第96話
「おはようございます。.........まぁ、こうなっているでしょうね」
「先生!!祖師谷君はどうしたんですか?」
祖師谷君がくるはずの時間になっても現れず、教室中のみんながそわそわと落ち着かない雰囲気を出していた。
「学校に連絡があって、祖師谷君は風邪のようで今日はお休みです」
「風邪ですか?」
「そうです、風邪です」
大丈夫かな、祖師谷君。辛くないかな?苦しくないかな?
「エリー、由利さん、愛梨さん。放課後に祖師谷様の家にお見舞いに行きましょう」
「そうだね」
祖師谷君待っててね。私がすぐに行くから。
放課後までがものすごく長く感じた今日。早く祖師谷君のお見舞いに行きたいという気持が強すぎるが故だ。
それは他の三人も一緒だったようで帰りのショートホームルームが終わった瞬間席を立って、アリシアさんの家の車に乗り込む。
クラスの人たちも行きたいようだけれど、流石に全員でお邪魔するのは迷惑を掛けすぎてしまうので、私たち四人で行くことにする。
途中、コンビニに寄って健康飲料水などを買っていき祖師谷君のお家に着き玄関のインターホンを鳴らす。
「はーい。どちら様ですか?」
「由利です。祖師谷君のお見舞いに来ました」
「あ、由利ちゃん。いらっしゃい。今開けるから待っててね」
数十秒後、出てきたのは祖師谷君のお母さんだ。
「いらっしゃい、蒼ちゃんは今、ちょうど起きてるから行ってあげると喜ぶと思うわ。それと.........」
「初めまして、お母様。私の名前はアリシアアッシュフィールドです。祖師谷様とはこれからも深く関わっていくと思うので、よろしくおねがいします」
「初めまして、私の名前はエリーバートレットと申します。私も祖師谷様とはこれからより親密になると思いますのでよろしくお願いします。これをどうぞ」
「ありがとうね。ふふっ。よろしくね。一緒に蒼ちゃんを支えていきましょう」
「「はい」」
この前の祖師谷君のお嫁さん候補集合の時に祖師谷君のお母さんは居なかったから今回が初めての会合みたいだ。
アリシアさん達と祖師谷君のお母さんとの会話が終わり、早速祖師谷君の部屋に。
「はい、お兄ちゃん。あーん」
「あ、あーん」
中には梨美ちゃんと白金さんがいて、羨ましいことに梨美ちゃんがお粥を祖師谷君に食べさせているところだった。
「あ、由利さん達。こんにちわ」
「こんにちわ、梨美ちゃん。ってずるいよ。私達も祖師谷君におかゆ食べさせてあげたい」
私達も祖師谷君のベッドへの周りに行く。
「みんな、お見舞いに来てくれたの?ありがとうね。すっごく嬉しい」
「祖師谷君が風邪に成っちゃったって聞いたときものすごくびっくりしたよ」
「ははは、少し体調管理が出来ていなかったみたい」
いつもより少しだけ弱弱しい祖師谷君可愛い。
「私達も祖師谷様の御世話をしたいです。何かすることはありますか?」
「うぅーん、これと言ってしてもらいたいことはないかなぁ。みんなの顔を見れただけで僕は凄く嬉しいし」
優しくほほ笑む祖師谷君。今日は風邪のせいで弱弱しくなっていて、私の母性本能がくすぐられてしまう。
ものすごく可愛い。
エリーさんなんかメイドで元から祖師谷君に尽くしたいって言っているから、そんな弱弱しいところを見て、興奮で顔が大変なことに成っている。
「.........あ、そうだ。僕、今、少しだけ寂しいからみんなに手を握って欲しいな。僕が寝るまでね」
「「「「っ!?!?」」」」
いつもは格好いいお顔が、今日はつぶらなうるんだ瞳でそんなことを言うものだから胸がキュンキュンとしてどうしようもなくなってしまう。
「わ、分かりました。では握らせてもらいますね」
みんなが祖師谷君の手に自分の手を重ねる。
「ありがと、みんな。すごく落ち着く」
そう言って目を閉じて数分後、ゆっくりと寝息が聞こえてくる。顏をみるとスヤスヤと安心したような顔で眠っている。
そういえば、祖師谷君の寝顔ってなんだか新鮮だ。旅行に行ったときは同じ部屋じゃなかったから見ることが出来なかったし。
こっそりと写真を撮って、壁紙にする。
「祖師谷様、ものすごい破壊力がありますね」
「そうですね。寂しいから手を握っていて欲しいなんて言われて落ちない女の子は居ませんよ」
「そうですね」
みんながうんうんと頷く。
その後、祖師谷君の寝顔を十分に堪能した後、流石に長居することは悪いと思うので帰ることに成った。
後日、祖師谷君が恥ずかし気にあの事を忘れて欲しいと言ったことにまたキュンキュンしたのは別の話。
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