第72話
「ふふっ、お兄ちゃん。楽しいね」
「そうだね」
隣で歩く梨美が嬉しそうに笑う。
今、僕と梨美はデートと言われるものをしている。
妹とデートなんて何を言っているんだと言われるかもしれないけれど、梨美曰これはデートだと言っているのでデートなのだ。
なぜこんなことに成っているのかと言われれば朝まで遡ることに成る。
朝、目を覚ますと僕の上に跨った梨美がいた。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう、梨美。どうしたんだ?朝から」
何事かと思って聞くと、梨美は悲しそうな表情をうかべる。
「私、最近、寂しいんだよ」
「寂しい?」
「お兄ちゃんと仲良くする機会がめっきり減って、私のこころは擦り切れそうだよ」
そう言って大袈裟に胸に手を当てて、蹲る演技をする梨美。
確かに最近は梨美と遊ぶ機会がぼくがこの世界に来たときよりだいぶ減ったとは思う。
「そこで、私からの提案です。今日は休日、一緒に出掛けない?」
「出かける?」
「そう、これはデートというものです」
ずぃっと僕の顔に梨美が顔を寄せてくる。
「私は、お兄ちゃんとデートをしたいです」
「デート?家族なのに?」
「家族でも結婚できるから、デートはデートなの」
と我儘をいう子供のように僕にそう言ってくるので、頭を撫で落ち着かせる。
「しょうがない、確かに最近は梨美と遊ぶことが少なかったし、デート、しよっか」
「ほ、ほんと?うそじゃない?」
「嘘なんかつかないよ。行こう」
ということがあって、今につながる。
ちなみに万が一の事が無いように白金さんが僕の事を僕の事を見える距離で監視している。
「梨美、今日はどこに行く?結構おしゃれなカフェがあるって聞いたからそこに行ったり、お兄ちゃんに洋服を選んでもらおうかなーって思ってる」
「分かった」
梨美と雑談をしながら歩いていると、目的地であるカフェに着いた。
「ここの食べ物とかコーヒー、すっごい美味しいって評判らしいの」
「そうなんだ、楽しみだな」
店の扉を開けると........
「いらっしゃいま........祖師谷君?」
由利がいた。
「な、なんでここに由利さんが?」
と梨美も知らなかったのか驚いている。
「私ここでバイトしてるんだよ」
「似合ってて様になってるよ。由利」
「えへへ。そう?ありがとう。祖師谷君」
と可愛く照れた表情を見せてくれる。.............って痛い、梨美手を抓らないで。
「お兄ちゃんのバカ」
「ごめんね」
「由利さん、早く案内して」
「あ、じゃあ二名様ご案内します。こちらへ」
席に移動してメニューを開く。
「お兄ちゃん、何食べる?」
「んー、パンケーキよりオムライスとか食べたいかな」
「じゃあ、私がパンケーキ頼むから、半分こしよう?」
「いいね、ありがと。梨美」
「うん!!」
店員である由利を呼んで、注文をする。
待っている間、何となく働いている由利の方を見ようとすると、正面からじぃっと圧が来る。
「お兄ちゃん?今は私だけをみてね。分かった?」
「う、うん」
「まぁ、次のお店で私だけしか見れないようにしてあげるから覚悟しててね」
何が待っているんだろうと不安になったけれど深くは聞かないようにしておこう。
「お待たせしました、オムライスとイチゴのぱんけーきとなります」
運ばれてきた料理はどちらもすごく美味しそうだ。
「すごく、美味しそう。いただきます」
「いただきまーす」
一口だたべてみると、ふわふわな卵がケチャップライスを包み込んで幸せな味を出していた。
「すっごく美味しい」
「こっちのパンケーキも美味しいよ。はいどうぞ。あーん」
と食い気味に僕に差し出そうとしてくる。
「あ、あーん」
「美味しい?」
確かにこのパンケーキも絶品だった。
「じゃあ、今度はお兄ちゃんが食べさせてね?」
「う、うん。あーん」
「あーん」
と心底嬉しそうに食べてくれる。
「お客様、他のお客様もいるのでイチャイチャしないでいただけると」
と恨めしそうな目で由利がそう言ってくる。
「いいでしょー。はい、もう一回。あーん」
「梨美?」
「あーん」
「あ、あーん」
無理やり食べさせられるが、料理は美味しい。
由利は、ものすごく羨ましそうな目で見ているけれど。
「店員さん、見てないでちゃんと働いた方がいいですよ」
「うぅ.......。祖師谷君、私にもあーん、してね?学校とかで」
「ダメだよ、お兄ちゃん。そんなことしたら」
バチバチと二人の間に火花が散る。
僕の心は気が気じゃなかった。
何とか食事を終えて、店を出る。
最後まで由利は恨めしそうな顔をしていた。ごめんね。
「じゃあ、次はお兄ちゃんを夢中にさせちゃうから」
蠱惑的な笑みを浮かべた梨美。
いったいどこに連れていかれるんだろうと思っていると、着いた場所は.............
「り、梨美?」
「なぁに?お兄ちゃん」
「ここってランジェリーショップだよね?」
「うん。ここで私の下着、選んで欲しいなーって。大丈夫、選択式にしてあげるから」
そう言って手を引かれて中に入る。
店員さんは、僕の方をチラッとみてぎょっとした顔をする。
男性がランジェリーショップに来るなんてって思っているのかそれとも僕が青だと気づいたのか。
とりあえず、手は振っておいた。
「お兄ちゃん?こっちのものとこっちどっちがいい?」
と出されたものは真っ赤な後ろがホックになっているものと薄いピンク色のベビードルのもの。
梨美はその二つを持ってきて僕に迫る。
「あ、見なきゃわからないもんね。ちょっと待ってて試着してくるね。そこで待ってて」
「あ、梨美」
と何かを言う前に梨美は行ってしまう。
数分後試着室から声が掛かって開かれると、そこには真っ赤なブラを着ている梨美がいる。
可愛いというよりは綺麗というべきか。
「どう?」
「似合ってるよ。すごくいいと思う」
頬が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
「じゃあ、次のも来てみるから待っててね」
また数分後、次に着てきたものはさっき持っていた薄いピンクのベビードール。こちらは可愛い梨美にとても似合っていて、どこか小悪魔的だ。
「可愛いよ。梨美」
「ほんと?」
「うん」
「こっちの方が反応良いし、こっちにしよ。あ、でも他の色とかも試してみようかな」
それからもいろいろと試着した結果、真っ白なベビードールを買うことになった。
それを着た梨美はものすごく可愛くて蠱惑的で、扇情的だったとだけ言っておこう。
外を見るともう、暗くなってきていた。
僕の反応を見れてるんるんな梨美と一緒に家に帰宅する。
白金さんのことは後で労わないとな。
「あ、おかえり。蒼ちゃん、梨美」
「ただいま」
「ずるいわ、蒼ちゃんとデートだなんて。私も行きたいー!!」
と僕に抱き着いてくる母さん。
「はいはい、今度は母さんと行くから」
「ほんと?」
「うん」
「やったー!!これでお仕事も頑張れる。沢山おめかししていくから」
「楽しみにしてるね」
梨美との交流が少なかったということは母さんとも前よりは交流する機会が減ったから、今度は母さんとだな。
嬉しそうな母さんを宥めて、母さんが作ってくれた夕飯を食べ、お風呂に入って、今日は一日楽しかった、で終わるはずだった。
電気を消してから数分後、もう寝ようとしていたところで、きぃっとドアが開く音がする。
「お兄ちゃん、こっち見て?」
月光に照らされて、真っ白なベビードール姿の梨美が映る。
ものすごく可愛くて、でも美して、蠱惑的で、魅力的だ。
「今日ね、お兄ちゃんとデートできて楽しかったの」
「僕もだよ」
梨美が顔を近づけて嬉しそうに、笑うが.............
「でも、私ね。少しだけ怒っちゃったことがあるんだー」
「な、なに?」
「お兄ちゃん、今日、他の女の事、何回みた?」
と真顔で聞いてくる。
「由利さんの事は、除いてあげるけれど、その他の子のこと何回みちゃった?」
「え、えっと」
「八回、だよ?私とデートしてるのに他の子に目移りなんかしちゃダメ」
そう言って、僕の唇に梨美の指が当たり、ゆっくりとなぞられていく。
「私、悲しくなっちゃった。お兄ちゃん」
顔を近づけて、意味深にふふっと嗤う。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私からは襲わないから。けど、ギリギリなことはいっぱいさせてもらうね。お兄ちゃんから襲う分には私は一向にかまわないから。耐えられるかな?」
そう言って、僕の太ももをゆっくりと撫でながら耳をペロッと一瞬だけ舐められる。
「おにいちゃぁん」
と甘い声を発しながら僕の股関節の部分をさわさわと焦らすように触って来る。
このまま、してもいいのだろうか。
そんな考えが頭を過るけれど、僕はまだやりたいことがあるからそれが終わってから。
それに由利、愛梨さん、アリシアやエリーさんの事も待たせているんだ。
ここで誘惑に負けてはいけない。
「したくなってきた?」
「なっては来ているけれど、しないよ。それは、僕が夢を叶えてから。それまでは
誰であってもしないと思う」
「..........ふぅーん。まぁならいっか。でも梨美のこと放っておいたらこれ以上のこと勝手にしちゃうから覚悟しててね?」
「う、うん」
「それと、あんまり他の子に目移りしないで」
「うん」
「お兄ちゃん、大好き」
いつものように戻って、抱き着いて胸にすりすりとする。
今日はそのまま一緒に寝ることとなった。
梨美のベビードール姿がエッチ過ぎて、あんまり寝られなかったことだけは言っておこう。
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