第74話

 さて、やってきました球技大会。


「絶対に他のクラスなんかに負けない!!」

「他クラスなんか轢き殺してやる」

「祖師谷さんに応援されて負けるなんて、何があってもいけないことです」


 気合十分すぎるクラスのみんな。


 僕のダンスもかなり様になってきていて、人に見せても何も問題ないくらいにはなった。


 応援のダンスは、みんなが集まって円陣を組んだ後、サプライズで民んを驚かせるんだ。


 競技中にしようと思ったけれど、みんなが集まっているのってそのタイミングか昼休みの時間しかないらかね。


 あとで見れなかったと言って悔し涙を流して僕に縋り付いてくる人もいそうだし。


 教室から移動して、学年全体があつまる体育館に行く。


 先生たちが、この行事の説明やはしゃぎすぎないようになどの注意、そして準備体操をする。


 そして......


「みんな、少しだけ時間をくれないかな?」

「いいよ。祖師谷君のためならいくらでも時間取るから」

「祖師谷君のためならいくらでも」

「ありがと。それでね、みんなの力になりたくて一生懸命ダンスを覚えたんだけれど見てくれるかな?」


 そう言うと、クラスのみんなが笑顔になりものすごい勢いで首を縦に振って肯定してくれる。


 木下先生まで頷いていて、早く見たいと目で訴えかけている。


 その場にいた他クラスの人や、他の先生までもその話を聞いたのか一目見ようと集まってきた。


「じゃあ、恥ずかしいけれど精一杯するから僕からの応援の気持ち受け取ってくれると嬉しいな」


 両手にハンドフリーポンポンと鉢巻をつけ、先生に音源を流してもらい開始する。


 最初、少し恥ずかしいからか動きが硬かったけれど、みんながジィっと真剣に見てくれていて、僕も恥ずかしさを気にしている場合ではない、応援しなきゃと思うと、段々といつも通りの動きになっていく。


 みんなに途中ポンポンで手を振ったり、一人一人の名前を呼びながら踊ったりとサービスができるくらいには、最終的には動けていた。


 最後にターンして、ピシッと最後にポーズを決めて一礼する。


「これで、終わりです。あの......みんなの力になれるかな?」


 みんなの方を見ると、目に涙を浮かべたり、嗚咽をしたり、さらには泣き崩れてしまう人もいる。


 クラスのみんなは一様に、「そしがやしゃまぁ」と呟いてなんだか僕が悪いことをしたんじゃないかって思える感じだ。


「祖師谷君、私達絶対に勝つから」


 由利が固い決意とともに僕にそう言ってくる。その顔は一人の立派な戦士のようだ。


「祖師谷君。私も勝つよ」

「祖師谷様に勝利を」

「祖師谷様に栄光を」


 その次に愛梨さん、アリシア、エリーと前に出てきて、そう言ってくる。


 そんな、戦争を決意した面持ちで言わなくていいからね?これただの学園の行事だからね?


 その後、泣いていた他の人たちも僕に一人ずつお礼を言って「相手を必ず殲滅します」とか「あなたに勝利を」とか球技大会には似つかわしくない言葉を受ける。


 

 最期に僕を中心にクラスで円陣を組んでそれぞれの持ち場へと移動していく。まるでその背中は戦士のようで。


 相手のクラスの人、大丈夫なのかな......?


 もしかして、僕、気合を入れすぎちゃった?


 クラスの人たちの対戦予定表をみると、一番早いのはバスケのようなので体育館に残り、自販機で買っておいた飲み物を持ってきておく。


「頑張って来るから、見ててね?」

「祖師谷様に格好いいところを見せますから」

「絶対に勝つ」

「祖師谷様に報います」

「祖師谷君にいい所みせるから」


 バスケのメンバーはいつものメンバーにクラスのバスケ経験者の人、確か........坂下千里さんで構成されている。


 試合が始まると、ジャンプボールを愛梨さんが制してアリシアさんに渡る。


 鬼気迫る勢いで、相手のゴールに迫りそのままシュートを決める。


 アリシアさんってあんなにバスケ上手かったんだ。


「アリシアさん、ナイスシュート」


 僕がそう言うと蕩けるような笑みを浮かべて「ありがとうございます!!」と手を振り返してくれる。


 それを見た愛梨さんエリーさん、由利さん、千里さんは羨ましそうな顔をしていて、次こそは私がという面持ちだ。


 だが、バフを与えたのは自クラスだけではなく相手のクラスにまであたえていたらしく、物凄い嫉妬の圧力が相手チームから放たれている。


 その後、愛梨さんたちも嫉妬の眼に負けず点をもぎ取り、第一試合は勝利した。


「みんな、お疲れ様。これ、どうぞ」

「え、いいの?」

「うん。みんな頑張ってたから」


 一人一人手渡して、スポーツドリンクを配っていく。受け取った時はみんな嬉しそうな笑顔を浮かべて僕にお礼を言ってくれる。


 そんなとき、背後から恨めしそうな目でジィっと見られている感覚がありそっちを見ると、負けたチームの子たちが悔しそうな目でこっちを見ていた。


 相手のチームの人も頑張ってたしな........スポーツドリンクは人数分しか買っていないから渡せないけれど、声だけでもかけよう。


 僕は、負けたチームの方へと足を向ける。


 驚いた表情をして僕の方を見てくる。


「お疲れさまでした。相手チームなので応援はできなかったですけれど、格好良かったです。他の競技もあるだろうから頑張りましょうね。球技大会、楽しみましょう!!」


 と笑顔でそう言うと、みんな嬉しそう蕩けたような笑みをみせて「はいっ!!」と返事をしてくれる。


 みんなの所に戻ると、不満げな顔や仕方が無いという顔をしているのでははっと乾いた笑いを零すしかない。


「祖師谷君の女誑し」

「まぁ、祖師谷君は優しいからしょうがない」

「祖師谷様は優しいですから仕方がありませんね」

「祖師谷様のそういうところを含めたすべての部分を愛しております」


 その後、僕のクラスはものすごいことにすべての競技で勝ち残ることが出来て、決勝まで行くことが出来た。


 昼食を食べ、午後の部である決勝が始まる。


 みんなのやる気は依然マックス状態で、勝つ気満々だ。


 試合開始のホイッスルが鳴り、バスケの部の決勝が始まる。


 相手のチームにはバスケ部が二人いて、なかなか手強そうな感じだ。


 だが


「みんな、頑張って!!ファイト―!!」


 僕が声を張り上げて応援するとみんなの眼に闘志の炎がメラメラと立ち上がり、相手バスケ部の子と互角かそれ以上に戦いあえている。


 一進一退の攻防が続き、勝ったのは........


「やった、勝ったよ。祖師谷君」


 勝ったのは僕たちのクラスだ。


「おめでとう、みんな格好良かったしすごかった」

「全部、祖師谷君のおかげ」

「祖師谷様の応援が無ければそもそも優勝なんてもっての外でした」

「祖師谷様のおかげなのです」

「ありがとね。でも頑張って優勝したのはみんなだからさ。おめでとう」


 嬉しそうに微笑んでくれるので、僕も嬉しくなる。


 その次は、競技をもうするものがない人たちと一緒に他の場所で決勝をしているところを応援しに行く。


 僕たちのクラスは、決勝をすべて勝つことが出来た。


 そして、最終結果は..........


「優勝クラスは..........一組!!」


 僕たちのクラスが呼ばれて、みんなで喜び合う。


「代表の人は、賞状とトロフィーがあるので前に来てください」


 代表の人か。


「祖師谷君、行ってきて」

「そうだよ、祖師谷君しかいない」

「祖師谷様、行ってきてください」

「祖師谷様がこのクラスに一番貢献した人です」


 僕が前に行くことになり、校長先生の前に立つ。


「優勝、おめでとう」


 トロフィーと賞状を貰ったので、後ろを振り向きみんなの方へと掲げてみせると歓声が湧きおこった。


 最高の球技大会となった。

 

 




 


 


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