第102話

「僕、これで良いの?」

「大丈夫です。とても格好良くてお似合いですよ」


 エリ―がそう言ってくれるけれど、自信が持てない。


 僕は今、アリシアの家が主催するパーティにアリシアの付き添いとして選ばれて衣装室にいる。


 パーティをすると聞いてからすぐに、アリシアとエリーに拉致されて飛行機に乗りアリシアの母国へと行き、アリシアの母と軽く挨拶をしてから今この場にいるわけだけれどもものすごく緊張する。


 ちなみに、アリシアのお母さんはものすごく美人で、将来アリシアはこんな感じになるんだろうなと想像できた。


 僕は英語がそこまで堪能ではないので、アリシア達に通訳してもらいながら喋ったけれどとても楽しくお話をすることが出来た。


 元々、僕の配信を見てくれていたので、僕に対して最初から好印象だったみたいだ。


 話が脱線してしまったので、戻ろう。


 アリシアにはそこまで厳粛なものではないと言われているし、事前に一般市民の僕が来ることは伝えてもらっているから大丈夫だとは思うけれど、やはりこういうパーティに出席した経験がないため、マナーとかが分からないのだ。


「大丈夫です、祖師谷様。祖師谷様はいつも通り振舞えば、それでいいのですから何も問題ありません。他の男性の方がパーティに出席されたときなどひどい物でしたから、祖師谷様は祖師谷様らしくあればいいのです」

「ありがとう、エリー。少しだけ元気が出たよ」

「それなら良かったです」


 エリ―のこういう気遣いが出来るところは流石、アリシアの付き人だなって思う。いつもはエッチな誘惑とか、いろんなことをしてくるけれど。


「それにしても、やっぱり祖師谷様は何でも似合いますね。スーツ姿、物凄くキュンキュンします。パーティが終わったら一緒に写真を撮りましょう」

「うん、いいよ。エリーもそのドレス凄く可愛いから一緒に撮ったら凄くよさそう」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに微笑むエリー。


「お待たせしました、祖師谷様」

「っ!!すっごく、綺麗だよ、アリシア」

「そうでしょうか?そう言ってもらえてとっても嬉しいです」


 アリシアがいつもとは違い、ゆったりと余裕をもってほほ笑む。


 黒を基調としたドレスはアリシアとマッチしていて、とても綺麗だ。


「祖師谷様もとってもお似合いですよ」

「そうですか?ありがとうございます」

「はい、今すぐにでも結婚したいくらい」


 アリシアの眼は本気だった。

 

「さて、では行きましょうか」

「分かりました」


 大きな扉が開き、パーティ会場の中へと入る。


 皆さん、僕の事を興味津々で見ていて、少しだけ緊張する。だって、絶対この人たちこの国とか、他の国のお偉いさんだと思うから。


 アリシアやアリシアのお母さんが軽く挨拶をしてから、僕に目配せをしてくる。


 え?話せって事?


 そう目配せをすると笑顔でこくりと頷く。目で、大丈夫です。通訳はしますからいつものような感じでとそう伝えられた気がしたので、腹を括ってマイクを持つ。


「お集まりいただいた皆さん。初めまして、祖師谷蒼と申します。普段は配信活動をしていて面白おかしくリスナーの皆さんと遊ばせてもらってます。こういうパーティに出たことが無いので緊張していますが、皆様とパーティを楽しめたらと思いますのでよろしくお願いします」


 笑顔で一礼して、前を向く。


 アリシアさんが通訳をし終わると大きな拍手をしてもらい、安心する。


 そのご、アリシアの母がパーティの開始宣言をしてからパーティが始まる。


 アリシアやアリシア母はお偉いさんと挨拶をするために少し席を外すと言って、行ってしまった。


 あぁ、緊張するなぁ.......


「ア、アノ.......」


とそこで僕に声がかかる。


みると、可愛い少女が僕の方を見て目を輝かせていた。


「ワ、ワタシ、アオノハイシン、トッテモミテル。スゴク、カッコウイイデス!!」

「ありがとう。日本語、勉強してくれたの?」


 とゆっくり喋りかけると笑顔で頷いてくれる。


「コレカラモ、ズット、オウエンシテマス!!ガンバッテ、クダサイ!!」

「ありがとう。名前はなんていうのかな?」

「オリビアデス」

「オリビアちゃん、ありがとね。これから配信頑張っていくからよろしくね」


 小さい子だしファンだから、抱きしめるくらいのサービスはしてもいいよね。だってこんな一生懸命に喋ってくれているんだから。


 僕はぎゅっとオリビアちゃんを抱きしめてあげる。


 オリビアちゃんは最初はびっくりしてしまったみたいだけれど、次第に腕を回して、僕の事を抱きしめ返してくれる。


 ほおは真っ赤で、今にも泣き出しそうなオリビアちゃん。


 ものすごく可愛くて愛おしい


「これ、あげるね。大事にしてくれるといいな」

「!!ゼッタイ、ダイジニシマス!!アリガトウゴザイマス」


 涙を拭ってあげたハンカチは、オリビアちゃんにプレゼントしてあげた。


「祖師谷様、流石ですね。もう、女の子一人を泣かせたんですね」

「なんか、言い方が.......」

「でも、見てください。皆さんものすごく温かい目で見てくれていますよ。オリビア様のお母様なんて一緒になって泣いていますし」


 周りを見ると、いつの間にか話をしていた人たちが僕の方を暖かい目で見ていて、次第に拍手が巻き起こった。


「流石、私の祖師谷様ですね」

「アリシア様の人ではありませんけれど」

「もぅ、いいではないですか。後には結婚するのですから」

「それは、私もですが」


 この一件があってから、パーティの雰囲気に慣れて緊張することが無くなり、喋りかけてくれる人たちにも楽しくお話しすることが出来てよかった。


 というか、かなりの人が僕の事を知っていて驚いた。


 パーティが終了する頃には、僕との別れを惜しんでくれる人ばかりで僕も寂しくなった。


 こっそり連絡先を聞かれたので交換したこともあったけれど。


 最終的には、かなりいい感じにパーティが終えることが出来てよかった。




 ...........後に分かったけれど、オリビアちゃんのお家はものすごいところで、あのお母様は外務省のお偉いさんだったらしい。


 そして、僕のあの話をお母様が話してメディアに乗り、一気に僕の人気が高まって登録者数が伸びたのは別の話。





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