第117話
「今までは私たちには関係のないものでしたが、今年は祖師谷様がいるので、バレンタインデーというものが私たちにも身近なものとなりました」
「バレンタインとか、私に一生関係のないものだと思っていました」
いつものメンバーがアリシア邸に集まり、近づいてくるバレンタインデーに備えて用意を始めていた。
この世界にもバレンタインは存在はしている。
蒼が元居た世界と同じように、昔にバレンタインさんというお方が男性と結婚したいがあまりに王宮に突撃してお菓子を渡すということが始まりとされていて前世とは異なってはいるが、バレンタインは存在しているのだ。
だけれど、そもそも現代では渡す相手がおらず限られた貴族の人たちや学生のごく少数だけが獲得できる希少イベントでもある。
そんなイベントには今まで関わって来なかった由利たちなので何を作ればいいのか困っているわけだけれども。
「確か、渡すお菓子にも色々意味があったはずですよね?」
「そうですね。キャンディーやカップケーキとかマカロンとかはあなたが好きとか特別という意味になったはずですね」
「うぅ……祖師谷君、ホワイトデー返してくれるかな?」
「返しては下さると思いますし、祖師谷様のことですからしっかりと意味も考えて返してくださると思います」
バレンタインがあるということは、ホワイトデーもあるということでお返しもあるわけだけれども。
「それよりも、私たちはそもそもお菓子作りをしたことがありませんからさっさと決めてしまってから作り始めたほうが良いと思いますよ」
「そうだね」
この世界では男性に手料理をふるまう機会なんてないし、カップラーメンで済ませちゃう人たちや手軽にお惣菜で済ませちゃう人とかも多いため、女性が料理をすることは前世に比べると少ない。
貴族の人たちや、それこそいつか男性と会った時のために料理を練習している人たちや身近に男性がいる人とかは練習するけれど。
彼女たちも蒼と出会って接していくうちに少しは料理の練習はしていたけれど、そこまで自信がないため今から作り始めて練習をしたほうが良いのだ。
「よしっ、頑張って作って祖師谷君に褒めてもらおー!!」
「「「おー!!」」
こうして、彼女たちのお菓子作りが始まったわけだが、なかなかうまくいかない。大雑把にしてしまったりすると形崩れてしまうし、温度が少し違っただけでこげちゃったりもする。
悪戦苦闘しながらも彼女たちは諦めずに蒼が喜んでくれている顔を思い浮かべながら作り続ける。
エリーは元から料理作りができるし、もちろんお菓子も作ることが容易なのでそれぞれの手助けに回り、指導していく。
一番苦戦していたのはアリシアだったけれど、エリーの手助けもあり最後にはうまく作ることに成功した。
「やりましたよ、エリー!!」
「頑張りました、アリシア様。きっと祖師谷様も喜んでくださいます」
アリシアはお嬢様だけれど、気持ちが大事だと思っているためエリーに任せず自分で作ることを選択して、成し遂げられたため喜びがすごい。
由利や愛理もエリーの手助けもあって作り終えることができて、満足げな顔を浮かべている。
「そういえば、エリー。あなたは作らないの?」
「あぁ、前々から準備していましたのでお構いなく」
エリーが微笑んでそう返す。
これで、この四人は全員作り終えることができた。
さて、次は時間を遡り、風花の家で少女二人が一生懸命レシピを片手にお菓子作りに励んでいた。
「梨美、これでいいのかな?」
「うん、いいと思うよ」
風花が梨美に具合を確かめてもらう。
梨美は兄の蒼のこととなると異常な力を発揮するため、今回のお菓子作りでも持ち前の器用さと兄へと思いでお菓子作りをしている。
こちらも日が終わるころには作り終えることができたみたいだ。
「思いは伝えるもの」
「あんた、これなに作ったの?」
「マカロン」
「全然違うし!!」
喧嘩ばかりしていて剃りが合わないと一見思うけれど、実は案外仲がいいシュガーと莉々が同じようにお菓子作りをしている。
莉々は元々動画のネタの一環で料理をしていたことがあったためそれなりに料理ができるため、シュガーに教えてあげる形となっている。
が、シュガーは生まれてこのかた料理などお湯を沸かすくらいのことしかしていないためまったく分からず莉々が甲斐甲斐しくお世話を焼いている。
「ピンク頭、こうすればいいの?」
「そう、あってるけれどピンク頭言うな。無口淫乱女」
「煩い」
なんだかんだ言いつつもこちらも夕方前にはお菓子を作り終えることができた。
他にも、柚乃と未恋のペアがお菓子作りをしていたり、全国の青リスナーが青のためにチョコレートやキャンディなど様々なものを渡すために二月十四日に向けてそれぞれお菓子作りをしていた。
当の本人である蒼は今日も元気に配信で何をしよう考えていたり、やエゴサーチなどを呑気にしていた。
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