第111話

 さて、お正月気分もだいぶ抜けてきた今日この頃。


 今日から学校が始まる。


「おはよー、みんな。久しぶり」

「「「久しぶり、寂しかったよー」」」


 クラスのみんなが目に涙を浮かべて、僕が教室に入って来るのを待っていた。


「ど、どうしたの?みんな」

「だって、冬休みの間一回も生の祖師谷君に会えなかったから」

「それに、クリスマスの配信であんなASMRとシチュエーションボイス出しちゃうから会いたくなっちゃって」


 確かにいつものメンバーとは初詣とかクリスマスとかで会ったりはしていたけれど、クラスのみんなとは冬休み中、一回もあっていなかった。


 夏休みはクラスで遊園地を貸し切ったりしたけれど、冬休みは少し忙しくてみんなと遊ぶ時間が減っていた。


「ごめんね、冬休みは少し忙しくって」

「い、いや、祖師谷君が謝る事じゃないよ。忙しいのは分かっているもん」

「だけれど、少しは私達の事も見て欲しいなーって思っただけだから」


 この場合、どちらも悪くはないのだけれどいつものメンバーよりは親しくはないとはいえ、クラスのみんなだって僕の大切な人たちだから、もっと見てあげないとな。


 これは、そのお詫び。


 僕はクラスの女の子たちを一人一人抱きしめて、思いを伝えてあげる。


「寂しがらせてごめんね。でもちゃんと君の事も見てるから」


 と伝えていく。


 前世で言えば、クズ男だけれどこの世界は男の人が極端に少ないために一夫多妻制は当たり前、男性の浮気なんてまず前提として無いのだけれど、何か少しだけ罪悪感がある。


 何を今更って感じではあるんだけれどね。


 いつものメンバー以外のクラスの人たち全員を抱きしめ合わる頃には、全員がふにゃふにゃになっていた。


 これで、少しは埋め合わせに成ればいいんだけれど。


「祖師谷様、私達にはしてくださらないのですか?」

「え?だって、みんなとは冬休み中あっていたし」

「むぅ、それでも、ですよ。私達も祖師谷様に抱きしめられたいのです」


 うんうんと由利、愛梨さん、エリーの三人それに、白金さんまで頷くので彼女たちも抱きしめる。


 彼女たちには日頃の感謝を込めて、「ありがとう、これからもよろしくね」と言って精一杯抱きしめた。


 愛梨さん、由利、アリシアは頬を真っ赤に染めてコクコクと頷いていたけれど、エリーは「やはり、私は祖師谷様に尽くすことが至上の喜びです。早くそうなりたいものです」とアリシアの侍女としてあるまじきことを言っていたり、白金さんは感極まって「より一層、あなたに忠義を尽くし、全身全霊で身を粉にしてあなたに私の全てを捧げます」と抱きしめて離さない。


 教室中は、ふにゃふにゃのみんなと頬が真っ赤なアリシア達、トリップしているエリー、僕を抱きしめている白金さんと凄いことに成っていて、教室に入ってきた先生が何があったのかと疑問符を浮かべていた。


 数分後、何とか落ち着きを取り戻し朝のホームルームが終わってから、僕は先生に呼び出された。


「祖師谷君、お昼休みに校長室へ来ることってできる?」

「え?はい。できますけれど」

「そっか、なら良かった」

「あの.....僕が何かしてしまったのでしょうか?」

「あ、そうじゃなくて。祖師谷君に少し頼みたいことがあるそうなの」

「頼みたいことですか?」


 頼みたいことってなんだろう?


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