第113話

 授業も終わり、僕は一足先に帰りのホームルームを抜け出して体育館へと向かう。


 まだ三年生たちは来ていないようだけれど、三年生の学年主任とわくわく顔の校長先生がいた。


「三年生たちに僕のエールが届いて、受験本番や本番まで頑張り続けることが出来るといいんですけれど」

「祖師谷君の応援を貰って、頑張れない女性なんてこの世界には多分、誰一人としていないと思うな」

「そうだね。祖師谷君が応援してくれたら、今まで以上に有名大学への進学が多くなるのではないかと私は思っているよ」

「ありがとうございます。期待に答えられるように、精一杯エールを送らせて貰いますから」


 舞台裏へと回って、振り付けの確認をしていると続々と三年生たちが体育館へと入って来る。


 なんだかんだ、配信上でライブとかはしているけれど生でこういう大勢がいる場所でこういうことをするのって初めてなのではないかと思い少しだけ緊張する。


 予定の時刻となる頃には三年生はほぼ全員いるんじゃないかというくらいには勢ぞろいしていた。


「これから、祖師谷君が特別に三年生が受験を頑張れるようにエールを送ってくれます。拍手でお迎えください」


 パチパチと大きな拍手が聞こえてきたので表へと立ち、マイクを持つ。


「えぇーっと、三年生の皆さん。こんにちわ」

「「「「「「「こんにちわ」」」」」」」」」


 挨拶をすると、物凄い声量で挨拶を返される。


「もうすぐ受検を控えた三年生の皆さんに僕が頑張れるようにエールを送りたいなって思います。格好悪いところもあると思うけれど、一生懸命応援するから見てくれると嬉しいな」


 僕が言うと、口々にそんなことないよ、とか僕をフォローしてくれる声が飛んでくるのでお礼を言って頭を下げる。


 さて、ここからが本番だ。


 一生懸命おもいを伝えないと。


 学年主任の先生に合図を送って、曲を流してもらい、踊り始める。


 一生懸命踊りサビの部分では「三年生、ファイト―!!」と精一杯声を張り上げ、全力を尽くして三年生に向けてエールを送る。


 曲が終わって、前を向くと三年生たちは全員と言っても過言ではないくらいの人が涙を流して決意を胸に秘めたそんな目をしている。


「あ、あの......」

「祖師谷君、素晴らしかったです」


 と学年主任の先生が目じりに涙を浮かべながらそんなことを言う。


「祖師谷君の応援のおかげで、試験日はきっと最高のパフォーマンスで臨むことが出来るでしょう」


 そうなのかな?と思って三年生の皆さんの方を向くとものすごい勢いで首を縦に振ってくれているので、きっと僕の思いを三年生の皆さんに届けることが出来たんだなと思って安心した。


「僕の応援が皆さんの力に成れたのならば良かったです。応援を見に来てくれてありがとうございました。試験本番まで勉強のし過ぎで体を壊さないように気を付けてくださいね。皆さんが、行きたい大学へと進学できることを心から願っています。ありがとうございました」


 頭を下げると、大きな拍手が沸いて、それは鳴りやむことは無く五分程度そのままなくらいだった。


 「祖師谷君こそ、ありがとう」とか「祖師谷君の応援で頑張れるよ」とか「祖師谷君、結婚して」とか例外を除いて、僕の応援によって頑張れるっていう人がたくさんいて良かった。




 それからニ週間ほど過ぎて、小耳に挟んだのだけれど今年の三年生の受験の結果はものすごく良かったらしい。


 何でも日本最難関の大学に入れる人が多数いるくらいで、過去最多を記録したみたいだ。


 校長先生が、「もしかして祖師谷君に、それぞれ部活の応援をしてもらえれば全国何て余裕なんじゃ?」とか言い始めたのは聞かなかったことにしようと思う。


 

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