第97話 青教の教え 

 私は、どこにでもいるしがない会社員の一人でした。


 そんな私の運命を変えたのは一人の男性配信者でした。


 何気なく開いた動画配信サイトのおススメに出てきたのが青様だった。どうせ男の人を真似た女の人なんだろうと思っていた。


 けれど、その人は本物の男の人だった。それもこの世の者とは思えないほど格好いい顔で、甘い声で、それも物凄く女性に優しい方だった。


 その日は青様の過去の配信のアーカイブやその日のアーカイブを何度も見て、自慰に耽った。


 いつしか、青様が日常にいた。


 彼の配信で喋っていることに頷いたり相槌をするようになったりもしていた。彼の笑顔で私の人生は報われたような気がする。彼が拗ねたりすると、『ごめんね、意地悪して』って気持ちになるし、頑張っていれば全力で応援したし、彼が配信していることによってまるで何時しか彼と付き合っているような感覚を味わえていた。


 無味乾燥な私の人生は、いつの間にか輝きと潤いを取り戻していた。


 見せる相手などいないと思っていたお化粧や身だしなみだって整えるようになった。


 何時、青様と偶然出会っても綺麗だなって思ってもらえるように。


 そして、私は、一種青様を神様のように扱うようになった。


 教えは簡単。ただ、青様の配信を見ればいい。青様を思えば救われるという簡単なものだ。


 青教を設立してまだ一か月ほどしかたっていたいが信者の数は日に日に増えていき、今ではものすごい数になっているし、これからも増え続けるだろう。


 それだけ青様に救われている人は多かった。


 青教で集まったお金は全部恵まれない子供たちに寄付している。青様が私たちのような男性に恵まれない人たちに希望を与えてくれたように。


「私は、貴方様を心からお慕いしています。青様」


 私は青様に挨拶をしてから家を出ます。


 そこから電車を乗り継いでついた場所は、宗教団体本部です。ある会社の社長がこの宗教団体のために用意してくれたものです。


 権力者さえも魅了して、お導きしてくれる青様。流石としか言いようがありません。


 いつもの場所へと足を踏み入れると幹部の者たちが、プロジェクターに最新の青様のアーカイブを映して恍惚とした笑みを浮かべながら眺めていました。


 今日も青教はいつもどおりのようですね。


「あ、教祖様。おはようございます」

「おはようございます。みなさん」

「教祖様はあのショーと動画をご覧になられましたか?」

「はい、勿論です。青様の尊いおへそ様が見えて、ものすごい幸福感に包まれました」

「そうですよね、あのおへそ様ものすごい破壊力ありましたよね」


 最近の青様は、お歌、疑似デート動画や少し過激な格好でダンスしてくれたりともう女性としては嬉しい要素満載な動画を出してくれるので、充実していた生活がより良いものになってしまいます。


 本当に青様というお方はどれだけすごいのでしょうか?


「それでは、今日も会議を始めます」


 私の人生は、青様によって新しく作り変えられました。青様、私は貴方のことを一生敬い、称え、そして広めます。


 青様、心の底からお慕いしています。

 

 

 

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