第98話
「僕、完全復活!!」
体のダルさは消えて、体は羽のように軽い。
みんなが心配していたよってアリシア達から聞いたから、学校に行って皆をあんしんさせてあげたい。
自室を出てリビングに行く。
「おはよう、母さん。梨美」
「おはよー、お兄ちゃん」
「だから、ダメだってそんなに動いたら。梨美は風邪なんだから」
「え?」
「そんなことないよー、梨美は全然元気だもん!!」
そう言っている梨美は足元がふらふらしているし、顔が真っ赤になっている。
もしかして.........梨美に風邪をうつしてしまったのだろうか?確かに梨美は僕の看病を熱心にしてくれていたから可能性は高い。
「お兄ちゃん、私全然元気だから、大丈夫だよ?」
ふらふらとした足取りでそんなことを言う梨美。梨美は僕が移してしまったと考えないようにわざと元気に振舞ってくれているのか?
「大丈夫だから、さぁ今日もがんばろー」
と手を振り上げようとして倒れそうになって仕舞いそうになるので、僕がそっと抱きしめる。
「梨美、今日は休もう?」
「うんうん、ダメ」
と首をゆっくり振る。
「お兄ちゃんが責任感じちゃうでしょ?」
「それこそダメだよ。僕が移した風邪がさらに悪化して梨美が苦しむことになった方が僕は嫌だな」
「うぅ.........」
「大丈夫、今日は僕が学校を休んで梨美の隣にずっといてあげるからね」
「ずぅっと?」
「うん。ずぅっと一緒に居てあげるから。部屋にいこっか」
「.........うん」
梨美をお姫様抱っこしてベッドへと移動させてあげる。
「お兄ちゃん、すっごく力持ち。私、本当の御姫様みたい」
「そっか、それなら良かった」
「お兄ちゃん、手、握ってて」
「うん、いいよ」
いつもより若干精神年齢が下がっていて不謹慎だけれど可愛いと感じる。
「お休み、梨美」
「うん。お兄ちゃんお休み」
数分後、穏やかに寝息を立て始める梨美。
まさか、梨美に風邪がうつってしまうとは迂闊だった。確かにあれだけ僕と一緒に居れば移ってしまうのも頷ける。
「蒼ちゃん、今日は学校お休みするよね?」
「うん。こうなっちゃったのも僕のせいだし梨美の看病は僕がしないと」
「じゃあ、学校には電話しておくね」
「うん、お願い」
学校のみんなには申し訳ないけれど、今日は梨美の看病をさせてもらおう。
さて、梨美も眠りについたしお粥でも作ろうかな。
梨美の手をそっと起きないように離してキッチンへと向かう。
「蒼ちゃんがお粥作ってあげるの?」
「うん。食べさせてあげたいなって思って」
「私も風邪になろうかなー」
「わざとなるような人は看病してあげないから」
「むぅ…」
母さんと話しながらもお粥を作る。といってもお粥なんて作る工程が少なすぎるから何もすることないんだけれどね。
お粥を作り終えて、梨美の部屋に戻ると梨美は起きてこっちを涙目で見つめていた。
「お兄ちゃんの嘘つき。ずぅっと一緒に居てくれるって言ったのに!!手のぬくもりがいつの間にか消えてたからどうしたんだろうって思ったらお兄ちゃん居ないんだもん」
「ごめんね、梨美」
ほおを膨らませて僕の事を見つめる梨美。
お粥を机に置き、近づいて梨美の気持ちを落ち着かせるためにそっと抱きしめてあげる。
「ごめんね。梨美に喜んでもらいたいなって思って少しの間離れてお粥作ってたんだ。こんな嘘つきお兄ちゃんの作ったお粥、食べてくれないかな?」
「.........食べさせてくれたら風邪も機嫌も直るかも」
そっぽを向いてそんな可愛いことを言う梨美。いつもより甘えん坊さんになって可愛い。
お粥をスプーンで掬って梨美の口まで持って行ってあげる。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
「美味しい?」
「おいちい。もっと」
「はい、あーん」
「あーん」
ひな鳥のように口を大きく開けながら待っているので口に運んであげると、美味しそうに食べてくれる。
僕に子供が出来たらこんな感じなのだろうかとも思いつつ、梨美にご飯をあげていいく。
「もう、お腹一杯?」
「うん。もう大丈夫かな」
一息ついてそういう梨美。
「じゃあ、寝よっか」
「今度はずぅっと一緒にいてね?約束だよ?」
「うん、約束」
ぎゅっと僕の手を握って離さない梨美。
そんなことしなくても僕はもうどこにも行かないから大丈夫だよ。
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