第85話 閑話 青に染められる。

 私が、初めて青を見たとき、衝撃を受けた。


 私がtritterを何気なく見ていると、トレンドには青や配信という文字が目に入り、それを見たことがきっかけだった。


 青は、女性を毛嫌いなんてせず、優しく包み込んでくれる。すごく格好良くて優しくて、気が利いて、でも負けず嫌いで面白くて。


 青の配信を見るたびに、新しい青に出会えた。


 彼を曲の題材にしたいと、思ったのはすぐだった。


 あんな人を私が表現できたならば、どれだけ素晴らしいことだろうとそう思った。


 女性の理想を固めた存在。女性の心を絡めとってまるで蟻地獄のように嵌ったら最後、抜け出せず、青という存在に心を奪われてしまう。


 そんな存在を曲で表すとなるとそれは、至難の業だった。


 試行錯誤を繰り返し、充実した日々を送っていたある日。一本の電話が入った。


 いったい誰だ?私の政策の邪魔をするのはと思ったけれど、なんとそれは青から正式に曲を作ってほしいという依頼だった。


 それに、今青はEach stepのスタジオにいるというので、私は行くとだけ言って電話を切り、速攻で自分の中における最高に可愛い服で青に会いに行った。


 スタジオのドアを開けると、そこには生の青がいた。


 私は吸い寄せられるように彼に近づいて、そっと彼の暖かい膝の上に座った。


 それから、少し話したところやはり、青は配信外でも女性に優しく紳士的で、すごく格好いい男性だということが分かった。


「僕の曲作ってくれるの?」

「..........うん。というか前から勝手にいろいろ作ってた」

「え?そうなの?」

「うん。でもこれだっていうの作れない」

「でも、私、青の曲作りたい......から、実際に会ってよりあなたを深めたいと思って」


 これは、建前半分、本音半分だ。


 実際に会ってみて、さらに青のことが好きになってしまったから只単純に青に会いたいと思ってしまっただけ。


 それから、私は攻めて青とよりお近づきになろうと思ったら、淫乱ピンク頭の莉々が私の邪魔をしてきた。


 今思い出すだけでも腹立たしい。


 私の宿敵はあいつになるだろうな。


 それから、青と連絡先を交換してその日は終わった。


 その日から、さらに私は音楽制作に励み、ついに曲が形となったある日。


 何となく青に会えるのではないかと思い、Each stepに来ていたところ、運命的なことに、青はライブの話をしていて何をするか悩んでいた。

 

 これはチャンスだ。


 事前に理恵に曲を送っておいて良かった。


「青、私、あなたのオリジナル曲と作り終わった」

「本当ですか!?」

「うん。でもその前に、ライブやるって聞いた」

「そうですね。でもまだ内容は何も決まってなくて」

「だから、そのライブようにまた新しい曲作る」

「本当ですか?」

「うん。私、青に尽くしたい。尽くせる女だから」

 

 本当に、青に頼まれたのなら何でもしてしまうだろうというくらいには青のことが好きになりつつある。


「そうですね。シュガーさんに曲を新たに作ってもらったり、他の今人気のアーティストの方々にも協力してもらって、歌うこともありですね」

「まぁ、でもその前に、シュガーさんが作った新曲を一回聞きましょう」

「うん、じゃあ、聞いて」


 青が気に入ってくれなかったら、そもそも作った意味がないので不安だったけれど、どうやら気に入ってくれたみたいで良かった。


 青に褒めてもらい、本題へと入る。


「あ、そうだ。それでなんだけれど。まだ収録はしないけれど試しに歌ってみて」

「うん。でもちょっと、覚えきれてないからもうちょっと聞かせて」

「分かった」


 青は数度繰り返し聞いて、曲を覚える。


 真剣な姿も格好いい。


「大丈夫です。いけます」

「分かりました。それじゃあどうぞ」


 軽々しく、聞くものではなかった。


 そう聞いた次の日にそう思った。


 彼が歌い始めると、私の曲が本当の意味で完成していく。私は体が震えて、どうしようもなくなっていった。頭がどうにかなりそうだった。


 下からは、だらしなく漏らしてしまうし、よだれとかもだらだらと垂れてしまう。


 私と彼が合わさっている感覚になった。


 私は、青に曲を作るために生まれてきたんだとそう本能的に感じた。頭がくらくらするくらいに、青の歌声は気持ちよかった。


 目の前の青しか、見れない。


 他の何物もどうでもよくなる感覚があった。


 その後、曲が終わってからも、私は放心状態だった。あの感覚から帰れそうになかった。


 着替えさせられているときも、ずっと、ただ青の事しか今は頭にない。


「青」

「なに?」

「すごかった。マジやばい」

「ありがと」

「ちょっと、こっちに頰寄せて」

「うん」


 私のすべてをあげよう。心からそう思った。


 私は、彼に囚われてしまったみたいだ。この心地よいアリジゴクに私は命をささげようと思う。


「大好き、青」


 私は、彼の頬にキスをする。


 本当は唇にしたかったが、今はまだこれだけ。


 合意の上でそういうことはしたいのだ。もちろん、青から求められれば、強引だろうと、私は一切構わない。


 それから、私は無理矢理青と離れさせられたが、心の距離はぐっと縮まっただろう。

 

 アオ。


 愛してる。大好き。


 

 

  


 

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