から学校内へと入り、昇降口へと行く。


 なんとなく下駄箱が半開きになっている時点で察していたけれど、僕の下駄箱にはぎゅうぎゅうにチョコレートが詰められていて、大変なことに成っていた。


「蒼様、一応用意していました」

「流石、白金さん」


 こうなることを予想してくれていたのか白金さんが大きな袋を用意してくれていたので、その中へとチョコレートを入れることにする。


 すべて入れ終わり、やっと教室へと入ることが出来る。


「みんな、おはよー」

「おはよう、祖師谷君。そして、ハッピーバレンタイン!!」

 

 クラスのみんなから様々なお菓子を貰うことが出来た。


 どれも丁寧に包装されていて可愛い。一生懸命僕のために作ってくれたんだなって分かる。


 下駄箱とかに入れられていた者とは別の袋に知っている人たちや関わりのある人たちの品物を入れていく。


「祖師谷様はやはり人気ですね」

「あはは、おかげさまでね」

「そんな人気な祖師谷様は、私からのバレンタインは要りますか?」


 とアリシアらしい高級そうな綺麗に包装されているものを渡してくる。


「アリシアからのだもん。いるに決まってるよ」

「うふふっ、ありがとうございます」

「祖師谷君、私からもこれ」


 続いて、由利、愛梨さんとそれぞれの思いが籠ったマカロンとかカップケーキとかを貰う。


 確か意味は......大切な人とか特別な人だったような気がする。改めてそういう風に思われているって思えて嬉しい。


「祖師谷様、私からはとっておきのモノをご自宅に送らせていただきましたので」

「え?う、うん」


 エリ―が意味深に微笑んでいる時って大体何か考えがあるときだからね。何が送られてくるのか楽しみだけれど少し怖い。


 その後は、靴箱と同様に机の中やロッカーの中に敷き詰められていたお菓子たちを回収し、先生方が回収してくれたお菓子も纏めると数えきれないほど大量だった。


 家に帰って見ると、何故か巨大なウエディングケーキ並みのモノが運ばれていて添えられているメッセージには「ハッピーバレンタインです。祖師谷様。私の思いはこれ以上のものですよ?」と書かれていた。


 それだけでは終わらず、家に風花ちゃんが来てお菓子を貰ったり理恵さんからの連絡で意味が分からないほどのチョコレートが事務所に送られてきているみたいだ。


 この大量のお菓子、どうしよう?


 業務用冷蔵庫を貸してくれるところを探した方がよさそうだ。




 ちなむと、この年のチョコレートの売り上げが前年よりはるかに高く、店舗にチョコレートが無いと騒がれるほどだったみたい。


 

 

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