第87話

「どのアトラクションから乗りますか?」

「そうだね、何にしようか」


 この遊園地はかなり大きく色々なアトラクションがあって迷ってしまう。


「アリシアは何に乗りたいの?」

「そうですね、こういうアトラクション系の鉄板だと..........ジェットコースターとか捨てがたいですね」

「じゃあ、一緒に乗ろうか」


 最初に選ばれた人はアリシアみたいだ。


「それじゃあ、僕のスマホをもって」

「はい!!」

「それじゃあ、今からアリシアは僕の彼女ね」

「は、はい!!」


 アリシアは緊張した面持ちで僕の顔をチラチラと見てくる。


「じゃあ、行こうか。手、貸して」


 アリシアの手を取って、早速ジェットコースターヘ。


 周りのみんなが羨ましそうに見てくる。後で皆の番もあるから少し待っててね。


「遊園地何て久しぶりだなー。君は遊園地とか言ったことないの?」


 少し間を開けてから「そうなんだ」と相槌を打つ。あくまでも、動画を見る人が彼女って言うことだからアリシアは話すことが出来ないけれど、口パクで『初めてです

』と必死に言っていて少し可愛い。


「ジェットコースターって少し怖いから、君の事頼りにしてもいいかな?」


 と甘えるような声で話す。


 この言葉はクラスの子が考えてくれた言葉だ。祖師谷君の少し弱気で甘える言葉を言わせたかったらしい。


 この言葉はアリシアにも刺さったみたいで、スマホのカメラを持っていない方の手で自分の胸を抑えて口パクで『大丈夫です。私が守りますから』と言ってくれた。


「そっか。じゃあ、君にいっぱい頼っちゃうね?怖いから手だけじゃ足りないな。腕組たいなー」


 甘えるような仕草でアリシアの手を取る。


「これで安心だね」


 動画を取っているアリシアの顔は真っ赤で、今にも目を回しそうにしているけれど動画と僕の事を考えてか耐えてくれているみたいだ。


 まぁ、でも将来的にはこうなるかもしれないんだし、予行練習みたいなものだと思ってもらいたいな。


 そうこうして歩いているうちに目的地であるジェットコースターに着いた。


 流石にジェットコースターに手持ちカメラは危ないので、アリシア何故か持っていたウェアラブルカメラを用いて撮影する。


 どうやらこういうアトラクション系の物に乗るとき、僕の顔を撮影するために買ったらしい。


 安全装置をつけて、ジェットコースターは動き出した。


「怖いけれど、少しワクワクするね」


 と横を向いてカメラに、アリシアに向かってそういう。


 すると『そうですね』と返してくれる。


 そして、頂上に着いたときもう一つ言わなきゃいけないセリフがあったので言う。


『すき』


 と口パクで僕は言う。


 これも、クラスの子が考えてくれたみたいで、ジェットコースターが頂上に達した時聞こえるか聞こえないかの声で好きっていって欲しいという要望だった。


 その直後、一気にジェットコースタが下っていき少し怖かったけれど動画関係なしに僕も楽しむことが出来てよかった。


 次のアトラクションはティーカップのようで相手は愛理さんだ。


 愛梨さんは声には出さないけれど、物凄く嬉しそうな顔をして僕と疑似デートをしてくれていて僕まで嬉しくなる。


 久し振りにコーヒーカップ何て乗ったけれど、とても楽しい。


「子供の時は乗ってたことあるけれど、高校生になっても楽しいね」


 とカメラに向かって笑顔で微笑むと、カメラ越しに見ていた愛梨さんの顔まで少し赤くなる。


 その後、二人でティーカップを全力で回したりして楽しんで終わった。


 ティーカップも乗り終わったので次の場所へと足を進める。


 次はお化け屋敷みたいで、相手はエリーさんだ。


 言われるまでもなく、エリーさんは当然のように腕を組んで笑顔で微笑んでくる。


「怖いけれど、僕が絶対に守るからね」


 ジェットコースターの時とは対象に僕は、怖がらず勇気を出して守るような感じを出す。


 これもクラスの子が考えてくれたセリフだ。


 エリーさんはどうやらときめいてくれたみたいで頬を染めている。


 二人で中へと入り、少しずつ前へと進んでいく。色々な仕掛けがあってどれも怖かったけれど、彼女であるエリーさんをエスコートするようにできて良かったなと思う。


 エリーさんも出るころには、真っ赤に顔を染めてでも蕩けたような目を向けてくれていたから。


 その後も、クラスの子たちと色々なアトラクションに乗ったり食事をしたりして気が付けばもう閉園時間三十分前くらいになっていた。


 最後は観覧車のようで相手は由利だ。


 観覧車に乗り込み、由利の前に座る。


「今日はいろいろ乗ることが出来て、楽しかった。はぁ..........まだ、君といたいな」


 とカメラ越しの由利に言うと頬を染めてコクコクと頷いてくれる。


「寂しいな、僕。ねぇ、隣にいって抱きしめてもいい?今は離れたくないかも」


 由利は恥ずかしがりながらも頷いてくれているので、隣に行きそっと軽く抱きしめる。


「今日のデートで、いろんな可愛い君が見れてとても良かったし、さらに君の事好きになっちゃった」


 そして、観覧車が頂上へと昇った時僕はそっと「愛してる」と呟いた。


 由利は体をビクビクと震わせて必死に動画のために我慢しているみたいでより愛おしく感じる。


「これからも、ずっと一緒だよ。またどこかへ行こうね」


 そう言って、この動画は終わりになる。


「はい、由利、もう喋っていいよ」

「うぅぅ。もう祖師谷君。大好きぃ。私も愛してるから」


 カメラを前の席に置いて、隣にいる僕に抱き着く。


「今はまだ祖師谷君と付き合えないけれど、私絶対に一区切りついたら祖師谷君と付き合うから!!愛してるもん」

「分かった、約束ね」

「え!?いいの?」

「うん。前から少し揶揄って有耶無耶にしてたけれど。約束しよう」

「う、うん」


 由利は本当に、心から嬉しそうに笑ってさらに僕の事を抱きしめる。


 観覧車から降りるときでさえ、抱き着いたままだったから、待っていたアリシア、エリー、愛梨さんたちが、嫉妬して負けずに僕に抱き着いてきた。


 今日は、凄く楽しかった。


 また、どこかへみんなと行きたいな。


 

 その後日、疑似デートの動画が編集され世に出されると、瞬く間に一億再生され青は私の彼氏だという人が続出し、さらに社会機能がまた大幅に低下した。


 そろそろ国の偉い人たちに怒られそう。

 

 

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