第101話

 さて、配信上でライブを開催すると決めて月日が経ち、ASMRやシチュエーションボイスの収録も終わった。


 ダンスや歌う曲も決めて、本格的に練習が開始された。


 今もその最中だ。


「青様、やはり筋がいいですね。格好良く決められています」

「そうですか?ありがとうございます」


 ダンスの先生を呼んで、いまスタジオで練習させてもらっているのだけれど、この先生は褒めて伸ばす人なのかめちゃめちゃ褒めてくれて伸び伸びとやらせてもらっている。


 噂では、鬼先生だとか言われていたみたいだけれど、やはり噂は噂のようだ。


 ものすごく優しい顔しているし。


 それにしても、前世では全くダンスなどできていなかったけれど、今世の体は改めて凄いと感じる。


 自分が思っている以上に動けるのだから。


「いや、本当にすごく格好いいよ。ショート動画でも踊っているところは見たけれどやっぱり生だと違うね」

「本当にそう。青大好き」


 どこから聞きつけたのか、僕の練習を見学している莉々さんとシュガーちゃんもいる。


「一度休憩しますか?それともまだやりますか?」

「そうですね、もう一度通しでしてから休憩を挟みたいなって思います」

「分かりました。では頑張りましょう」

「はい!!」


 一度通しでやって、先ほどより改善して手応えを感じてから一度休憩を挟む。あまり詰め込みすぎても悪いからね。


「お疲れ様、青様」

「お疲れ、青」

「ありがと、二人とも」


 タオルと飲み物を二人が運んできてくれた。


「二人とも、あんまり近づかない方がいいかも。少し汗臭いから」

「っ!?汗臭いんですか?」

「汗の匂い....はぁはぁ」


 あれ?二人とも?


 僕が汗臭いかもと言うと二人は逆にもっと近づいてきて匂いを嗅ごうとしてくる。こういうのって女子側が嫌がるものじゃないのか?


 二人とも嬉々とした顔で迫って来るし、僕の方が恥ずかしくなってくる。


「青様の汗....とっても貴重な汗」

「青の汗なんてご褒美でしかない。その遺伝子取り込みたい。舐めたい」

「ちょ、二入とも?待とうね、一旦」


 二人を何とか止めるために、僕は汗を拭いたタオルを放り投げると二人が犬のように飛び出していき、シュガーちゃんがそれを取った。


「やった。これ、私の物」

「ずるい、ずるい、ずるい!!私も青様の汗が染み込んだタオル欲しい!!」

「すーはー。すーはー」


 シュガーちゃんはタオルを鼻に擦り付けて深く息をして、莉々さんはそれを羨ましがっている光景。


 この二人はいつからこんな風になって仕舞ったんだ。


「あぁ...........羨ましい。私もいつも欲しいと思っているのに」

「あの.......白金さん?」

「はい、なんでしょうか?」

「白金さんも欲しいの?」

「欲しいに決まっています。青様の物なら何だって欲しいです」

「そ、そうですか」


 どうやら、これが常識らしい。

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